2018年

【2018アニメ】「ゴールデンカムイ」アニメレビュー





(85点)全12話

明治時代後期。「不死身の杉元」の異名を持つ日露戦争の英雄・杉元佐一は、ある目的のために大金を手に入れるべく北海道にいた。そこにアイヌから奪われた莫大な埋蔵金という、一攫千金のチャンスが舞い込む。埋蔵金は網走監獄に収監中の男によって隠匿され、24人の脱獄囚の身体に刻まれた刺青がその在り処を示す手がかりだという。そんな折、ヒグマの襲撃を受けた杉元を、ひとりのアイヌの少女が救う。名をアシㇼパというその少女は、埋蔵金を奪った男に父親を殺されていた。さらに杉元の動きに呼応するように、かねてより埋蔵金を狙って暗躍していた北の最強部隊・第七師団や刺青を背負う脱獄囚たちの動きも顕在化。果たして、雄大な北の大地を舞台に巻き起こった一攫千金サバイバルの行方は……!?TVアニメ「ゴールデンカムイ」公式サイト




北海道を舞台にした一攫千金サバイバルアニメ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (85点)
完走難易度 超易しい

原作は野田サトル先生。

監督は難波日登志さん。

制作はジェノスタジオ。

埋蔵金

©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会

埋蔵金で一攫千金を求める主人公と、相棒となるアイヌ族の女の子のサバイバルを描いたアニメ。

舞台は明治時代の後期。北海道の原住民がアイヌと呼ばれていた時代のお話だ。

一攫千金と言っても、主人公は金持ちになりたいわけじゃない。日露戦争で共に戦った親友の最期の望みを叶えるという目的のために、金塊が眠る場所に至るヒントを得るために戦う。

正当な目的があり、しかもそれが人間の感情の奥底にあるものを刺激するものであること、そしてちゃんと1話で分かりやすい方向性を示すことで、作品に入りやすくなっている。

主人公は「亡くした親友の奥さんの目を治すための医療費を手に入れる」という目的を持っている。大切な親友の大切な奥さんのため。

共感できる理由があるから、自ずと埋蔵金を巡る戦いにも緊張感が生まれる。

そして北海道の森林で、ヒグマに襲われる主人公を助けるのがアイヌ族の女の子。

協力してヒグマを倒すことでお互いの力量を認め合い、埋蔵金探しにおける利害が一致したことで「相棒」となる。

一歩間違うと、戦争を扱った血なまぐさい世界観といい、彫りの深いキャラデザといい、ガッツリ人を選ぶ作品になる。

だがアイヌ族のアシㇼパという女の子が相棒になることで、彼女が清涼剤のようなポジションになっており、白石晴香さんの可愛いらしい声も相まって、絶妙なバランサーになっている。

彼女がいたとしても、1話から若干人を選びそうな作品ではある。日露戦争での最前線での殺し合いから始まり、ヒグマを解体するリアルなシーンまである。

だがそれらのシーンの裏には意図がある。日露戦争での活躍によって主人公は「不死身の杉元」という異名を得て、彼の生き様の元ともなっているし、ヒグマの解体は食料を得るために必要なことだ。

決してグロをやりたいからグロを見せているわけではない。サバイバルな時代背景もあるから、グロをグロとしてあまり感じない作品だ。

©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会

殺人を犯す。動物を殺す。「殺す」ことの重みについても向きあっている作品だ。

サバイバルな時代背景があっても、この作品では殺すことの意味にしっかり焦点を当てている。

主人公はアシㇼパと「人を殺さない」という約束をする。しかし主人公は2話でその約束を破る。

主人公とアシㇼパは陸軍最強部隊に所属していた兵士から襲撃を受ける。同じく軍人の主人公が揉み合いの果てに、彼を崖下へ突き落してしまう。

殺さなければ殺される。弱肉強食な戦争を潜り抜けた主人公だからこそ言える含蓄のある言葉。

この手の作品ではついついスルーされることが多いだろう。日露戦争が終わったばかりという時代背景があって、「不死身の杉元」という最強の兵士が主人公で、さらに狩りに慣れたアイヌ族の女の子が仲間で、さらに金塊を狙う猛者たちとの命を賭けた戦いとあらば、命の価値について触れなくても、それを「当たり前」としてスルーすることもできる。

死人が平気で出るような世界観にも関わらず、戦争で何人もの兵士を殺した主人公にも関わらず、いや殺した主人公だからこそ、命の重みを誰よりも分かっている。自分の身の安全を守る方法も。

