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【2016アニメ】「ハルチカ~ハルタとチカは青春する~」アニメレビュー

(15点)全12話

春――それは新たな出会いと思わぬ再会、そしてミステリアスな旋律と共に幕を開ける。
高校への進学を機に、吹奏楽を始めることを決意した穂村千夏(チカ)。目指すは華麗で乙女なキュートガール。音楽講師・草壁と出会い、憧れを募らせるチカだったが、幼なじみの上条春太(ハルタ)との再会に廃部寸前の吹奏楽部と、チカの青春は思いもよらない方向へ……。
部員集めに翻弄する日々と、仲間たちと交わす友情、そして次々に現れる謎(ミステリ)。
チカとハルタの奏でる音楽がいま、高らかに鳴り響く!TVアニメ「ハルチカ~ハルタとチカは青春する~」公式サイト

吹奏楽部に所属する高校生を描いた青春×ミステリー×日常アニメ

吹奏楽で普門館を目指す高校生たちの奮闘を描いた青春アニメ。

原作は初野晴さん。

監督は橋本昌和さん。

制作はP.A.WORKS。

青春×ミステリー×日常

引用元:© 2016 初野晴/KADOKAWA/ハルチカ製作委員会

このアニメは特定のジャンルで表現できない。

高校に進学した主人公・千夏が吹奏楽部に入り、幼馴染の春太と再会し、部活動・恋愛・勉学に励む様子を描いた青春要素。

身の回りで起こるちょっとした事件を解決していくミステリー要素。

高校生が何気ない日常を過ごすほのぼのとした日常要素。

ここまで多くのジャンルを扱ってしっかりまとめ切れるのか、不安を抱きながら視聴を開始したが、案の定どれも中途半端なまま終わってしまった…

正直評価に値しないほどひどい出来の作品だ。

最近観たアニメの中でもダントツで酷い。

作品のコンセプトやテーマが途中で何度も揺らいでいるし、ゴールを決めずにやりたいことを全部詰め込んだだけの欲張りセットだった。

青春

引用元:© 2016 初野晴/KADOKAWA/ハルチカ製作委員会

主人公の千夏は中学までバレー部だったが、厳しい練習に飽き飽きして高校からは心機一転、吹奏楽部に入部するシーンから始まる。

進学を機に新しい部活を始める。

この作品は吹奏楽部に入って仲間と切磋琢磨して上を目指す作品なんだ、と誰もが察する。

吹奏楽は「普門館」という明確な目標を決めて、一致団結して決意を新たにする。

ちなみに普門館というのは吹奏楽の聖地で、野球でいうところの「甲子園」だ。

しかしメンバーは揃っておらず、自ずとメンバー集めをするところから始まることになる。

メンバー集めから始まるテンプレのスポ根アニメを誰もが想像したことだろう。

だがメンバー集めに集中するかと思いきや、その過程で「謎」が主人公たちの前に立ちふさがることになる。

主人公の春太は頭がキレるキャラで、華麗な推理で謎を解き、後に吹奏楽部メンバーとなるキャラの心のしがらみを解いていく。

百歩譲ってここまでは良い。

ミステリーの要素を絡めても、メンバーが集まってくれれば作品の方向性としては揺るがない。

問題はそのメンバー集めをダラダラと引き延ばしたこと。

大体1話~8話の各話で1人ずつ仲間が増えていく感覚だが、主人公が謎解きをするパートも含めて1話まるまる使う。

再確認するがこのアニメは12話構成。

調べたところ打ち切りになった様子もなく、放送前から12話で放送することは確定済みだった。

にも関わらず、メンバーを集める過程だけでミステリーを挟みながら1話まるっと使うというのは、明らかに尺のとりすぎだ。

青春とミステリーが相乗効果を生むことなく、足を引っ張り合う最悪の関係性だった。

恋愛

引用元:© 2016 初野晴/KADOKAWA/ハルチカ製作委員会

青春要素の一部に括ってもいいが、このアニメには恋愛要素もある。

主人公の春太と千夏の2人はそれぞれ同じ相手に恋をし、その相手はまさかの吹奏楽部顧問。

春太からすれば同姓になる。

同性愛を扱うのには勇気がいるが、べっとりねっとりした感じはなく、比較的見やすくなっていたと思う。

人を選ぶ同性愛という設定をわざわざ盛り込む必要があったのか、主人公2人が同じ相手を好きになる必要があったのか。

まあ設定はとりあえず受け入れたとしても、問題は恋愛要素を入れたにも関わらず、結局何の進展もなかったこと。

2人が随所で先生への好意を示すシーンはあったが、最後まで恋愛相関図が動くことはなかった。

想いを伝えようとしない。近づこうともしない。駆け引きもない。ツーショットさえない。別離も再会もない。

春太は何度か先生とツーショットになろうとしていたが、その度に千夏が邪魔をする。

その足の引っ張り合いが永遠と続くだけ。恋愛を描く気が全くない。

最初に同じ人を好きになるというシーンを入れたのなら、しっかり過程と結果を示して欲しかった。

ミステリー

