(5点)全13話
バケモノ同士の争奪戦を描いたバトル×恋愛アニメ
ストーリー | |
作画 | |
面白い | |
総合評価 | (5点) |
完走難易度 | 超難しい |
原作は武田すん先生。
監督は米田和弘さん。
制作はPINE JAM。
怪物
©武田すん・講談社/グレイプニル製作委員会
何やら伏線らしき自動販売機のシーンから物語が始まる。
怪し気な自動販売機から謎の男が出てきて、「コインを見つけてくれたのはあなたですね?」とか主人公?と思わしき人物に語り掛ける。
冒頭のシーンでの情報量はゼロだ。コインの模様が入った自販機。1種類の飲み物しか売られていない。自販機から出てくる謎の男。先のセリフ。
きっとストーリーが進むにつれて明らかになるのだろうが、初見に優しくない導入という印象だ。
そして主人公視点で物語が始まり、「ごく普通の高校生が実は怪物に変身してしまう能力を持っていて、その能力でとある女の子を火事から助けたら、脅しのネタにされてしまった」というのが1話の内容になっている。
秘密の共有。主人公は自分が怪物になってしまうという能力について、一人の女の子と秘密を共有することになり、そこから大きな事件へと巻き込まれていく。
ストーリーの流れでいえばなんとなくわかるのだが、1話からいろいろと違和感が出てしまっている。
例えば主人公が夜の河原でアプリゲームに興じているシーンで突然、「実は今、僕の視力は全く悪くない」という唐突なセリフが入る。
直前で誰も主人公の視力の話題なんかしていないのに、突然視力の話を始める主人公。何か深い意味があるかもと考えるが、以降にも特に視力の話題はなく、わけがわからない。
その後、山で火事が起きていることを匂いで察知し、ヒロインを小屋から救い出すのだが、怪物になるところまではいいものの、なぜか入口ではない壁をわざわざ破壊して脱出する。
さらに助け出したヒロインに欲情してパンツを脱がせようとするなど、いろいろ突飛すぎて理解が追い付かない。
その後、ヒロインの傍にスマホをうっかり落としてしまったことで、ゆすりのネタにされてしまい「ばらされたくなかったら~」と脅される。
さらにその後、ヒロインの家に突然お呼ばれしたかと思いきや、シリアスな雰囲気をぶった切るような脱衣サービスシーンが入り、これまた唐突に不審者がバルコニーに現れて、主人公とヒロインを襲う。
ヒロインにとって主人公は命の恩人。主人公のセリフでもあるが、感謝こそすれ、脅すなんてヒロインの人格を疑わざるを得ない。
もちろん主人公はそこに突っ込みを入れ、ヒロインに詰め寄るも、ヒロインは
「せっかく死のうとしていたのに邪魔してくれた。だって信じてくれないんだもの。バケモノがいるって。」
という言葉で返す。
ヒロインは前のシーンでコインについて知りたがっている様子だったが、それならなぜ死のうとしていたのか。2話では姉を探していることも明らかになる。なおさら辻褄が合わない。
自殺を図った理由についても、上のセリフだけを切り取れば「誰もバケモノの存在を信じようとしないから死のうとした」という意味になる。
バケモノの存在を信じてもらえないから自殺を図った?どんな思考回路か全く読み取れない。ヒロインが完全に別の惑星に住人になってしまっている。
主人公を脅すにしても、命の恩人を脅すほどの「目的」があれば納得はいくが、特に1話では説明がないままフワーッと進んでいき、突然不審者が部屋に侵入してきてバトルが始まる。
2話の最後でようやく「姉を探す」という目的が明らかになるが、やっぱり自殺を図る理由は分からない。
主人公の怪物の力が姉を探すために必要で、ヒロインが主人公に「お願い」をする立場なはずなのに、「脅す」立場なのも腑に落ちない。
いろいろと必要な説明が抜け落ちたまま、展開だけが先に進んでいく感覚で、理解が追い付かない。「なんだこりゃ」という感想しか浮かばない。
1話からいろいろと作り込みの甘さが見える作品になってしまっている。
ギャグ?
