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【2018アニメ】「ハッピーシュガーライフ」アニメレビュー

(50点)全13話

–彼女の愛は、甘くて痛い。-
松坂さとうには、好きな人がいます。その人と触れ合うと、とても甘い気持ちになるのです。
きっとこれが「愛」なのね。彼女はそう思いました。この想いを守るためなら、どんなことも許される。
騙しても犯しても奪っても殺してもいいと思うの。

角砂糖のように甘い、戦慄の純愛サイコホラー。
TVアニメ「ハッピーシュガーライフ」公式サイト

女子高生と少女のサイコホラーアニメ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (50点)
完走難易度 超易しい

原作は鍵空とみやきさん。

監督は長山延好さん。

制作はEzo’la。

サイコホラー

©鍵空とみやき/SQUARE ENIX・ハッピーシュガーライフ製作委員会

このアニメは女子高生と少女の同性愛を描いた「サイコホラー」作品だ。

愛を知らない主人公が一人の少女と出会い「深み」へとハマっていく。そう、これは健全な百合アニメなどではない。(笑)

泥沼も泥沼。ベッタベタでドッロドロな恋愛模様が描かれている作品で、異常な光景をさも幸せな日常のように描いているのが、さらに質が悪い。(笑)

女子高生と少女は血は繋がっておらず、にも関わらず同じ屋根の下で仲良く暮らしている。

…というイカれたシチュエーションから当たり前のように始まり、どちらも違和感やぎこちなさを見せることなく、仲の良い姉妹のような関係にも見えてしまう。

そんな光景がピュアでほんわかな空気感で描かれている。底知れない怖さ。怖いけど目が離せないという心理が思わず働いてしまう。

そしてそこに畳みかけるような1話のインパクトが凄い。

主人公が新しくお金を稼ぐために始めたアルバイト先で、従業員をレイプするヤバい店長の本性を主人公がスカッと暴いたことで、それまでのサイコパスな印象から一転、「案外マトモなのかもしれない」と安心感のような気持ちを覚える。

しかし1話の最後で、主人公と少女が住んでいるマンションの一室の隠し部屋に、主人公が殺したとみられる死体が入った袋がある…というショッキングなラストになっている。

1話でグイグイと引き込むパワーが強い作品だ。普通だったら接点がないような年齢差のある取り合わせで、しかも2人は同姓ながらお互いを好ましく思っており、お互いに対して異常な「愛」を持っている。

幼女に異常な「愛」を向ける危ない主人公。でも実は正義感があって切れ者だよ、というシーンが1話の中盤にあり、意外と平和な百合アニメなのかな…

と、油断させてからの1話ラストの衝撃。思わず声が出てしまうこと間違いなしだ。

え?

©鍵空とみやき/SQUARE ENIX・ハッピーシュガーライフ製作委員会

このアニメは変態を生み出し、どんどんカオスな方向へと突っ走っていく。

2話では生徒に手を出すドMクズ教師が爆誕し、それにとどまらず、Bパートではロリコン変態野郎も爆誕する。

ロリコン変態野郎に関しては1話で主人公が新しく入ったバイト先の店長にレイプされたことが原因で、年上の女性に触られると吐き気を催してしまうという症状に悩まされていることが発覚した直後に、突然ロリコン化する。

ソイツは1話で主人公に告白しており、気変わりが早すぎることに加え、年齢が違うとはいえ同じ女性に対して恐怖心を持っているのにも関わらず、「ちっちゃい子可愛いハアハア」と吐息を荒くしている。感情が迷子だ。(笑)

4話でもラストのCパートで「誰だっけ?」ってキャラが、主人公の制服をクンカクンカして吐息をこぼしている。もはや変態の東京コレクションだ。(笑)

せっかくシリアスかつ不気味な雰囲気で緊張感のあるストーリーだったのに、ギャグとしか思えない変態たちの奇行の数々によって、ちょっと面白い方に寄ってしまっている。

とはいえ、ずっとシリアスというのはあり得ないので、ギャグパートを入れることで「遊び」が生まれ、小休憩する意味でも変態たちによる変態ショーは有意義だった。(笑)

