(82点)全12話
現実(リアル)世界からドロップアウトしました。
安息の地を求め、たどり着いた先は—–ネット世界!!
「世の中クソだな」
脱サラニートとなった”盛岡森子(もりおかもりこ)”は、
充実した生活を求めてネットの世界へと旅立った!たどり着いた場所は、
ネットゲーム—-通称“ネトゲ”。
ネトゲ世界では、サラサラヘアーの爽やかイケメン”林(はやし)”として新たな生活を始めた森子。
初心者丸出しで死にまくっていたところ、可憐な少女“リリィ”が救いの手を差し伸べる。
「天使だコレーーーーッ!!!!」
リリィとの出会いをきっかけに信頼する仲間もでき、充実していくネトゲ生活。
そんな中、リアル世界では、謎の金髪碧眼・イケメンエリート会社員の”桜井優太(さくらいゆうた)” と衝撃的な出会いを果たす。
彼との出会いで変わり始める現実世界、その影響はネトゲにも!?
果たして森子の“ネト充”生活はどうなってしまうのか!!
ホンモノの“充実”を求めて——–
ネットとリアルが交差する世界に、君もログイン!
TVアニメ「ネト充のススメ」公式サイト
Contents
ニートネトゲーマーの充実した生活?
仕事を辞めてニートになった主人公の女性の出会いを描いた恋愛アニメ
原作は黒曜燐先生。
監督は柳沼和良さん。
制作はSIGNAL.MD。
まさかの出会い
引用元:©黒曜燐・SIGNAL.MD/ススメ!ネト充プロジェクト
主人公の盛岡森子は1話の冒頭でニートに。
退職でもらう花束を豪快にゴミ箱にぶち込む森子。
早速、穏やかな退職ではないことが明らかになる。
久しぶりにパソコンの電源を付けて、新しいネトゲを始める森子。
そこで「リリィ」というピンク髪の女の子キャラと出会う。
それをきっかけに仲間も出来て、充実したネトゲ(廃人)生活を送っていたある日、曲がり角でごっつんこしたことがきっかけで、とある男性と出会うことに…
それがまさかの…というお話。
ネトゲから始まる出会いは、他のアニメでも良くある展開。
しかも、出会い方が曲がり角でごっつんこという、ここまでベッタベタな出会い方もない。(笑)
しかし、決して手垢まみれな作品ではない。
優しい世界
引用元:©黒曜燐・SIGNAL.MD/ススメ!ネト充プロジェクト
登場人物がみんな優しくてとにかく平和。
癖のあるキャラも恋敵もいない。
男女の純愛を心行くまで堪能することができた。
特に印象深かったキャラが、桜井の上司・小岩井。
小岩井は森子と連絡先を交換したり、デートに誘ったりして、自分が森子を狙っている風な雰囲気を出す。
しかし心の内では、後輩の桜井と森子の恋を応援していて、さりげなくアシストをするなど非常に後輩思いで優しい人。
恋敵になる雰囲気を出しながら、自分よりも後輩の気持ちを優先して、自ら手を引く潔さ。
最終的に森子と桜井がイイ感じになったのも、小岩井の気遣いあってこそ。
優しくて平和な世界観は余計なストレスがなく、サラッとしていて、観ていて心地の良い作品だった。
アンニュイなヒロインの魅力
引用元:©黒曜燐・SIGNAL.MD/ススメ!ネト充プロジェクト
森子は仕事を辞めてからというもの、完全な引きこもりネトゲーマーに。
社会の厳しさを痛感して、現実逃避をするように、ネトゲへ癒しを求める。
高校時代のジャージがスタンダードな服装で、髪もボサボサなまま。
自己評価が低く、他人の目が気になってしまう彼女は、普通のラブコメにはあまり見られないタイプのヒロイン。
しかし決して社交性がないわけではない。
丁寧な文体でお礼のメールを送ったり、誰かと話すときはいつも腰が低く、相手を見下すようなこともない。
整った顔立ちをしていて、非常に魅力的な女性だ。
