2020年

【2020アニメ】「魔王城でおやすみ」アニメレビュー





(66点)全12話

かつて、人と魔が交わり、共に存在した時代。
魔王は人間の姫をさらい、自らの城に幽閉した──。
囚われのスヤリス姫は、檻の中でつぶやく。

「…寝る以外…することがない」

牢をこっそり抜け出して、よりよい安眠を求め魔王城を…探索!?
自由気ままな人質姫が魔物たちを巻き込んで好き勝手!!
新感覚、睡眠ファンタジーコメディー!
TVアニメ「魔王城でおやすみ」公式サイト




囚われの姫様が安眠を求めるファンタジーコメディ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (66点)
完走難易度 普通

原作は熊之股鍵次先生。

監督は山﨑みつえさん。

制作は動画工房。

人質

©熊之股鍵次・小学館/魔王城睡眠促進委員会

王国の姫様が魔王の人質となってしまい、魔王城へ連れていかれてしまう。

魔王城に連行される姫。いろいろと良からぬ妄想が膨らんでしまうものだが、このアニメはそんな妄想とは対極の位置にある穏やかでハートフルな作品だ。

姫様は魔王軍の人質になってしまうも、全くと言っていい程酷い扱いを受けない。あんなことやこんなことは全く起きない。

むしろ傷をつけないようにと大事に匿われる。よくよく考えてみればそうだ。人質を傷つけてしまったらその人質は効力を失ってしまう。

大事にされる姫様は退屈な日々を送る。特に何もない魔王城で「寝ること」だけが唯一の楽しみになり、固いベッドや枕から脱却して、いかに快眠を手に入れるかというストーリーになっている。

何ともハートフルでピースフルな作品だ。「魔王城に連行される姫様」が主人公とは思えないほど、無害で平和な世界観。

NHKの日曜朝から放送されていても全く問題ない。姫様が快眠できる方法を探す。老若男女誰でも楽しめる。(笑)

自分に合う枕やマットレス探しが「クエスト」扱いになっており、そのクエストをクリアするごとに「よくできました」という早見さんのナレーションが入る。

絵のタッチやテロップでもひらがなを多用しているのを見るに、相当「優しい世界」という統一感を意識して作られているのが伝わる。ここら辺は流石の動画工房と言ったところだろう。

主人公がとにかく眠る。こんなアニメは前代未聞だ。(笑)

しかし快眠を探す中にも、姫様のひょんな行動が自分を助けに魔王城にやってくる勇者を助けることになっていたり、姫様を問いただそうとする度に、姫様の寝顔を見て毒気を抜かれる魔王がいたりで、くすっと笑えるシーンも挟まっている。

RPG風の演出を入れ込むなどの動画工房の工夫も随所に見られ、制作陣の愛を感じる作品だ。

演出

©熊之股鍵次・小学館/魔王城睡眠促進委員会

ストーリーに全く気を付ける必要がないので、自ずと意識は演出や作画、声優さんの演技などの方向へ向いていく。

やはり一番に触れるべきは、主人公のスヤリス姫を演じる水瀬さんの演技だろう。

恐らく水瀬さん本来の地声に近い声で演じられているように聞こえるのだが、彼女の声がこの作品の世界観をしっかり作っている。

静かに穏やかに。一度も声を荒げることなく、常に眠たげに、低いトーンのまま。

恐らくこんな演技をすることは、声優人生の中でもほとんどないだろう。(笑)

ほとんどないからこその難しさは間違いなくあるはずだが、すやすやと寝息を立てるような水瀬さんの落ち着いた声色が、まさしく睡眠導入剤そのものの効果を持っており、気を抜けば夢の世界に連れていかれそうになってしまうほどの安らぎをもたらしている。

魔王を演じる松岡さんの演技も一般的な魔王ではなく、この作品仕様の魔王にしっかり合わせており、スヤリス姫に翻弄される可愛さをコミカルに演じており、エピソードにオチをつける意味でも魔王は大活躍している。

ギャグ

©熊之股鍵次・小学館/魔王城睡眠促進委員会

中盤あたりまで観れば、このアニメが眠るだけのアニメではないことが良くわかる。

というのも例えば、魔王城での姫様の様子と並行して、勇者が姫様を救出するために魔族と戦っているシーンがある。

魔王を助けるために魔族を倒し、次なる敵は魔王軍の幹部と思われる「十傑」と呼ばれる精鋭たち。その精鋭たちが円卓会議で怪しげに次なる作戦を話し合う。

RPGや他のバトルアニメなどでよく見るシーンだが、そもそも姫様は勇者が心配するような生活を送っていないし、円卓会議の場にはなぜか姫様もいて、気の抜けるようなブブゼラを鳴らしている。(笑)

ここら辺の脱力感がこの作品ならではで、子供に翻弄される大人のあたふたした姿が癒しをくれる。

ところどころに目立たない程度のパロディもある。中途半端に似せるのではなく、ほんの少し匂わせる程度のパロディなので気づく人は気づくし、気づかない人は気づかない。

みんなが気づくような大げさなものではないところがミソだ。

大胆に思い切りパロディをやってしまうと、どうしても作品の本筋から逸れてしまう。それを分かっているからひっそりと潜ませる程度に留めている。

コナンだったりタッチの有名なシーンのセリフだったり。さもオリジナルのセリフのように潜んでいるから、気づく人はそこに面白さを見出すことができる。ちなみにどちらも同じくサンデー作品だ。(笑)

