2017年

【2017アニメ】「3月のライオン 第2シリーズ」アニメレビュー





(86点)全22話

主人公・桐山零は、幼い頃に事故で家族を失い、心に深い孤独を負う17歳のプロの将棋棋士。東京の下町に一人で暮らす零は、あかり・ひなた・モモという3姉妹と出会い、少しずつ変わり始めていく――。これは、様々な人間が何かを取り戻していく、優しい物語。そして、戦いの物語。TVアニメ「3月のライオン 第2シリーズ」公式サイト




プロ棋士の高校生の日常を描いた青春アニメ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (86点)
完走難易度 易しい

原作は羽海野チカ先生。

監督は新房昭之さん。

制作はシャフト。

2期

©羽海野チカ・白泉社/「3月のライオン」アニメ製作委員会

この作品は1期から1年後に制作された「3月のライオン」の2期にあたる作品だ。

構成は1期と同じ全22話。プロ棋士として、そして高校生として生きる17歳の主人公の生き様を描いた青春アニメだ。

1期から1年後というほぼノーラグで放送されていることを考えても、おそらく1期制作時点で、2期放送は前提として決まっていたのだろう。

1期であまりに不自然に残された伏線の数々。その伏線を紐解いていくのがこの2期だ。2期感は特になく、「1期23話」という感じでスムーズに始まる。

将棋科学部という部活を作り、高校生になって初めて「部活」という組織に入り、生まれて初めて「学校の友達」ができる主人公。

1期が産みの苦しみだとしたら、この2期は主人公が大きく羽ばたいていくストーリーだといえる。

悩める主人公、心配をかける主人公、誰かに頼ることを覚える主人公から、誰かに頼られる主人公、勇気を出して踏み出していく主人公、確かな将棋の腕でのし上がっていく主人公が描かれている。

そういう意味では2期の方が、より娯楽性の高い「アニメ」っぽい面白さが詰まっている。

日常の面では悩みを聞いてもらって、周りに心配をかけるばかりだった主人公だが、2期では悩みを聞き、頼られる側になっている。

序盤で起きる3姉妹次女の学校のいじめ問題。学校でいじめられていた次女の友達。どんどんエスカレートしていくいじめに対して、先生もクラスメイトも見て見ぬふりをする。

ついにその友達は追い詰められて転校することになってしまう。友達との別れを悲しむ次女と、転校を歯牙にもかけないいじめた側。いじめに反発した次女は、ついにいじめの標的になってしまう。

そんな次女を主人公は優しく包み込む。2期では3姉妹の家庭の温かさに何度も救われた主人公があるからこそ、より助ける側になったときの主人公の成長やカッコよさが際立っている。

将棋の面でも、1期では苦労して屈辱も経験した主人公だが、2期ではまた一歩、最強の名人でもあり将棋の神様でもあるヨッシャルへと近づいている。

1期がしっかり2期のストーリーを下支えしており、その分2期ではいろんなところに変化や成長が見られ、1期よりもまた見ごたえのある作品になっている。

成長

©羽海野チカ・白泉社/「3月のライオン」アニメ製作委員会

主人公の成長や優しさが感じられる2期だ。

いじめの矛先が自分に向いた次女は泣いて家を飛び出してしまうものの、それでも友達のために勇気を出して行動したことに対して「間違っていない」と言い切る。

その言葉に衝撃を受けた主人公は次女の強さに救われ、彼女のために生きると決める。そして次女の祖父も、彼女の勇気ある行動を称え、彼女を優しく包み込む。

しかし長女は、妹が泣いている時に何も声をかけられず、妹に「なぜそんなことをしたのか」「逃げてほしかった」という正直な思いを抱えていたと主人公に吐露する。

それに対して主人公は、自分がいじめられていた時に誰からも手を差し伸べられなかった経験を引き合いに出し、自分がいじめられるかもしれない状況にも関らず友達に手を差し伸べた次女の勇気に感動し、そんな妹を育てた長女にも恩があると、落ち込む長女を励ます。

次女、長女共に悩みのベクトルは違えど、それぞれに対して主人公は彼女らの目線に立った言葉をかける。

それはアドバイスとか慰めとか、大層で上から目線なものではない。彼女らの立場や気持ちに寄り添った等身大の言葉だからこそ、ひたすらに胸を打つ。

相手の立場を認めることが何より大切。何か気の利いたことを言うわけでもなく、偉人の格言を引っ張り出すわけでもない。

いじめられていた経験があるからこそ紡ぎ出せる主人公の言葉の重みや声色。

そこから伝わる優しさ。心が温かくなってそっと包み込まれるような、自然と涙がこぼれてしまうような成長の跡。

自分が心配される側から、他人を心配し、その他人のために生きようとすら思える主人公の成長に、つい嬉しくなる。

いかなる悩みににもまずは「相手を認める」ことが第一歩。主人公の言動から学べることは多い。

社会派

©羽海野チカ・白泉社/「3月のライオン」アニメ製作委員会

2期の特に前半は社会派の色が濃くなっている。

3姉妹の次女のいじめ問題が2期のだいたい半分の尺を使って描かれている。

その間ずっと胸糞悪い状態が続いているため、1期とはまた違う意味で、胸が締め付けられる展開が多い。

いじめている側だけが追い込まれて、いじめる側は全く悪びれる様子がない。担任の先生とクラスメイトはいじめを見て見ぬふり。

主人公や次女の姉や祖父など、味方がいることで心理的に救われる場面もあるが、それでも一向に天罰がくだらない展開に、もやもやが止まらない。

「スカッとジャパン」だったら番組の途中にクレームが来るレベルで、いじめがなかなか解決に向かわないまま、むしろ将棋よりもそっちの方を中心にストーリーが展開されている。