森子は、小岩井と桜井の会社のマニュアルを作った張本人だという描写もあることから、かなり仕事ができる人物であると察することができる。
なぜそんな高スペックな彼女が、仕事を辞めなければならなかったのか…
そこに必然の疑問が生まれる。
得てして、優秀な人材ほど上司に疎まれて排除されたり圧力をかけられたり、美人な新人女性社員は疎まれ、精神的に追い詰められる事例もあると聞く。
残念ながら、その疑問を解消する描写はなかったが。
彼女が仕事を辞めた理由は知る由もないが、仕事ができる森子と、ネトゲに溺れて昼夜問わずネトゲにインする森子。
その二面性が、より彼女の魅力を引き立て、気づいたらつい応援してしまいたくなるヒロイン像が完璧に出来上がっていた。
決して作画が超絶良いわけでもなく、年齢も三十路でちょっと不潔で、卑屈でいつも自信なさげで。
しかし、ネトゲ三昧だからといって根がダメ人間というわけではない。
仕事がバリバリできるキャリアウーマンだった過去があり、誰かを思いやる優しさや、つい守りたくなるひ弱さがあり、個人的にはかなり刺さった。
ちなみに私も一時期ニートだったので、森子の卑屈さは個人的にも理解できる。(笑)
近づいていく距離
引用元:©黒曜燐・SIGNAL.MD/ススメ!ネト充プロジェクト
森子と桜井の距離感が徐々に近づいていく過程がたまらない。
10話完結で普通のアニメよりも2話分短いが、逆にそれが功を奏して、一切無駄がないストーリーに仕上がっている。
曲がり角でごっつんこしたことをきっかけにして、接点を持つ森子と桜井。
桜井は森子に怪我をさせてしまい、森子は病院で点滴を受けることに。
そこで森子と桜井は連絡先を交換し、連絡を取れる間柄になる。
しかし、恋愛に発展するにはあまりにも遠い。
桜井はなんとか森子との接点を繋ぎとめようと、いろいろ考えを巡らせる。
そんなときに耳に入る小岩井と森子のデートの約束。
森子はデートの日を勘違いしてしまい、それに気づいた桜井は待ち合わせの場所で佇む森子を見つけて、一緒に食事をする機会を得る。
そこで桜井はより森子のことが気になっていき、自分の好意を自覚するように。
気になる存在から想い人へ。
丁寧な心理描写を挟みながら、非常に綺麗な流れでストーリーが紡がれていて、自然とキャラに感情移入できた。
2人とも自分に自信がなく、なかなか想いを伝えるに至らず、一足飛びで関係が進むことはない。
それでも、お互いが勇気を出して歩み寄ることで始まる恋。進む関係。
恋愛の美しさを垣間見ることができた。
とにかく純愛
引用元:©黒曜燐・SIGNAL.MD/ススメ!ネト充プロジェクト
可愛いのはヒロインだけではない。
CV櫻井孝宏の桜井もギャップが魅力的なイケメンだ。
仕事ができて会社のホープでもあり、イケメンで性格も優しい桜井だが、恋には奥手。
自分の気持ちをなかなか口に出して言えず、森子と同じで自己評価が低い。
しかし、人としての器の大きさが違う。
自己評価が低い森子を励ましたり、優しく包み込むような包容力があり、その愛に一切の曇りはない。
決して自分の愛情を押し付けず、さりげない優しさで森子の心のほつれた糸をほどいていく。
純愛ここに極まれり。
ここまで純なラブコメは久しぶりに観たせいか、寄る年波には勝てず、思わず目頭が熱くなってしまった。
同じ男として桜井の優しさは身に染みるし、本当の優しさを彼から学ぶことができた気がする。
30歳近い2人が手をつなぐだけでドギマギしたりするのを見て、滑稽に思う人もいるかもしれない。
それでもお互いがお互いを想い合い、相手の隣にいられる人間になろうと決意し、勇気を出すことで距離が縮まっていく。
その過程は非常に美しい。
ネトゲの存在
引用元:©黒曜燐・SIGNAL.MD/ススメ!ネト充プロジェクト
2人の関係が進展していく過程に必ずあったのがネトゲの存在。
