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【2016アニメ】「灰と幻想のグリムガル」アニメレビュー

(82点)

生きるって簡単じゃない。「目覚めよ」という声を受けて目を覚ましたハルヒロは、自分がどこともしれない闇の中にいること、そして名前以外の何も思い出せないことに気付く。同じ境遇の12人が揃って外に出ると、そこは赤い月が照らす地「グリムガル」であった。TVアニメ「灰と幻想のグリムガル」公式サイト

異世界で生きるために戦うファンタジーアニメ

異世界に転生した男女がパーティーを組み、義勇兵として生きるために戦う姿を描いたファンタジーアニメ。

原作は十文字青先生。

監督は中村亮介さん。

制作はA-1 Pictures。

義勇兵として

引用元:©十文字青・東宝/灰と幻想のグリムガル製作委員会

突如異世界へ飛ばされてしまう男女12人。

なぜ飛ばされたのか、誰の手によって飛ばされたのか、全く分からないまま12人は「グリムガル」という異世界に降り立つ。

そこで12人に選択肢として課されたのが、義勇兵としてモンスターと戦うか、それとも街で細々と暮らすか。

レンジという男はいち早くパーティーを組み、主人公は迷っているうちに余りものになってしまい、必然的に余りもの同士でパーティーを組むことに。

なりたい職業に就けるわけでもなく、流れでパーティーになった仲間と、義勇兵としてモンスターを殺して生きる道を選ばざるをえなくなる。

転生モノの中では非常に珍しい入り方だ。

最強へ至るための才能の一端を披露するわけでもなく、隠れた能力があるわけでもなく、自由な職業を選べるわけでもない。

最初から望む望まないを関係なく選択肢は限られている。

限られた選択肢の中で「生きる」ために、彼らは義勇兵になる。

『生きる』

引用元:©十文字青・東宝/灰と幻想のグリムガル製作委員会

主人公のハルヒロたちは望んで義勇兵になったわけではない。

誰一人戦いに慣れた者などいるはずもなく、誰一人として、とびぬけた才能を持っている者もいない。

その証拠に彼らは最弱のゴブリンクラスの一匹さえ、大人数で殺すこともままならない。

しかし、生きるためにはためらっている暇などない。

倒してお金を得られなければ、自分たちが餓死してしまうだけだ。

しかし、話はそう単純ではないところがこの作品の面白さでもある。

強くなってゴブリンを倒してお金を得て、装備を強くしてスキルをゲットして、さらに強い敵に挑んで…

そうスムーズには事が運ばない。

敵であるゴブリンたちにも感情があり、死にたくない、生きるんだという強い意志がある。

ゴブリンにも主人公たちと同じように生きるという強い意志があり、殺されないためにも必死で向かってくる。

そこが他の転生モノや冒険ファンタジー作品と一線を画する最たる部分だ。

とんとん拍子で強くなることはなく、ゴブリンの生を奪うことに罪悪感を感じ、悩み、ためらい、悲しみ、命の大切さを感じる。

この『生きる』というテーマが12話通して丁寧に描写がされていて、生きることの大変さだけではなく、楽しさや存分に描かれいた素晴らしい作品だった。

少年少女

引用元:©十文字青・東宝/灰と幻想のグリムガル製作委員会

メインキャラは、まだ大人になり切れていない思春期くらいの少年少女。

彼らの距離感も絶妙で、つかず離れずの関係性は現実の男女そのもの。

等身大で、ありのままで、飾らない。

そんな関係性がもどかしくも、とても愛おしく感じられた。

少年時代は何かと女の子を意識してしまい、目を合わせるのも何となく恥ずかしかったり、ちらっと見える太ももが気になったり、つい胸元に視線が行ってしまったり。

そういったキャラの何気ない所作の中にも、思春期特有の未熟さみたいなものが感じられてエモかった。

この作品を面白いではなく、「共感できる」と思ってしまうのがまさにこの部分が理由だ。

確かに成長をしていくキャラたちの姿を見るのは楽しみでもあり面白くもあるが、それよりも「こんな青春時代っていいよなあ」とか、「こんなやり取りあったな~」とか、「コイツの気持ち分かるな~」とか。