©鍵空とみやき/SQUARE ENIX・ハッピーシュガーライフ製作委員会

主人公は嘘をつき続けている。

おばさんと2人暮らしだと友達には言っているが、実際には血縁関係のない少女と2人暮らし。

その少女にも自分が何者か、どうして一緒に暮らすに至ったのか、どのようにして一緒に暮らす権利を手に入れたのか。全てを隠して嘘をついている。

その嘘が主人公を苦しめ、「ハッピーシュガーなライフ」を続けるための足かせになっていく。

嘘をつき続ければもっと自分を、そして少女を苦しめることになり、真実を口にすれば少女との関係が破綻してしまうことは間違いない。いわゆるジレンマというヤツだ。

主人公が付いた嘘によって周りは異変に気付き始め、徐々に主人公の本性、同居している人物が行方不明の少女だ、という真実に近づいていく。

その過程が緊張感たっぷりに描かれており、犯人に迫る探偵と追い込まれる犯人の構図のようで、推理アニメのような要素も楽しめる作品だ。

1話ごとに主人公の正体へと近づいており、徐々に真実へと近づき、主人公と少女の関係、過去の出来事も同時進行で明らかになっていく。1話たりとも、ワンカットたりとも目が離せない。

ギャグのように思える教師やバイト仲間の変態性も、主人公の本性を暴くためのとっかかりとなっており、各変態キャラがそれぞれの視点から「主人公の本性」という一点に集約していく。バラバラのピースがピッタリハマるような感動がある。

暴走

©鍵空とみやき/SQUARE ENIX・ハッピーシュガーライフ製作委員会

主人公の少女への愛は歯止めが利かなくなっていき、ついには殺人を犯してしまう。

もはやドM教師やロリコンの変態ぶりで笑っている場合ではない。冗談では済まない事態へと発展していく。

殺人を犯すほどの愛。それは到底理解できないし、理解しようとも思わない。

ただこれはアニメ作品。あくまで空想上のストーリーという前提で見るなら、主人公が好きな人のために暴走し、愛を全うした末に人殺しをしたことは理解できる。あくまでアニメとして…というところは念を押しつつ。

なぜなら、主人公にとっての「愛」が、大切な人を守るためなら人殺しを厭わないほど強いものだから。他人が否定できる価値観ではない。

「いやいや、大切な人のためとはいえ人殺しはいかんでしょ」などという一般論は、この作品では通用しない。しかし同時にアニメとは「心」で楽しむもの。もちろん気持ちが良いわけはない。

主人公は終始自分が少女を誘拐して監禁していることを秘密にし、一番親しい友達にも絶対に口を割らない。

しかし終盤になって主人公の本性が暴かれていく中で、主人公と少女が一緒に暮らしている場面を、その親友に押さえられてしまう。

我を失った主人公は、親友の必死の説得になど耳を貸さず、最終的に………..その親友を殺してしまう。

その親友はずっと主人公の味方であろうとし、何度も事情を聞いて助けようとしていた。少女を監禁しているという事実を知ってもなお、絶対に口外しないことを誓い、部屋を出ようとしたところ玄関で…

大切な人との居場所を守るため。「愛」という大義名分の元、親友をも殺す。

理屈では分かっている。しかし「心」がそれを許さない。

主人公のことを大切に想って、拒絶される恐怖と一生懸命戦い、それでも勇気を出して一歩踏み込んだ親友。ふがいない自分と向き合って強くあろうとする姿勢。主人公を「恩人」とまで言って感謝する優しさ。

そんな不完全だけど優しさに溢れた健気な少女を、血も涙もなく殺す主人公。一体どうやって主人公に共感すれば良いのだろうか。

100%に限りなく近い視聴者が、主人公に対して怒りを覚えただろう。もちろん私も。しかし繰り返すが、これは「愛」の物語だ。

愛のためならなんだって犠牲にする。そんな価値観を持った女子高生と少女のお話だ。

しっかりとしたブレない「愛」を最後まで貫いたという点では、非常に良く出来た作品だと言えるのではないだろうか。

これ以上ないBADEND

©鍵空とみやき/SQUARE ENIX・ハッピーシュガーライフ製作委員会

恐らくはこの作品以上のバッドエンドは用意できないだろう。

罪を重ねた主人公は少女と国外逃亡を図る。しかしそこに現れるは、少女の実兄。

主人公と少女は彼から逃げるために屋上へ追い込まれ、最終的に身投げをする。

しかし主人公だけが死んでしまい、少女は生き残る。最終的に身投げするという展開だけでも衝撃的だが、片方生き残るという残酷さ。

さらに1クール通して妹を必死に探していた兄も、苦労して妹と出会えたにも関わらず、妹が主人公といることを選び、拒絶されてしまう。家族など要らないと。

主人公と主人公の親友は死に、その死にショックを受けるバイト仲間。さらにその他大勢に変態たちも、自分の大切なものを奪われ悲しみに暮れる。生き残った少女は最愛の人を失う。

