(62点)全12話
TVアニメ「蒼の彼方のフォーリズム」公式サイト
空を飛ぶ競技で競う高校生を描いたSF×スポーツ×青春アニメ
ストーリー | |
作画 | |
面白い | |
総合評価 | (62点) |
完走難易度 | 普通 |
原作はゲームブランド「sprite」。
監督は追崎史敏さん。
制作はGONZO。
スポ根
引用元:©sprite/久奈浜学院FC部
フライングサーカス通称「FC」という架空の競技に打ち込む高校生を描いた作品だ。
絵の雰囲気からは少し想像できない。
最初はよくある恋愛系のアニメかと思いきや、思い切りスポ根アニメだ。
というのもゲームブランド「sprite」は過去に「恋と選挙とチョコレート」の制作を手掛けたこともあり、どうしても違和感を感じてしまう。
しかし内容はそうした競技に打ち込む青春を描いている。
島に引っ越してきたヒロインがFCという競技と出会い、周りと切磋琢磨し合いながらのめり込んでいく。
王道ではあるが、しっかりとスポーツがもたらす熱狂があり、仲間との絆があり、上手くなるための向上心があり。
しっかりと熱量のこもった作品に仕上がっていた。
FC
引用元:©sprite/久奈浜学院FC部
FCは架空のスポーツ。
グラシュという空を飛ぶことができる特殊なシューズを履き、飛行可能領域を飛び回り、制限時間内にどれだけのポイントを稼ぐことができるのかを競う。
飛行可能領域は4つのブイによって区切られた四角形の中で、ブイをタッチするか相手プレーヤーの背中をタッチすればポイントがゲットできる、という至ってシンプルなもの。
少しデモンストレーションを見ればすぐに理解できる構造になっていて、複雑なルールも全く存在しない。
プレーヤーのタイプも様々で、スピードを武器に戦う者、パワーを武器に戦う者。
しかし戦略性には正直乏しい。
このFCはブイにタッチするか、相手の背中をタッチするかで1ポイント得ることができる。
ようは速い方が圧倒的に有利なのだ。
どんなにパワーに優れたプレーヤーがいたところで、たとえ先回りして邪魔をしたとしても、触られないように交わされてそのままブイをタッチされたらパワータイプは適わない。
しかもパワータイプは自ずとスピードも落ちるだろうから、さらに相手に触ったり追いついたりすることは不可能になる。
逆にスピードタイプはブイでポイントを稼ぎつつ、相手に迫られたら持ち前のクイックネスを活かして相手の背中に回り込めば良い。
スピードタイプは全てのケースで相手よりも素早く対応できる。つまり最強だ。
唯一にして最大の欠点がまさにここで、ルールは単純ではあるが、競技として成立しているとは言い難い。
きっと現実にこの競技があったら、全員がスピードタイプのシューズを履いてプレーすることだろう。(笑)
水泳の自由形で全員がクロールを選択するように、スピードが絶対の競技で、わざわざ平泳ぎを選択しているキャラが不思議でならなかった。
壁
引用元:©sprite/久奈浜学院FC部
強大すぎるライバル。劣等感。
好きだった競技への情熱が冷めていく気持ちも、元部活経験者からしたら痛いほど分かってしまう。
万事が上手く運ぶのではなく、障害や葛藤があって、それを乗り越えることで仲間との絆も深まり、忘れかけた競技への熱も取り戻していく。
王道ではあるが、青春アニメで燃えるツボをしっかり押さえていた。
単調
引用元:©sprite/久奈浜学院FC部
ルールが単純であるがゆえに生まれる単調。
戦術に全く広がりがない。
パワータイプはスピードで勝負できない。
そうなると自ずとショートカットして相手の進行方向に入り、肉弾戦を挑むことになる。
パワータイプは基本ショートカットしか手がないので、毎回送られる指示は「ショートカットしろ!」のみ。
これではバトルの熱が冷めてしまうし、スポーツものに必須の駆け引きの奥深さが生まれない。
青春モノとしての熱量はしっかりあったが、肝心のレギュレーションがガバガバで、有り体に言えば、つまらなかった。
元々ラブコメ作品を作っていた会社のゲームとあって、競技性や戦略性を求めるのは酷だろうが、もう少し細部にこだわって作って欲しかった印象だ。
総評:もったいない
引用元:©sprite/久奈浜学院FC部
非常にもったいない作品だ。
青春スポ根アニメとしての熱量は十二分に感じられたものの、肝心のスポーツの中身が雑な作りになっており、せっかく生まれた熱量が冷めてしまう場面もあった。
誰が見ても明らかにスピード一強の競技になってしまっており、パワータイプを選んだヒロインはいつもショートカットして敵を待ち受けるばかり。
そこでスピードタイプに交わされたらおしまいなはずなのに、なぜか律儀に止まってくれる相手選手。
その相手選手たちもスポーツものなので必然的に数が増えていき、名前を覚えていないようなキャラも多数いた。
最初にヒロインが競技に目覚めるきっかけを作った他校の生徒も、最後の試合で優勝候補に負けてうなだれるシーンが流れるだけ。
脇役キャラへの雑な扱いも気になった。
キャラを削ってもっと試合に尺を使いつつ、たっぷり駆け引きを見せても良かったかもしれない。
そうできないガバガバなスポーツ性で会ったことが、つくづく残念でならない。
作画も回を追うごとに力尽きていき、バトルでのCGはともかく、日常シーンでは目も当てられないような作画崩壊も見られた。
個人的な感想:心が熱くなった
引用元:©sprite/久奈浜学院FC部
スポーツの中身に大いに問題があったが、王道の青春ストーリーはしっかり作り込まれていた。
万事が上手くいくのではなく、しっかり壁を与えることで、それを乗り越えたときの感動も味わうことができる。
個性豊かなキャラもストーリーにしっかり乗っかっていたし、他人の足を引っ張るような悪役ポジションもいなかったためか、非常にスッキリとした後味に仕上がっていた。
だからこそ競技の作り込みの甘さが目につき、せっかくの熱量も無駄になってしまうようなシーンが散見され、本当にもったいない。
原作はアダルトゲームなのだが、そういったセクシーシーンも全くない。
パンツが少し見えるシーンがある程度で、アニメ用に全カットした別作品と捉えることもできる。
アダルト原作とはいえ、スポーツものとして作り変えたのなら、もう少し競技として楽しめるような工夫もして欲しかった。
ネットでの評価は二分していて、きっとスポーツの中身が気にならない人ならば好きになるはずだ。