(73点)全12話
かわいくて面白い、まんが家寮生活が始まりますTVアニメ「こみっくがーるず」公式サイト
まんが家寮生活をする女子高生を描いたお仕事×日常アニメ
漫画家を目指す主人公と、同じ寮で暮らす漫画家少女の日常を描いたきらら枠のシチュエーションコメディ。
原作ははんざわかおり先生。
監督は徳本善信さん。
制作はNexus。
まんが家寮へ
引用元:©はんざわかおり・芳文社/こみっくがーるず製作委員会
主人公の薫子は漫画家を目指す女子高生。
しかし読者アンケートでは堂々の最下位で、評判が芳しくない薫子を心配した担当編集者が、彼女に漫画家が住んでいる女子寮を勧める。
そこで同い年の漫画家と交流を深めながら、自分の漫画家の技量を磨いていくという青春要素もある日常アニメだ。
きらきらと光り輝く絵のタッチは、いかにもきらら系という趣。
期待と不安が入り混じった新生活。
鈍くさくてドジっこでネガティブ志向な主人公は、漫画家としての技能も拙く、マイナスから始まるタイプの主人公。
寮で出会う連載を持っている漫画家の女の子はもちろん、自分と同じタイミングで入寮した女の子にも後れを取る始末。
アシスタントの作業も上手くできずに、漫画を書く上で基本となるベタ塗りで失敗するなど、しょっぱなからドジっ子ぶりを発揮。
しかし背景の美しさや漫画のコマ割り風の会話など、この作品らしい演出が随所に見られ、主人公のこれからの成長に期待感を抱かせる序盤になっていた。
キャラの個性もしっかりとやり取りの中に乗っていて、夢を追う爽やかな青春模様を醸し出していた。
成長
引用元:©はんざわかおり・芳文社/こみっくがーるず製作委員会
主人公の成長にスポットが当たる作品だ。
薫子の漫画家としての技能は他の寮生の誰と比べても低く、そのことをコンプレックスに感じている。
しかしそこで折れずに成長をする意欲を持ち、漫画家になるという強い決意を持つ。
シリアスになりすぎずに、成長を手助けするキャラや会話が必要な中で、しっかり工夫がされていたように思う。
キャラの個性を意識した上で、欠点をズバズバ指摘するキャラを後回しにして、まずは薫子に比較的優しく接するキャラでギャグパートを展開。
薫子の拙い漫画に対してひとしきりツッコミを入れた後で、男勝りで遠慮なく言うタイプのキャラが欠点をズバッと指摘する。
それぞれのキャラの個性がしっかりできているからこそ、変にシリアスにならずに、作品の世界観を維持しながら着実に成長できていた。
夢を叶える過程では苦しいことは山ほどあるが、作画演出含めてよりマイルドに描くことで、きらら系の良さを損なっていなかった。
脚本を担当したのは花田十輝、高橋ナツコ、待田堂子、横手美智子という黄金カルテット。
青春を描かせたら右に出る者はいないメンツが揃っていて、いかにこのアニメ制作に力を入れていたかが分かる。
高橋ナツコさんに関しては少し評価が定めにくいところがあるのも周知の事実だが(笑)、この作品全体を通して、「可愛さを前面に出しながらも夢を追う主人公を描く」というポイントもしっかり描けていた印象だ。
ネガティブ
引用元:©はんざわかおり・芳文社/こみっくがーるず製作委員会
主人公の薫子はネガティブな性格。
失敗をすることを恐れてなかなか踏み出せない上に、呼吸をすることにさえ罪悪感を感じるほどの根暗さだ。(笑)
そのネガティブな性格は人によっては捉え方が異なる部分であり、嫌悪感を示す人もいるだろう。
自分に自信を持てないのは当たり前だが、自分を過小評価しすぎるキャラというのは見ていて気持ち良いものではない。
しかも薫子の場合は、自己否定をするときに必ずと言っていいほど大げさな反応をする。
そんなシーンが各話で必ず1回は挟まれる感覚だ。
声優さんの演技にも問題はあるが、自分のことを貶す言葉を聞かされると、聞いている方の気分も心なしかげんなりしてくる。
ゆるふわテイストのキャラ絵で何とかごまかしてはいるが、一歩間違えば主人公への興味がしらけるレベルのネガティブさだった。
ネガティブなのも個性の一部だが、夢を追うキャラにはもっとプラス志向でいてほしい。
そう思う場面が幾度もあった。
目標へ至る過程
引用元:©はんざわかおり・芳文社/こみっくがーるず製作委員会
目標がありそれに向かって努力する主人公。
それだけでストーリーは盛り上がる。
夢へ至る過程には様々な困難・対立があり、失敗と成功を繰り返しながら、仲間の支えもあって一つずつ壁を乗り越える。
しっかりとレールに乗った、良い意味で定番の成長ストーリーになっていた。
薫子はなんとか周りに追いつくために、ネームをひたすらに書く。
