2020年

【2020アニメ】「神達に拾われた男」アニメレビュー





(55点)全12話

ブラック企業にシステムエンジニアとして勤めている39歳の独身サラリーマン竹林竜馬はひとりアパートであっけない最後を遂げる。天界に召された竜馬だったが、創造神、愛の女神、生命の神に協力を求められ、子どもの姿で異世界へ転生!?深い森で一人、のんびり暮らし始めた8歳のリョウマは、魔法でテイムしたスライムたちの研究にのめり込みながら新しい人生を謳歌する。やさしい人たちに囲まれて毎日が楽しい、まったり異世界スローライフファンタジー!TVアニメ「神達に拾われた男」公式サイト




神によって異世界に転生する主人公を描いた異世界ファンタジーアニメ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (55点)
完走難易度 難しい

原作はRoy先生。

監督は柳瀬雄之さん。

制作はMAHO FILM。

転生

©Roy・ホビージャパン/『神達に拾われた男』製作委員会

ブラック企業でこってり絞られていた主人公がある日死に、異世界に転生するという、いわゆる「なろう系」のテンプレみたいな作品だ。

まだまだ衰えを知らないなろう系アニメ。親の顔より見てきた世界観。(笑)

序盤を観た段階で、他のアニメと差別化できる部分があるとしたら、それは主人公がスライムの研究を3年間1人でしている「スライム使い」であるということ。

主人公は8才で異世界に転生し、そこから森の中でスライムの研究に励み、ある日の冒険者との出会いを境にして、外界との繋がりを持つようになり、そこから様々な「出会い」の物語が動き出していく。

主人公は最強というほど最強という感じではなく、バトル要員というよりかは、サポート役に近い立場でストーリーに関わっていく。

もちろんバトルシーンというのもあるにはあるが、どちらかというとバトルよりも、日常的な部分にスポットが当たっており、経験上異世界と日常ががっちりハマったアニメはないので早くも不安だ。

作画も1話から既に不安定で、なんならOPテーマのキャラの作画も崩れかけている有り様で、監督・作監・原画のクレジットが全部柳瀬さんという名前で埋められているところからも、いろいろとお察しなアニメだ。

正直見飽きた世界観といい作画といい、特に見どころのない1話といい、期待感は全くと言っていい程ない。

唯一見どころとなるのはキャストくらいだろうか。とにかく登場するキャラクターのキャストがいちいち豪華だ。

子安さん、早見さん、小野Dさん、森久保さん、田村Mさん…etc

キャストに結構なお金をかけていることは良く伝わる。一方で作画にもう少しお金をかけることはできなかったのだろうか…と思わずにはいられない。

冒険

©Roy・ホビージャパン/『神達に拾われた男』製作委員会

主人公は森での生活に別れを告げ、冒険者としてギルドに所属し、様々なクエストを通してランクを上げつつ、いろいろな人との出会いを重ねていくことになる。

特筆すべきところのないお馴染みの展開。既視感どころの騒ぎではない。(笑)

森にいたときの研究で培った様々な魔法を使った技術や戦闘力。

それらを活かして難局を乗り越えて見せたり、ギルドの試験でもゆうに合格してあっさりと冒険者の仲間入りをしたり。

360度どこから見てもテンプレート。真新しさは欠片もないほど基本に忠実ななろう系アニメだ。

やはりというべきか、3話まで視聴した段階で日常寄りの世界観は早くも退屈を生んでいる。

異世界について、その異世界に住むキャラクターについて、さらに主人公の魔法を使った引き出しなど、情報が少しずつ追加されているとはいえ、「で?」という感じで3話時点では特に発展性は見えない。

お掃除の依頼を受けてスライムを使って綺麗にする。絵面が地味すぎるにもほどがある。(笑)

ここから一気にギアが上がるような展開でもあれば話は別だが、異世界に来てまで日常をのほほんと暮らすようなアニメは、やはり肌に合わないようだ。

共感性

©Roy・ホビージャパン/『神達に拾われた男』製作委員会

既視感ばかりの作品ではあるが、共感性が高い作品であることが中盤あたりから分かるようになってくる。

キャラクターに寄り添って同じ気持ちになれる。異世界転生アニメでは結構珍しい。

なぜなら異世界転生アニメでは、元いた「現実世界」を置き去りにして、全く新しい気持ちと、姿と、立場で新しい生活を送ることがほとんどだ。

過去など振り返らずに異世界の生活様式に染まり、そこが新しい「現実」となることで、もはや転生前の世界はなかったかのように扱われてしまう。

しかしこの作品では「元いた世界の主人公」と「異世界での主人公」が確かにリンクしている。

回想シーンやモノローグで度々、元いた世界の自分と今の自分の境遇を重ねることで、ちゃんと魂が受け継がれ、元いた世界の自分も価値あるものとして残っている。

例えば4話で「ブラック企業で働いていた頃に朝帰りはしょっちゅうだった。しかし、家では必ず母親が早起きして待ってくれていた。だが母親は死んでしまった。それからずっと孤独に生きてきた」という回想シーンが入る。

家族の温かさ。誰かが家で帰りを待ってくれているという当たり前のようで当たり前ではない幸せ。

異世界でも朝帰りをすることになる主人公を、異世界で知り合った仲間たちが温かく迎える。家族の温かさを久しぶりに感じた主人公は思わず涙を流す。

その涙のなんと温かいことか。誰もが自然と感情移入をしてしまい、主人公と同じように胸がいっぱいになって温かい気持ちになれる。共感性の高さがそこに表れている。

中盤で主人公は独立して自分の店を開くのだが、そこでもブラック企業に勤めていた元の世界の頃の記憶が、主人公の中に確かに残っており、「福利厚生」に何より重きを置いた経営を心がける。