©武田すん・講談社/グレイプニル製作委員会
2話でも引き続き、1話で登場した不審者との戦いが描かれる。
1話の冒頭で登場した自動販売機についても、そこに住んでいる男にコインをもらった不審者が、力と引き換えに怪物に変身するようになってしまった描写があり、自販機の謎がなんとなく明らかになる。
コインを得ることで力を得る代わりに全てを失う。不審者はコインを求めて主人公たちを襲ったということになる。
そこまではいいとして、主人公とヒロインが不審者から逃げ、行き着いた先で主人公の着ぐるみの謎についてヒロインが確かめるシーンが、もはやギャグとしか思えない。
チャックを下ろして中身がないことを確認したヒロインは、「自分が中に入る」とロボットアニメみたいなことを言い出す。
そのシーンも妙にツヤっぽいCV花江夏樹さんとCV東山奈央さんの声で、「入ってくる…」「全部入れるね…」などと際どいセリフまで飛び出す。
唐突なセクシーシーンと真剣な演技に思わず笑ってしまう。2人で1つになって戦うという大事なシーンなはずなのに、笑いを堪えることができない。もはやギャグになってしまっている。
さらには一方的に襲ってきたとはいえ、主人公を操作する(笑)ヒロインは不審者を容赦なく殺してしまう。まるで拷問にかけるかのようにコインについての秘密を吐かせようとするも、答えなかったために足を折り、その後、主人公の制止も聞かずに殺す。
倫理観がおかしい。直前にはその不審者にもコインを欲しがる事情があることが回想で明らかになる。
不審者も何かにすがるようにコインを求めているだけで、言葉では殺すと言っているが本当に殺意があるかどうかも分からない。それなのに、対話もなしに殺すのは違和感しかない。
殺した後のヒロインのセリフにも雰囲気を守ろうとか、正ヒロインとしての品格を守ろうとかそんなものを一切感じない。
「中でおしっこしちゃった。冗談よ。」
正ヒロインとしてあるまじきセリフだし、一方的に不審者を殺した後のセリフとは思えない。吐き気さえ覚える。
もはやどっちが悪者か分からない。キャラに入れ込むどころか、やっぱりヒロインが宇宙人としか思えなくなってしまっている。
姉
©武田すん・講談社/グレイプニル製作委員会
3話にして早くもヒロインの仇敵である「姉」が登場する。
ヒロインの目的が3話にして達成されてしまうわけだが、どういうわけか、父と母を殺したような殺人鬼とは思えないほど、おっちょこちょいな性格で現れる。
「何だこの人」と主人公と同じセリフが出てきそうなほど天然な姉。「人畜無害な仮面をかぶった殺人鬼だったら面白いかも」とか思ったのもつかの間。
彼女が殺人鬼かどうか分からないばかりか、「主人公になら殺されてもいい」とわけのわからないことを言い出す。主人公とは初対面だ。
しかも着ぐるみから女の声がしたと急にヒステリックになり、着ぐるみの首をちょんぱする。突然のヤンデレ化。
湯水のように次々と、とんちんかんなキャラが出てくる。(笑)
どうやらいろいろと伏線にしたいみたいだが、残念ながら伏線になる以前に、奇怪な行動にしか見えないため興味が薄れる。早く知りたいから次へ~とはならない。
面白くするためにはとにかく謎を多くすればいい、とでもいわんばかりの謎設定・謎展開のオンパレードで、一辺倒な見せ方にうんざりしてしまう。
これだけ視聴意欲がそがれる作品は久しぶりだ。
総評:無視
©武田すん・講談社/グレイプニル製作委員会
まるで視聴者のことなど考えていないようなストーリーだ。
伏線によって見進めることへの楽しみは増えるが、その反面、「今何が起きているのか」を全く理解できないという現象が起きてしまっている。
みんなが当たり前に抱くような疑問を無視してどんどんストーリーが進み、伏線にする価値のないようなものまでわざと引き延ばして、挙句の果てに大した事実は明らかにならない。
そもそも伏線がどうなっているのか興味が持てるほどストーリーが面白くないし、キャラに魅力を感じることができていない。