毎話仲間とのやり取りで得たインスピレーションを、そのままネームに落とし込んで編集部に持ち込みをする。
テーマや世界観で迷走して、絵もまだまだ拙いネームは、毎回お決まりのごとくボツを食らう。
しかし何度心が折れかけながらも、諦めずに何度も挑戦する。
ネームの内容からも薫子が日常を大切にしていることが伝わってきて、ただ時間が流れるだけの日常アニメとは違い、全てが彼女の思い出、さらに漫画家としての経験になっている。
そして11話で薫子の努力が報われて、念願の連載デビューを飾るのだ。
成長ストーリーとして非常に綺麗にまとまっており、ゆるふわな日常と良い相乗効果を生んでいた。
総評:綺麗
引用元:©はんざわかおり・芳文社/こみっくがーるず製作委員会
12話でしっかりまとまっている作品だ。
きらら系作品特有のゆるふわな可愛さは最後まで維持しつつ、夢を叶えるために頑張る主人公を描く。
シリアスとは無縁の世界観は、いかにもきらら系という印象だ。
しかし逆にシリアスがないことに違和感も感じてしまう。
薫子はアシ作業も出来ないほど漫画家としては未熟なスタート。
ただでさえ周りとは比較にらないほど後れをとっていたのにも関わらず、気づけば(ゲスト)連載作家。
何もかもが都合よく進み、どうしても目標を叶える設定ありきの中身が薄いストーリーになってしまっていた。
夢を叶える過程では必ず苦しみが伴う。
誰も読んでくれない。頑張っても頑張っても報われない。いつも酷評ばかり。漫画仲間との意見の相違。ライバルとなる漫画家。
薫子も確かに何度もボツを食らってはいるが、そこから伝わってくる薫子の強みは「継続性」くらいのもの。
ストーリーが平坦すぎる。
ネームを持ち込んではボツを食らう。泣く。また持っていく。ボツを食らう。泣く。
薫子の持ち込む作品は、回を追うごとに作画のクオリティは上がっているものの、ストーリーの中身は連載が決まるまで迷走を続ける。
担当編集にダメ出しを受けて成長の糧とする重要なシーンも、ギャグで片づけられてしまったり、ボツの一言で済まされたりで大幅にカットされている。
夢を目指す過程のストーリーがあまりに単調で淡泊で、最終的に連載が決まったときの感動もいまいち共有できなかった。
率直に言うなら、連載作家を本気で目指しているとは思えなかった。
きらら系で可愛さを維持しながらシリアスを入れ込むというのは至難の業だが、薫子が立ち直れないような状況や、努力をする過程をもっと入れても良かったと思ってしまう。
薫子の性格もネガティブ一辺倒ではなく、どこかで自分に自信を持つタイミング、人間的に成長するタイミングがあっても良かった。
とはいえ薫子の漫画家としての成長含め、女子高生たちのキャッキャウフフな日常がしっかり詰まっていたので、作品としてはかなり良く出来ていたことに違いはない。
個人的な感想:きららの呪縛
引用元:©はんざわかおり・芳文社/こみっくがーるず製作委員会
きららの印象といえばゆるふわ可愛い日常アニメ。
「可愛さを補給したいならきららアニメを観ろ」とは、おじいちゃんの教えだ。(適当)
この「こみっくがーるず」にも女の子の可愛さはこれでもかと詰まっている。
メインとなる寮生それぞれに個性があり、「可愛い」に溢れた優しい世界が構築されていた。
ボケツッコミを挟みながらテンポ良く進む会話。女の子同士のスキンシップ。
そんな可愛い日常に加えて、このアニメでは「夢を叶えるために頑張る主人公の姿」というのも柱になっている。
劣等感に苛まれながらも、ひたむきに夢を目指す少女。
同じきらら系の大人気アニメ「NEW GAME!!」も、ゲーム会社でひたむきに頑張る少女を描いた作品だった。
たが、かの作品が夢を描く過程をつぶさに描いたのに対し、この作品では過程を飛ばして日常を描くことを重視していた。
そこがかの作品との差を生んだのかもしれない。
1期2期合計24話を放送したかの作品とは違い、12話構成で表現する難しさはあったが、それでも過程を描く尺は十分にあったはず。
良くも悪くも「きらら」という「呪縛」に囚われたアニメとなってしまった。
円盤の売り上げは1巻から6巻までで合計1700枚程度。
2期への見通しは厳しいと言わざるを得ない。
きらら系のしがらみがあったこと、漫画家を目指す過程でリアリティを出し切れなかったこと。
いまいち人気が出なかった理由は様々あるが、ゆるふわ少女たちの可愛い日常が観られたし、脚本としてもきっちり着地していたし、作画も終始安定していたので個人的には大満足。
きらら系アニメに抵抗がない人にはぜひオススメしたい。