私は度々、元いた世界を置き去りにする転生アニメに疑問を呈してきた。

死んでしまったとはいえ、確かに元いた世界での経験や思い出、やり残した後悔があるはずで、それを異世界に持ち込まずにまっさらな状態で生きるのは個人的には違和感がある。

その欠けたピースをこの作品はようやく埋めてくれた。ようやくかゆいところに手が届いたような爽快な気分だ。(笑)

序盤こそ見慣れた展開ばかりで飽き飽きするが、元いた世界とのリンクがしっかりあることで、より主人公に寄り添う形でアニメを楽しむことができる作品だ。

総評:異質

©Roy・ホビージャパン/『神達に拾われた男』製作委員会

序盤は型にはめたような極めて退屈な異世界転生アニメという印象を受ける。

だが物語が進むにつれて徐々に尖りはじめ、他の作品にはない独自の世界観が形成されている。

冒険者になり、そのままルーティーンのようにクエストをこなしていく流れかと思いきや、主人公は途中で自立の道を進み、異世界に存在しない新しい仕事で生計を立て、社長として従業員を雇うようにまでなる。

異世界で会社を経営するなど、他の転生アニメではなかなかない発想だ。

しかも前世の知識や経験を持ち込んで、従業員ファーストで福利厚生を充実させたり、経営を軌道に乗せていくという構図は素直に面白い。

会社を経営するにあたって、主人公の中に確かに前世の経験が息づいている。前世ではいわゆるブラック企業に勤め、朝帰りが当たり前にあるほど過酷な労働環境で働いていた。

人間関係は冷え込み、やかましい上司に常に怒られる。そんな経験が異世界でもしっかりと役に立っており、前世と異世界のリンクがしっかりあることもこの作品ならではだ。

誰もやったことがない分野で起業し、大繁盛で従業員を増やし、店舗拡大の話まで出る。

気になるとすればあまりにあっさりと成功していること、重要な仕事は全部スライムがやっていること、殺し屋を雇ったこと、そして肝心の社長が裏方の仕事ばかりしていることだ。

苦労せずに成功するのはなろう系らしいといえばらしいのだが、やはり最初から成功しているのは腑に落ちない部分もある。

主人公は洗濯屋さんを開業するのだが、洗濯をしているのはスライムで、従業員は会計と洗濯物の運搬をするだけ。いろいろ言いたいがまあいいだろう。(笑)

そして、「従業員を増やそう」となったときに最初に入ってくるのが元殺し屋の兄妹だ。

殺し屋というということはもちろん、人を殺すことを生業としていたのだろう。いくら足を洗ったとはいえ、過去に人を殺していた人物を雇うのは明らかに「グレーゾーン」だ。

日常寄りのアニメだから一層その異端さは際立つ。何もかも優しさに溢れ、失敗や苦労とは無縁の作品なのに、唐突に殺し屋が登場し、しかも気にせずに雇ってしまうのはいかがなものだろうか。

どう考えてもすんなりと歓迎することはできない。主人公の度量の大きさを表すようなエピソードだとしてもだ。

モンスターならまだしも、人を殺してその人生を奪っていたとなると、その相手がいかに悪者であろうと、殺し屋として生きていくしか道がなかったなどの事情があったとしても、易々と受け入れられるものではない。

さらに件の主人公は、従業員に会計や運搬などの仕事を任せて、自分は建物の壁を磨いたり、花に水をやったりしている。主人公こそ本格的に何もしていない。(笑)

「それ全部スライムでもできるんじゃね?」という仕事をしている。スライムを大量に保有している主人公なら十分可能なはずだが、なぜか掃除や料理などの裏方をしている。

もちろん出るところは出ているが、どうしてもストーリーとしては張り合いが足りない。

人を動かすのも経営者のスキルのうちだが、別に主人公が社長である意味はなくなっている。

異世界で会社を経営するというのも確かに斬新ではあるが、絵面としてはやっぱり地味だ。

オリジナリティはあるが、アニメとしての面白さという部分では物足りなさが残る作品だった。

雑感:スライム無双

©Roy・ホビージャパン/『神達に拾われた男』製作委員会

万能なスライムで冒険も洗濯も掃除も自由自在。下手したら某スライムアニメよりも「器用さ」という面では上ではないだろうか。(笑)

スライムを使って世のため人のために働き、前世では成しえなかった「人との繋がり」を通して温かさに触れ、どんどんと人の輪が広がっていくハートフルなアニメだった。

ただ「異世界で起業する」という視点は確かに面白いが、基本的に主人公ではなく結局のところ「スライム」が万事を解決している。

主人公のスライム研究の成果とはいえ、主人公のアニメというよりもはやスライムのアニメになっている。

もっとアニメ的な派手さを追求しても面白かったかもしれない。個人的には序盤の「器用貧乏」という主人公の特性がどこかしらで伏線になれば、もっと深さも作れたと思っている。

せっかくの可愛いヒロインも終始お預け状態で、「それ」らしい恋愛描写はあるものの進展はそれほどなく、最後に離れ離れになって消化不良のまま終わる。

いろいろと不足感があるアニメだ。2期があれば足りないところを補充することもできるだろうが、見立てでは厳しいと言わざるを得ない。

「普通」の転生アニメに飽き飽きしている人にはオススメだ。




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