自分が生きるためには殺さないといけない。「どちらも死なない」などという平和的解決は夢物語。そんなリアルを叩きつけてくる作品だ。

だがしっかりと叩きつけてくれることで戦いの重みが増し、よりリアルで気の抜けない命のやり取りが演出されている。

そのポリシーは主人公を「殺人狂」との一線を引く役割にもなっている。

戦争で多くの人を殺してきたという過去がありながら、「殺さなければ殺される」というセリフを言えるということは、彼にも確実に「迷い」があったということだ。

そのセリフだけで、彼の壮絶な過去まで見透かすことができる。殺すことに慣れてしまって、人を殺すことを何とも思わないようなサイコパスではない。

できれば人を殺したくない。殺したくないけど殺さないと自分が殺されてしまう。葛藤の末に彼は、殺して生き延びることを選択してきた。

戦闘狂でも殺人狂でもない。最強の兵士でも人並みの苦悩を抱えて生きている。ギャップが魅力的な主人公を形作っている。

バディ

©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会

いわゆるバディもののジャンルとしても括れる作品だ。

主人公とアシㇼパが協力して埋蔵金の手がかりを探す。2人の息の合ったコンビネーションも重要になる。

しっかりと「2人の関係」というところもじっくり描かれている。

戦場で戦った兵士とアイヌ族の女の子。最初に2人が出会った時は全く立場が違う。兵士は人間を殺しアイヌは動物を殺す。

しかし、共に修羅場を潜り抜けることでお互いを認め合い、最高のパートナーになっていく。

戦場以外でも2人の関係が進んでいく様子が描かれている。それは何気ない食事のシーン。

主人公はアイヌ族のしきたりに従うことで信頼を示す。言葉遣いや作法などを言われた通りに「進んで」真似ることで、自然と懐に入っていく。

アイヌ式にリスの脳みそを食べるシーンでは、彼は一切嫌がる素振りを見せない。前のシーンで「リスは好きだからできれば食べたくない」というニュアンスの言葉を発している。

それでもいざとなったら、嫌な顔1つせずにリスの脳みそを生のまま口に運ぶ。それは彼なりに彼女への信頼をアピールしていたとも読むことができる。

戦場で生き抜いた彼なりの処世術なのかもしれない。リスの脳みそなど、ゲテモノ食いとしてギャグにも出来そうなところを、そんな期待を他所に真面目な顔をして食べている。

現実では、原住民が旅人にふざけてゲテモノを出す習慣があると聞く。アシㇼパもおふざけで食わそうとしている可能性を主人公が考えないわけがない。

心なしか食べるまでに逡巡の間がある。そこで何が大切かを一瞬にして察したと考えれば、主人公のキャラクターもさらに奥深くなる。

心理描写が巧みな作品だ。その後も緊張感のあるシーンでアシㇼパが「早くうさぎが食べたいのに」と主人公の背中に言い残すシーンがあり、彼女が結構な「天然気質」であることを描写している。

再び同じ釜の飯を食うシーンで、今度は主人公が味噌を取り出す。それはまごうこなき味噌なのだが、アシㇼパはそれを「うんこ」と言う。(笑)

今度はアシㇼパが人間のしきたりに従うかと思いきや、「絶対に食べない」と断固拒否する。

仲良くお互いのしきたりに染まり合うという方向に持って行かないのが、アシㇼパの強い「天然気質」を表しているし、この作品らしくて面白いところでもある。

「うわー、うんこ食って喜んでるよ。この男。」という主人公を嘲るようなセリフにも、彼女なりの親愛を感じるし、それに対して主人公が前に教わったアイヌ語で「美味しい」を意味する言葉で返し、アシㇼパが「黙れ」と返すやり取りにも、2人の距離感の変化を感じる。

後日また食卓を囲んだときに今度はアシㇼパが信頼の証を示す。最終的にはきちんとお互いの文化を認め合う。

キャラクターがどんな気持ちからそのセリフを言っているのか、そしてどんな思惑が背景にあってそのセリフを言っているのか、想像する楽しさがある。

キャラクターの魅力を掘り下げつつ、お互いに信頼し合うバディとなるための過程があり、そして本筋である「埋蔵金」へ至るための道筋が徐々に開けていく。

ストーリーが抜け目なく繋がっている作品だ。

第七師団

©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会

第七師団という日露戦争で活躍した軍の小隊がストーリーの中心となっている。

彼らの北海道統一の野望。そして亡霊と呼ばれる新選組の生き残りたち。

目的は違えど全員が「金塊」を求めている。軍資金として役立てようというわけだ。

そこに主人公は仲間と挑んでいく。アシㇼパと白石という脱獄王が主人公の仲間となり、強大な野望に立ち向かう。

ストーリーは少し入り組んではいるが、至ってシンプルだからこそ面白い。「金」を狙う者たちによる殺し合い。

主人公にも相棒の奥さんを助けるという野望がある。だが北海道を乗っ取ろうとする第七師団と比べたらその野望は微々たるもの。

第七師団は北海道を統一して悪さをしようとしているわけではない。金塊のためなら人殺しも厭わない外道な中尉が率いてはいるが、その理念は崇高だ。

つまり目的の方向性という意味では主人公と重なる部分がある。しかし主人公はあくまで「相棒のため」であるというブレない志で戦場に立つ。

その生き様は男が惚れるそれだ。決して辺見のような人を殺して悦に入るような変態ではない。

殺した人の顔は絶対に忘れない。後悔を背負いながら、後悔から逃げずに精一杯生きようとしている。

駆け引き

©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会

戦場での押し引きも見どころの1つだ。

どいつもこいつも猛者ばかり。不死身の杉元に引けを取らない修羅場を潜り抜けてきた猛者たちが、同じく金塊を求めて殺し合う。

そこでは一瞬の隙が命取りになる。いかに相手に弱みを見せずに、かつ相手の意表を突くのか。そうしたやり取りがモノローグで描かれ臨場感を演出する。

そこには戦場で磨いた「勘」が宿っている。今ある物で今この状況をどう脱するか。とっさの判断が生死を分ける緊張感。

いつ命を狙われるか分からない緊張感に、血なまぐさい描写も加わって常にピリピリしている作品だ。

戦場は殺し合いの場だけではない。敵と同席していることを知っている白石と、知らない主人公。「もしあの時あのセリフを言っていれば…殺されたかもしれない」と後に分かるシーンもある。