現実での恋愛に目が行きがちになるが、ネトゲでの2人の触れ合いや、ギルドメンバーとの掛け合いもあって、リアルとネトゲの両立がしっかりできていたように思う。
ネトゲがなければ、そもそも桜井と森子が出会うことはなかった。
桜井と森子は以前にも、同じゲームで相方としてプレイしていた時期があり、もちろんそこではゲーム内だけの関係で、リアルでの関係はない。
その時期は逆に森子が働いていて、桜井がニートをしていた?時期で、立場が全く逆の状態。
仕事疲れで傷心の森子は、一緒に冒険をしてくれた桜井のことを大切な思い出として持っており、桜井も、親戚の不幸があって傷心していた時期を救ってくれた森子に感謝の念を抱いている。
時が立って、新しく始めたネトゲでも出会う2人。
もちろんその時点では「ネトゲ内だけの関係」で、リアルのことなど知る由もない。
それがゲームで出会うプレーヤーとの当たり前の関係であり、リアルのことを聞くのはご法度とも言われているくらいだ。
しかしある日、曲がり角でぶつかり顔見知りになる2人。
そこで初めて「現実での繋がり」ができる。
物語が動き出し、ネトゲと現実の境界が徐々になくなっていく。
このようにネトゲは、2人が出会った場所であり、関係を深めた場所であり、それぞれにとって癒しの場所でもあり、自分とは違う自分を演じられる場所であり、人間としての成長も促してくれる場所だった。
ネトゲの存在が現実の2人に多くの影響をもたらしていて、ネトゲとゲーム内での2人の関係性も上手く描かれていたように思う。
総評:10話でも素晴らしい恋愛アニメ
引用元:©黒曜燐・SIGNAL.MD/ススメ!ネト充プロジェクト
10話だと尺的に足りないのでは、と心配もあったが、全くの杞憂で、終わってみれば綺麗にまとまった美しい純愛アニメだった。
ネトゲでの出会いをきっかけにして、現実でも接点を持つようになり、不器用ながらも距離を縮めていく過程がニヤニヤ度MAXで、本当に癒しのひとときだった。
ここ最近観た恋愛アニメの中でも屈指の出来だと思うし、人気の理由も分かった気がする。
30歳のニート女性が主人公で、少し敬遠してしまうかもしれないが、このアニメを観れば偏見が間違っていたと分かる。
恋愛は若者の特権ではない。可愛い美少女がヒロインでなければいけないという決まりもない。
恋敵も性悪女もいない。不良が絡んできたところで男が助けに入って、女がコロッと落ちるような作品でもない。
主人公は決して最強の能力を持っているわけでもないし、むしろ頼りない印象さえ受ける。
しかし、強くなくても恋愛に奥手でも、相手を思いやる心と優しさがあれば、その想いは届く。
「ネト充のススメ」は、恋愛アニメを日ごろ観ないような層にこそ観てほしい作品だ。
個人的な感想:純愛はかくあるべき
引用元:©黒曜燐・SIGNAL.MD/ススメ!ネト充プロジェクト
恋愛アニメ好きを自称する私だが、ここまで綺麗な純愛は久しぶりな気がする。
性格が歪んでいるキャラが一切出てこず、ヒロインを争う恋敵もいない。
いやらしさも全くなく、まさに純度100%。
高校生の未熟な恋愛もいいが、30歳近い2人の恋仲を描いた作品だからこそ、年相応の深みが出て、現実感が増す。
しかも年齢にそぐわず、恋に不慣れな男女というギャップもあって、高校生の純愛とは一味違った良さがあった。
ネトゲで出会った人が、実は過去にも一緒にゲームを遊んでいて、さらには現実でも出会い、関係を深めていく。
「ご都合主義」的な展開ではあるが、「こんな偶然があったら…」と夢を見させてくれるような純愛アニメだ。
あらすじやキービジュで判断せずに、純粋で優しい男女の恋愛を心行くまで楽しんでほしい。
きっと私みたいに一人でニヤニヤしてしまうはずだ。