引用元:© 2016 初野晴/KADOKAWA/ハルチカ製作委員会

この作品の最大の柱となるのがミステリー要素だ。

毎話1回ずつ謎解きパートがあり、1話30分をまるまる使って、謎の表出から謎解きまでをじっくり行う。

足枷になっていた謎を解いて、その謎を解いたことでしがらみから解放された吹奏楽経験者が、新しくメンバー入りするという流れが出来上がっている。

それ自体は斬新なアイディアが詰まっていて良い。

しかしその試みは失敗だったと言わざるを得ない。

まずミステリーの内容がショボい。

1話のミステリーは吹奏楽部室の黒板に血のような赤い絵の具で描かれた音符。

謎解きの結果それは、卒業生が放課後誰もいない隙に校舎に侵入して書いた、先生への感謝の言葉だった。

わざわざ校舎に侵入して書くほどのことだろうか?

卒業前に言っておけば十分だし、どうしても言いたければ電話でもメールでもいいわけだし…

なぜ感謝の言葉をわざわざ不気味な赤い絵の具で、しかも校舎に侵入するというリスクを冒してまで、しかも大事な黒板を絵の具で汚してまで…

ツッコミどころしかないショボすぎるミステリーに、全視聴者が固まったに違いない。

作品の紹介となる1話において、唐突に始まるショボすぎる謎解きに、1話にして観る気が失せたのは言うまでもない。

2話の謎解きはルービックキューブ。

全国大会に出場した経験があるキャラを勧誘する過程で、そのキャラの死んだ弟の形見であるルービックキューブを制限期間内に解くことになった主人公。

真っ白なルービックキューブを解いたら、彼女は吹奏楽部に加入すると約束をする。

真っ白である。解きようがない。

そもそもルービックキューブを解かせる気はなく、最終的に「正解だよお姉ちゃん」というメッセージがキューブに浮き上がって解決となる。

解き方も酷いもので、主人公がおもむろに弟の形見に絵の具で色を付けていき、もちろん姉は目を丸くして動揺を隠せず、ついでに私たちも目が点に。

白いパネルの上に絵の具を塗った後、主人公は「白いルービックキューブは弟からのメッセージだ」と姉に言う。

そのメッセージとは…

「真っ白な世界に自分で色を付けていって欲しい」

で、でた~~~wwwwwwww

と思わず笑ってしまうほどの安っぽい仕掛けで、笑いをこらえることが出来なかった。

まるで中二病に侵された高校生が書いたような顛末に、ミステリーをバカにするなと憤る気持ちも湧いてしまう。

後にメンバーとなるキャラを勧誘する過程の謎解きも大したことはなく、謎のファンタジーキャラも登場したり、初恋ソムリエなる謎の生徒が出てきたりと、「これはギャグアニメか?」と錯覚するような面白シーンの連続だった。

ミステリーや推理をバカにしたような仕掛けの数々。

「ハルチカ」という作品の大部分を占めていたミステリーがこの体たらく。

ミステリー大賞を受賞した作家のミステリーとは到底思えない。

吹奏楽は何処へ…

引用元:© 2016 初野晴/KADOKAWA/ハルチカ製作委員会

期待を胸に吹奏楽部に入部をし、新しく加わった強力な助っ人とともに普門館を目指す。

「ハルタとチカは青春する」というサブタイトルからも分かる通り、物語の本線は吹奏楽に打ち込む高校生の青春だ。

成功や失敗を繰り返し、自分の過去と向き合い、仲間と助け合い、ときにぶつかり合い、成長した先に大きな目標を叶える。

大元のラインは部活動に青春を捧げるキャラを描いたアニメだったはず。

だが途中で青春は忽然と姿を消してしまった。

ハルタとチカは青春する。

しかしその実、やっていたのは青春などではなくミステリー。

楽器の練習をしたり、仲間と絆を深めたりするシーンはほんの少ししかない。

挙句の果てには、大会の本番シーンさえもカットされる始末。

地区大会・県大会をすっ飛ばしていきなり東海大会が始まる。

最終的に銅賞で終わるのだが、主人公の涙は、全く微塵もこれっぽっちも心に響かない。当然だ。

仲間との絆を紡ぐ描写もなく、失敗や成功を繰り返して上手くなる描写もなく、大会に向かう緊張感も何もない。

そんなお粗末なストーリー構成で感動などできるはずもない。

青春をするというタイトルなのに青春をしていない。これは評価以前の問題だ。

最終回の終わり方も、東海大会の帰りのバスで新しい部長を任命して終わるという中途半端さ。

明らかに打ち切ったような終わり方になっていて、この内容で2期を制作できる自信でもあったのだろうか…

せめて綺麗な締め方をして欲しかったものだが…

総評:駄作

引用元:© 2016 初野晴/KADOKAWA/ハルチカ製作委員会

評価に値しない作品だ。

吹奏楽部で普門館を目指すと誓い合ったはずが、ダラダラとミステリーで仲間集めに余計な時間をつぎ込み、仲間集めをして本格的に練習に打ち込むかと思いきや、薄っぺらいミステリーを延々と見せられる。