つい感慨にふけって少年時代を思い出して、懐かしんでしまうようなシーンが多々あった。

そういった少年時代の記憶を呼び起こしてくれるような作品だ。

仲間

引用元:©十文字青・東宝/灰と幻想のグリムガル製作委員会

仲間とは何か。どんな人を仲間と呼ぶのか。どういう関係を仲間というのか。

この作品の一つの大きなテーマとして、私たち視聴者に投げかけられていた。

支え合い、助け合うのは当然だ。

しかし当然一人一人に個性があり、無理矢理一つに括ろうとするのは最善とは言えない。

主人公のハルヒロはマナト亡き後、本人の意志とは無関係にリーダーを引き受けることになるのだが、彼はリーダーとしての振る舞いに悩み苦しむ。

どうすればマナトのようなリーダーになれるのか。

マナトの背中を追いかけて自分らしさを見失っていく。

その結果が終盤のランタとの衝突。

ランタはお調子者で、よく言えばムードメーカーで、悪く言えば和を乱す異端児。

そんなランタにハルヒロは、「チームの協調性がないことが欠点だから、もっとチームに溶け込むように努力しろ」と直接的な表現ではないが強い口調で言う。

しかしランタはこう言い返す「自分は自分の役割をしっかりこなしている自負があるし、そう言うハルヒロに欠点はないのか」と。

ハルヒロは思わず口ごもってしまい、ランタに言う必要はないと言い返す。

売り言葉に買い言葉。

自分のことを棚に上げて、ランタを責めるような口調になってしまったハルヒロ。

当然ハルヒロの言葉に聞く耳を持たないまま、その場はお開きになり、険悪ムード。

他人との相性というのは当然あるわけで、それを異世界モノでここまで深く関係性の歪みを描けるのは、もはやそれだけで評価に値するのではないだろうか。

ハルヒロは「仲間とは何か」を、ここでもう一度考える機会を得る。

ランタのような異端児は、手綱を握ろうとしてもどうしても振り切られてしまう。

マナトはランタと上手くやっていた。どうしたらマナトのように上手くできるのか。

そう考える。

しかしマナトのようになるのは正解ではない。それに気づかせてくれるのは、なんとランタだ。

自分の意見を主張し合って喧嘩別れのようになってしまったと思いきや、ハルヒロが「何でどう悩んでいるのか」を見抜いていて、その上で「お前はマナトじゃないんだから、難しく考えずにバカになれ」とそう言う。