もちろんナイーブな問題だからこそ難しいし、単純に善と悪で切り離せないといういじめの側面を如実に描き出しているという意味では、思い切りやってくれて良かったとすら思える。

総評:安らぎ

©羽海野チカ・白泉社/「3月のライオン」アニメ製作委員会

優しくて安らぎに満ちた時間だった。時間の流れを忘れるほど引き込まれてしまう雰囲気を持っているアニメだ。

1期からの流れもしっかり汲んでおり、主人公の将棋に対する思いや、引っ越す前の生活、将棋科学部での活動などがしっかり描かれている。

まだ因縁の後藤や、「家族」として暮らしていた弟と姉との行く末、いじめっ子の変化など、描かれていない部分があるとはいえ、より主人公像というのが明瞭になった2期だった。

正直伏線どうこうはこの作品ではさして重要ではない。それよりもいじめを主題においた前半戦、棋匠戦のタイトルをかけた後半戦。

それぞれで考えさせるテーマがあり、それぞれで主人公の成長や人の温かさを存分に感じられたことがただただ嬉しい。

いじめについての問題を扱った前半は、「3月のライオン」という作品らしくない社会派なストーリーになっている。いじめた側は一切悪びれることなく、次々と標的を変えいじめていく。

いじめられる側は声を出せず、周りの人間も自分が標的になりたくないから静観している。教師まで自分に火の粉が降りかかるのを恐れ、見て見ぬふりをする。

そういった教育の闇をリアルに描き出している。友達をかばったことで、ついには3姉妹の次女にまで魔の手が及ぶ。

しかし次女は決していじめに屈せず、自分は正しいことをしたと胸を張り、いじめっ子に対しても堂々と向かっていく。

途中でいじめがエスカレートしていく様子を見るのは心が痛んだが、自分を強く持った次女には尊敬の念しかなかった。

それだけに、いじめた側に何の制裁もなく終わってしまったことがいまだに納得できない。

教師が変わったことで一応は決着したが、いじめっ子は将来への不安をいじめの理由にするばかりで反省がなく、形だけの謝罪しかしていない。

はっきりと勧善懲悪でもバチは当たらないほど、いじめっ子はどうしようもないクズだった。

だがいじめを跳ね返していく過程で描かれる家族愛や、主人公の次女に対する愛情には大いに感動させてもらった。セリフの1つ1つに痺れ、思わず画面が見えなくなってしまうほど感動した。

感情移入しすぎて感情を持っていかれてしまうかと思うほど素晴らしい作品で、キャラクターそれぞれにリアルな悩みがあり、それでも前を向く強さに何度も心を打たれた。

後半の将棋パートでも、様々な思いを背負って戦う棋士たちの姿に思わず胸が熱くなったし、プロの第一線で戦うとはこういうことなのだと、改めて将棋の世界の厳しさ、そして世の中の厳しさを学ぶことができた。

夢に破れて故郷に帰る友の想いを背負って、老体に鞭を打って戦う柳原さん。還暦を過ぎても一戦で戦う姿はただただかっこ良く、長い人生を費やすほど夢中にさせる将棋への興味も持つことができた。

セリフの1つ1つ、演出の1つ1つ、背景の1つ1つ、キャラの多彩な表情や優しい声色、自然が作り出す音。全てが優しさに溢れ、「3月のライオン」という素晴らしい一つの作品を作り出している。

演出が少し独特で癖があり、キャラやストーリーより前に出てしまっているシーンも見受けられるが、それでも大きくはみ出すような異質さはなく、監督の色としてほんのり利いていたと思う。

原作はまだ続いているので続編にぜひとも期待したい作品だ。

雑感:美しい

©羽海野チカ・白泉社/「3月のライオン」アニメ製作委員会

これほど情緒的で美しい作品は他にいくつもない。

誰もが主人公を応援し、誰もが真剣に1つのことと向き合い、誰もが優しさに溢れている。

どんどんストーリーにのめり込んでいくというよりかは、目が離せないほど惹きつけられる魅力を持った作品だ。

そして気づいたら将棋を打ちたくなっている。胸を打つ感動アニメかと思いきや、将棋までとことん突き詰めた作品で、本当に隅々までこだわって作られている作品だ。

個人的に思うのは、もし「今」このアニメを制作するとしたら、確実に主人公の声は花江夏樹さんになると思っている。(笑)

あの風貌であの性格だったら間違いない。けれど放送が3年前で本当に良かった。

もちろん花江さんのことは嫌いでもなんでもないし、なんなら3年前でも十分可能性はあったと思うし、むしろオーディションは確実に受けていたと思うが、それでも河西さんをチョイスした制作陣には感謝だ。

河西さんだからこそ出せる優しさや不器用さが確かにあったし、こんなに長い尺で河西さんの声を聞くのは恐らく初めてだが、声を当てていることを忘れるくらい没入感のある役作りだった。

もちろんお馴染みの花澤さんや茅野さんの安定感はいわずもがな。最初は「またか」という気持ちが多少あったが、気づけば声優さんの顔など一切浮かばないようになっていた。

それほどいろんなことを考えさせてくれるアニメだったし、人生の教科書として常に持ち歩きたいくらい衝撃的で心を揺さぶられる作品だった。

まだ観たことがない人は1期からぜひ観て欲しい。超オススメだ。




COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です