誰も幸せにならない。まさにバッドエンド。

と思ったが、死んだ主人公にとってはハッピーエンドなのかもしれないと思うと、とことん奇妙な作品だ。

「愛する人のために死ねる」というのは、主人公にとっては幸せなことなのかもしれない。

少女も主人公の死を悲しむことなく、まるで主人公のヤンデレが移ったかのように「ずっと一緒だよ」と笑う。

愛し合う2人が幸せならOK。つまりバッドエンドと見せかけたハッピーエンド。本当に面白い作品だ。

総評:問題作

©鍵空とみやき/SQUARE ENIX・ハッピーシュガーライフ製作委員会

この作品はまごうことなき問題作だ。

どんなに愛を語ったところで、二次元という隠れ蓑があるからと言って、親友を手にかけていい理由など存在しない。

主人公と少女。2人だけの異常な世界が終始繰り広げられ、2人がなぜそこまで惹かれあうのか。周り全てを敵に回してまでなぜ愛し合うのか。

理解できない気持ち悪さと、観終わった後の後味の悪さも相まって、なんとも言えない鬱屈とした気持ちだけが残る。

作品のテーマは「愛」。主人公は無理矢理少女を連行したわけではなく、母親に捨てられて路頭に迷っていたところを助ける為に、家に連れて行ったに過ぎない。

愛が芽生えるのは事後で、邪な気持ちがあって誘拐&監禁しているわけではなく、主人公の「性格」は歪んでいるが、少女を好きという「心」に歪みはない。

「愛を最後まで全うした」という意味では、この作品は素晴らしかった。中途半端な愛ではなく、気持ち悪いほどのドロドロとした重い「愛」を最後まで貫いている。

だから心では許せなくても、ストーリーは一貫性があって素直に面白いと感じる。最後に全てが繋がったときの鳥肌はハンパではない。アニメで鳥肌が立つなど久しぶりだ。

少しずつ主人公の正体や少女の過去が明らかになり、1話ずつ観ていくごとに足りないピースが埋まっていき、最終話に全てが揃い1つの絵となる。美しいと感じるほどの完璧な流れだ。

この作品を娯楽としての「アニメ」で評価するなら、限りなく100点に近い点数が出る。出したい。でもやっぱり出せない。理由は言わずもがな。

全てが合わさった鳥肌のラスト。因果応報で主人公も死んだ。ストーリーの締めとしては悪くない。それでもあまりに不幸で終わる人が多すぎて、主人公の死と全く釣り合わずにやっぱりスッキリしない。

ただ、「この作品におけるスッキリするハッピーエンドとは何か」と考えても、恐らく答えはない。

主人公と少女のどちらも死ぬ?どちらも生き残る?みんな和解して仲良く暮らす?

どれも多分バッドエンドだ。そもそも主人公が人殺しをしてしまった時点で、物語が始まる前から、この作品はバッドエンドが決まっていたのかもしれない。

どんな終わり方が相応しかったのか。勝手に妄想を膨らませられるのもこのアニメならでは、だ。

愛の形は人それぞれ。流石に現実でこのような愛の形は存在しないと信じたいが、人によって異なる価値観である「愛」を扱ったからこその「深さ」が楽しめる作品だった。

作画は終始安定していたと思うし、狂気に染まる主人公の恐ろしさや、愛に飢えたド変態たちを魅力たっぷりに描いていたと思う。(笑)

雑感:寿命が縮んだ

©鍵空とみやき/SQUARE ENIX・ハッピーシュガーライフ製作委員会

この作品の終わり方は、去年公開された新海監督の映画「天気の子」にそっくりだ。

好きな人を雲の上から連れて帰るために、陸が浸水することを主人公は選ぶ。それは「好きな人のため」という大義名分があってこそ成り立つバッドエンドだ。

このアニメの主人公も、愛する人とずっと一緒にいるための手段の1つが「殺人」であって、決して純なサイコキラーではない。

愛のためなら全てが正当化される。極端に言えばそんな世界のお話。

「愛は理屈を超える」とよく言われるが、理屈をぶっちぎりで超えるとこんな感じになるよ、という斬新なアニメ作品だったように思う。

間違いなく5年は寿命が縮んだ。(笑)

片時も目を離せず、画面を食い入るように見つめ、心拍数が上がり、時間が経つことを忘れる。

それほどの緊迫感と緊張感に満ちた濃密な30分12話だった。

ぜひ普段味わえないようなとんでもないスリルを味わいたい人は、このアニメを観てみて欲しい。

きっと強烈な「何か」を心に刻んでくれるに違いない。

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