ハルヒロは異端児のように見えて、実は意外と周りが見えていて仲間想いでもあるという意外性。

ハルヒロのような存在をはじくのではなく、仲間として受け入れ、本質を見抜くことが重要なんだと学ぶことができた。

メリィ

引用元:©十文字青・東宝/灰と幻想のグリムガル製作委員会

メリィはマナトが死んで新しくチームに加わる神官だ。

彼女は以前所属していたグループで仲間を失った経験があり、心に闇を抱えていて、ハルヒロたちになかなか心を開こうとしない。

しかし彼女の過去を知ったハルヒロたちは、徐々に彼女を仲間として受け入れ、彼女もまた態度を軟化させていく。

彼女の立場は仲間を失ったハルヒロたちとの似通ったところがあり、彼女と向き合うことがつまり、彼ら自身がマナトを失った悲しさを乗り越えて前に進むきっかけとなる。

ハルヒロたちはマナトについて包み隠さず話し、メリィを仲間だと言って受け入れる。

気難しいキャラを仲間にするという展開。

内面を知り、その内面の元となった過去を知り、向き合い、受け入れる。

過去の失敗や悲しみに向き合うのは大人でも簡単なことではない。

出来れば忘れたいことも多々ある。

しかし忘れずに心の中に残しながら、前に進むことの大切さを、メリィとの出会いから学ぶハルヒロたち。

彼らは学び、一歩ずつ成長していく。

美しい背景描写と音楽

引用元:©十文字青・東宝/灰と幻想のグリムガル製作委員会

決して目立たない。しかし存在感があり、作品の世界観にもバッチリあった温かみのある絵だ。

優しいタッチで少し不器用に描かれた線。

素人にも分かる美しさ。

不格好に生きる彼らの姿と思わず重なってしまうような絵で、日本アニメの真髄を見せられた気がする。

そして音楽。

毎話違う挿入歌やBGMが流れてきて、どの曲も本当に作品の世界観とマッチしていて、おまけに流れるシーンともピッタリ合っていた。

背景作画と音楽。

見よう聞こうと、意識しなければ気づかない部分でもある。

気付きにくい部分にも、しっかり力を入れる制作陣には頭が上がらない。

決して綺麗で整った絵ではない。

けど不思議と心を打たれてしまう。

ただ、音楽においては少しケチが付く。

挿入歌があまりにも多すぎるという問題だ。

曲オンリーで淡々とアニメーションを流す場面が何度かあり、そこに時間を割くなら、もう少し重要なイベントやセリフを入れ込むこともできたはず。

つまりテンポが悪い。

丁寧な描写が特徴のアニメだが、丁寧さを意識しすぎたせいで、今度は「テンポ感」が失われてしまった印象だ。

総評:唯一無二の世界観

引用元:©十文字青・東宝/灰と幻想のグリムガル製作委員会

異世界に飛ばされて、最強の力を手に入れることも、可愛ヒロインとイチャコラすることもない。

そこに広がるのは年頃の男女が、生きるために必死な姿だけだ。

お金を得るために命をかけて戦う。

お互いの意見の相違でぶつかり合い、カッとなって喧嘩になる。

それでも相手の気持ちを汲み取って、何が正しいのかを考えて自分なりの答えを出して、何気ないきっかけで苦手意識が吹っ飛ぶこともある。

彼ら自身の「仲間」の定義をちゃんと見れた12話で、完成度は非常に高かった。

感情の移り変わりが起承転結を通して丁寧に描かれ、最終的に困難を乗り越えてたくましくなる姿もあって、自分のことのように嬉しくなってしまった。

最初はバラバラだった5人がマナトの死を乗り越え、悲しみを背負いながらも前に進み、肉体的にも精神的にも強くなり、不器用ながらも彼らなりの「仲間」の形を見つけていく。

その過程をキャラの感情をしっかりと掘り下げながら、丁寧な作りで描かれていて、成長を見守る親のような気持ちになれた。(親になったことはないが)

欠点がないわけではない。

戦闘に特化した作品ではないので、どうしてもキャラの成長スピードが遅くなってしまっていたため、バトルにおける「強さ」という点では満足できない人もいるはずだ。

主題はあくまで「生きる」だったり「仲間の絆」だったりに置かれているので、バトルはそのための舞台装置に過ぎない。

バトルに爽快感を求める人種には合わないアニメだろう。

他にも、先ほど述べた「テンポ感の悪さ」は明らかな問題だ。

良く言えば「丁寧」という意味にもとれるが、悪く言えば「冗長」だ。

だらだらと挿入歌と一枚絵で時間を使うようなシーンがあり、キャラの成長スピードもかなり遅め。

8話でようやく原作の1巻を消費するという事実からも分かる通り、丁寧さを意識し過ぎた余り、ストーリーの濃度が薄くなってしまっていた。

3話までに見せ場を作ることが求められる昨今のアニメ情勢の中で、このテンポの悪さというのは少し致命的だろう。

8話を待たずに切ってしまう人もいるかもしれない。

しかしそんな欠点を覆い隠してしまうほどに、個性的で魅力的なキャラが織りなすストーリーは、この作品の世界観同様、唯一無二と言えるだろう。

個人的な感想:未完成で未熟。だがこれでいい。

引用元:©十文字青・東宝/灰と幻想のグリムガル製作委員会

未完成で未熟だからこそ成長の余地があり、私たち視聴者の共感を得ることができ、ストーリーにも説得力が生まれる。

時に無謀で、時に脆くて、時に自分勝手で、時に押し付けがましくて、時に悲しみに暮れて、時に迷いながらも前を向き、ゆっくりとはいえ肉体的にも精神的にも成長を遂げ、仲間の存在を心の支えにして生き、戦う。

陳腐な言い回しにはなってしまうが、心に響く良作だった。

現実において、ランタのような向こう見ずで自分勝手な少年というのは、なかなかに希少種だ。(笑)

しかし彼のような人間ほど、周りが見えていて察しが良くて、誰よりも仲間想いというのは良くある話だ。

みんなが同じ方向を見ることも大切だが、時には枠からはみ出して突き進んでいくような大胆さも必要。

彼のような人間は枠にはめようとするのではなく、意見を尊重しながら、ある程度自由に動かすことも必要なのかもしれない。

サッカーの指導者目線で見ると、彼のような選手が一人でもいた方が実は助かるという話は、あまり伝わらないので止めておこう。(笑)

とにかく全てにおいて完成度の高いアニメで、観て後悔することはないと自信を持ってオススメできる作品だ。

まだ観ていないという人にはぜひ観てもらいたい。

自分の青春時代を思い出して懐かしくなるとともに、ありのままの彼らの生き様に思わず感動してしまうことだろう…

アニメ「灰と幻想のグリムガル」を観るには?

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