同じ相手を好きになる主人公2人の恋の結末も結局描かれず。

一体何がしたいアニメで、何を視聴者に感じて欲しいアニメだったのか。

「いろんな要素を絶妙に組み合わせて楽しませたい」という制作陣の意図は感じたが、どれも中途半端で収拾がつかずに終わってしまった。

省こうと思えば省けるシーンはたくさんあった。

ただでさえ貴重な12話の尺を、余計なキャラを深める時間に使っていた回もあった。

その象徴となったのが第8話。

恋愛ソムリエという謎のキャラが登場し、芹澤直子という生徒の「叔母」がメインのお話となっている。

叔母の初恋の謎を解くというストーリーだ。

ちなみに芹澤は1回謎解きをしたにも関わらず、メンバーにならなかったキャラ。

彼女はプロの音楽家を目指すほどの技量の持ち主で、最終回にメンバーに加わる。

だが8話の時点では一度誘いを断っており、吹奏楽部員ではない。

その吹奏楽部員ではないキャラの叔母の初恋の話など、一体誰が気になるだろうか?

初恋の回想シーンが入ったときの萎えっぷり、そして謎のファンタジーキャラが出て来たときの萎えっぷりは思い出したくもない。

メインのストーリーラインとは全く無関係で相互性もなく、ようは芹澤を吹奏楽に誘うための過程の一部に過ぎない。

興味が微塵も湧かないキャラの回想や謎解きをダラダラと見せるくらいなら、貴重な尺を部員同士の関係性を深めるシーンに使った方がはるかに効果的だ。

1話と12話がアニオリシナリオになっており、2話~11話は原作の流れに準拠している。

ショボいミステリーが展開された1話。綺麗にまとめきれなかった12話。

1話のミステリーがショボい理由には納得がいく。

原作小説は刊行中で、クライマックスをアニオリにせざるを得なかったとはいえ、最終回12話くらいは綺麗にまとめて欲しかった。

いずれにしろ、「全てを得ようとして全てを失ったアニメ」と総括する他ない。

個人的な感想:劣化版

引用元:© 2016 初野晴/KADOKAWA/ハルチカ製作委員会

このアニメは劣化版「氷菓」であり、劣化版「響け!ユーフォニアム」だ。

氷菓ほどミステリーを本格的に扱うでもなく、ユーフォほど吹奏楽で上を目指すキャラを描くでもない。

氷菓はミステリーと青春を上手く絡めて、何気ない日常や恋という部分を上手く表現していた。

ユーフォは吹奏楽にひたむきに打ち込む高校生をメインに、仲間との絆が深まっていく描写、失敗と成功を繰り返して成長する様子が丁寧に描かれていた。

素晴らしいアニメ、売れているアニメで多種多様なジャンルが混在していることは90%あり得ない。

24話構成、2期がほぼ決定してしまうほど原作パワーがあるならいざ知らず、「30分12話」と最初から決まっていながら、なぜ原作通りにストーリーを展開してしまったのか。

小説・漫画ではいいかもしれないが、30分12話に凝縮してテーマを視聴者に伝えるためには、思い切って一つのジャンル以外のジャンルを切り捨てる決断をして欲しかった。

制作会社が天下のP.A.WORKSにも関わらず、キャラが全く生き生きしていないし、回を追うごとに手を抜いているようにも見えた。

ストーリーが残念なので、演出も特に映えることはなく。

土台である脚本がブレブレのまま家を建ててしまい、案の定、脆くも倒壊してしまった印象だ。

この作品は実写化もされており、そちらではオリジナルシナリオが大部分を占め、キャラの対立がより克明に描かれており、視聴はしていないが、アニメよりも明らかに完成度は高いだろう。

原作者の初野先生は「横溝正史ミステリ大賞」という賞をこの作品で受賞しており、原作通りにアニメ化することは既定路線で、変更することは許されなかったかもしれない。

しかしアニメとは売れてナンボ。人気が出てナンボの世界。

感情を揺さぶって視聴者にテーマを伝えるような内容にすることが大前提だ。

ミステリーの良さを最大限活かすなら、それ以外の要素は排除しても問題はない。

それはもちろん制作陣も分かっていたはず。

おそらく制作陣はあらかじめ、ストーリーに制限をかけられた上で制作に取り掛かったのだろう。

アニメ制作は一筋縄ではいかない。

アニメ化に向かない作品だった、と言い換えてもいい。

そんな感想を抱く作品となった。

円盤売り上げは通算500枚以下。まさに大爆死。

この作品を思い出すことはない。駄作としての記憶しか残らない。

特にオススメはしない。時間を持て余している人は一度視聴してみてほしい。

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