ストーリーを最高に盛り上げる主人公の目的も終始あやふやだ。このアニメの主人公の目的としては「怪物化の謎の追究」「贖罪」主にこの2つが考えられる。
1つ目の怪物化の謎。自分がなぜ怪物になるのか。それを知りたいから、ヒロインと一緒に謎の宇宙人の仲間を探す「収集者」として命がけで活動する。
しかし怪物の謎を知りたいがために、宇宙人のどうでもいい仲間(コイン)を命をかけてまで探す。あまりにコスパが悪いので行動理由としては納得しづらい。
2つ目の贖罪。序盤での不審者の殺害。主人公は「言葉」では止めた。でも殺されてしまうかもしれない恐怖から、「心」では人殺しに加担してしまった。だから次は逃げずに立ち向かうことを決心している。
過去の過ちから学び成長しようとする。そこは主人公らしい。
だが「人殺しを止められなかった➡だから次は逃げずに立ち向かおう」と主人公が思うのはそもそもおかしい。手を下したのはヒロインであって主人公ではない。
主人公は逃げずに言葉で制止しようとした。それでもヒロインは殺した。後悔して強くなろうとするべきは明らかにヒロインの方だ。
だから贖罪を理由に、ヒロインと一緒に謎の宇宙人の仲間を探す「収集者」として活動するというのは全く意味が分からない。
以上のことから、ヒロインの目的や行動に主人公が引っ張られているようにしか見えない。
主人公に主体性がない。主人公に納得するだけの確固たる目的がない。いわゆる「主人公が主人公をしていない現象」が起きている。
主人公と運命を共にするヒロインにも全く魅力を感じない。
序盤で迷いなく人を殺し、殺したシリアスな雰囲気をぶった切るように品のない下ネタを言う。その時点でただのサイコパスだ。
何食わぬ顔で人を殺したくせに、姉を見つけるという自分の目的ばかりを果たそうとしている自己中ヒロイン。最悪だ。
その後はヒロインらしい恥じらいや主人公に対する強い思いがわかるシーンがあるものの、どんな行動も全く心に響かない。序盤でのマイナス印象が強すぎて、いくら加点してもマイナスのままだ。
そもそも、なんでなよなよ主人公が好きになったのかさえ、しっくり来ていない。急なラブコメな展開を見せられてもいろいろ不自然さしかない。
結局のところ2人の関係性もあいまいなままで、協力関係以上のものを感じ取ることはできずに終わってしまった。
締めも全く締まっていない。
回想で姉の他に黒幕がいることが明らかになり、いざその敵を倒しに行くところでなぜか「俺たちの戦いは続くEND」で終わる。
何のための回想だったのか分からない。その回想でも何をしているのか意味不明で、唯一伏線回収っぽいことをしたいのは伝わったが、驚きは全くない。
途中で同盟を組んだヤバイ敵は同盟以降出てこないで最後に帳尻合わせで出てくるし、徒党を組んだ仲間の1人はあっけなく死ぬ。
黒幕はなぜコイン集めをしているのか、主人公はなんで怪物に変身するのか、なぜ姉は両親を殺したのか、宇宙人は結局何者なのか分からないしで、分からないことだらけだ。
途中で同盟を組んだヤバイ敵といい、主人公への好意を匂わせていたクラスメイトといい、せっかく活かせそうなキャラも使い捨てのような扱いを受けていて可哀そうだった。
ただただ酷い。何もかも散らばったままで集めることを放棄したアニメだ。コイン集めなどどうでもいいから謎だけは最後に集めて欲しかった。
雑感:酷い
©武田すん・講談社/グレイプニル製作委員会
やはり脚本に高橋女史が絡むとロクなことにならないのだろうか。
もちろん彼女1人が脚本を担当していたわけではないので何とも言えないが、もう少し何とかならなかったのか。
せっかくバトルの作画に力が入っていて、多分それなりの枚数を使って描かれているのだろうが、肝心のストーリーがあまりに酷すぎた。
2期は十中八九ないと思うが、もしあったら、もう少しストーリーを練ってから世に送り出してほしいものだ。