文字列では分かりにくいが、つまり、一歩間違えば死。その緊張感を常に絶やさない。

演出の仕方が上手い。キャラクターが渾身の嘘をついているシーンで全員の汗だくの顔を映し、その嘘が通らなければどうなるか分からないという恐怖がこっちにまで伝わる。

総評:スリリング

©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会

刺青をした囚人たちを追い、一攫千金を狙う男たちの血みどろの戦い。

常に緊張感があり、スリリングで駆け引きの妙が詰まった面白い作品だ。

戦場で死んだ親友の願いを叶えるためにサバイバルな戦いに身を投じる主人公。そして埋蔵金について知る父に会うために囚人を探すアシㇼパ。

2人が手を組み共に戦う。最初は立場も方向性も異なるまっさらな状態から始まる。

しかし、そこからお互いの価値観や文化の違いに触れ、お互いに命を預けながら死線を潜り抜け、徐々に本物の相棒になっていく。

主人公の目的は親友の奥さんを救うこと。アメリカに連れていき目の医者に見せること。つまりお金があれば解決する問題だ。

終盤にそれに気づいた白石が、こっそり抜け出して主人公のために競馬で一発当てようとする。

占い師の力もあり、次々と勝利する馬を当てて大儲けする白石だが、そんな白石を見た主人公は「相棒を置いて一抜けはできない」と力のこもった声で言う。

アイヌ民族の文化に触れ家族の温かさに触れ、そしてアシㇼバの思いの強さ、小さな身体でも臆せずに戦うアシㇼバを見て、主人公にとってすっかり「アシㇼパ」が戦う目的の1つになっている。

それは彼なりの義理の通し方でもあるのだろう。つくづく生き様がカッコいい男だ。顔や体に刻まれた傷といい、キザなセリフがとことん似合う。

さらに北海道統一などと、敵方がデカい野望をぶち上げるのに対して、本来デカい野望をぶち上げるべき主人公の方が、むしろスケールで言えば小さくなっている。

しかし、それこそが彼の人格を表している。死んだ親友のために戦争でもないのに再び命を張る。

自分の野望に巻き込む形になったアシㇼバを何としても守ろうとする男気にも溢れている。

そのアシㇼバも守られるだけじゃない芯の強さを持っている。一度戦場を離れれば普通の年頃の女の子に戻るのも何とも愛おしい。主人公が守りたくなるのも納得の可愛さだ。

しかし、時折ヒロインらしからぬ顔芸を見せるときがある。どれも強烈に記憶に残る顔だ。べったり脳裏に張り付いて離れない。(笑)

思い切りふざけるときは主人公と一緒にふざける。絶妙に緊張感が和らぐから心地が良い。ピンと糸が張っている状態だけではなく、時には緩めてワイワイと賑やかに騒ぐ。

ひと時の安らぎとギャグと下ネタがあり、人を選ぶことを気にしないような、堂々とラインを越えていくような遠慮のなさはこの作品ならではだろう。(笑)

「男臭さ」がこの作品を遠ざける多くの人達の理由になっているかもしれないが、一度観てみれば、180度ガラッと評価が変わる典型的な作品だ。

非情に丁寧に作られている。バディものとしての面白さがあり、サバイバルな緊張感があり、戦場でしぶとく生き残り、他人のために命を賭けられる主人公と、紅一点として主人公の相棒として、守りたくなるヒロインがいる。

少しずつ進んでいることを実感できる脚本に、スリルを増幅させる演出。

シリアスの中にあるギャグも、絶妙な配分と出すぎない程度の絶妙なラインを突いている。全てにこの作品への愛が詰まっている。

一体このサバイバルがどこへ向かうのか。中途半端なところで終わっているので、早く2期を観たいと思う。

雑感:観て

©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会

分かる。キービジュを見てなんとなく遠ざけているそこのあなた。気持ちはよくわかる。

何やら血気盛んな男しかいないし、武装してるし、服装も前時代的。近寄りがたいのも無理はない。

とっつきにくさは確かにあるが、一度観て欲しい。観ればその面白さが分かるはずだ。

人情で生きる主人公と未来だけを見て突き進むヒロイン。2人の関係はこの作品の最大の見どころであり、バディものとして非常に良く出来ている。

熱が冷めないうちに2期を観なければいけない。興味がある人はぜひ観て欲しい。




COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です