自由奔放な姫様に翻弄される魔族の人々は、いわばツッコミ役のような立ち位置になっており、ボケとツッコミが成立しているからオチもつきやすい。

多方面のギャグ要素をしっかり入れて、快眠を探す以外のところでもアニメとしての面白さを表現しようという意気込みを感じる。

日常アニメの作り方を熟知している動画工房ならではだ。日常を送るだけではなく、その日常をいかにして広げて、キャラクターを動かして、より多くの人が楽しめるようなアニメにするか、というところをかなり綿密に考えて作られている。

アニメを観るだけで、原作へのリスペクトや作品への愛を感じることができる。これは動画工房の全ての作品に言えることだ。

総評:by動画工房

©熊之股鍵次・小学館/魔王城睡眠促進委員会

動画工房によってたくさんの愛を注がれた作品だ。

作画にしても演出にしても声優さんたちの演技にしても、全てにおいてこの作品を面白くしようという気概に溢れている。

世界観は終始統一されている。より良い眠りを求める姫様が常に眠たげな声でしゃべり、寝具の素材を探したり、安眠を助けると聞くやあっちこっちへ赴き、心地よい疲れとともにベッドに入り、早見さんの優しいナレーションと共に眠りに落ちていく。

眠たくなる要素がそこら中に溢れている中にも、アニメとしての面白さもしっかり追求されており、日常アニメ特有の「飽き」をなるべく緩和しようという工夫も見られる。

マイペースな姫様が自由気ままに行動することで、いい意味で周りのペースを乱し、極悪非道な魔王でさえも姫様のペースに飲み込まれ、ツッコミ役に回ってしまう。

どんどん魔王城が姫様一色に染まっていく流れが面白い。姫様を救うために必死に戦っている勇者のメンツは丸つぶれだ。(笑)

ついには魔王軍は勇者の手助けをしている始末。いよいよ勇者はただの端役でしかなくなっている。(笑)

そういう構図を意図して作っているところにもこの作品の「妙」が見える。

「勇者が姫様のために戦う」という至極当然の構図を逆手にとって、実は救われて当たり前の姫様が魔王城で快適な暮らしをしている、という方向で描いている。

勇者は1話で、姫様を助けに魔王城へ向けて出発しているが、結局最終話に至るまで魔王城に到着することはなかった。(笑)

勇者が助けに行くという構図は崩壊している。人質が平気で魔王城の周りをうろつくし、勝手に人間界に帰るし、人質がさらに人質に取られるし、魔王城の魔族は全員姫様のことをわが子のように可愛がってしまっている。

全ては姫様の良い眠りのために。1本の大きな筋が通っており、姫様の行動理由の全てがそこに帰結する。

ただし終盤、人間界にある自分の部屋に姫様が帰ったシーンに関しては、姫様の気持ちにも変化が見える。

そこには長年連れ添った一番自分に合うベッドがある。

しかし姫様は魔王城に帰還することを自ら選択する。「快適な寝具を揃えることこそ良い眠りへと繋がる」と考えていたのが序盤の姫様だ。

しかし12話を経て、姫様は魔王城のみんなと共に暮らし、心地よい疲労と共に眠りにつくという生活を選んでいる。

姫様は魔王城での暮らしを通して、良い眠り以上に「安心感を持てる空間で寝る」という、「周りに誰がいるか」というところを重視するようになったのでは、と勝手に解釈をしている。

最後まで眠ることに異常な熱意を燃やす姫様がいて、それに翻弄される魔族という構図があり、終始癒しに溢れたハートフルなアニメだった。

雑感:寝落ち

©熊之股鍵次・小学館/魔王城睡眠促進委員会

この作品を観ながら何度寝落ちしそうになったことか。(笑)

水瀬さんのゆったりとした声と、早見さんのナレーションで何度も昇天しそうになってしまった。

姫様は快適な眠りを求めているが、真面目な話、睡眠というのはだいたい1日の約3分の1を占めるので、スヤ姫のように快適な睡眠を追い求めることこそ、日々の健康に繋がるのは間違いない。

私事にはなるが、マットレスや枕を高反発の物に変えてからというもの、そして毎日の生活に運動を取り入れてからというもの、毎日の睡眠が楽しみで仕方がない。

それこそスヤ姫もビックリなほどの早さで眠りにつくのが常だ。睡眠も深く、寝起きもバッチリ。(笑)

心地よい疲労と共に、自分の身体に合った最適な寝具で眠りにつく。これが間違いなく優勝だ。(笑)

だから終始スヤ姫の行動に共感しながら楽しむことができた。そこかしこに快眠のヒントが隠されていて、意外に勉強になるアニメでもあった。(笑)

スヤ姫と一緒に眠りの世界に落ちたい人、そして快適な眠りの極意を知りたい人にはオススメだ。




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