(81点)全23話
頼み事を断れない、お人よしの少年・鈴木入間は、ひょんなことから魔界の大悪魔・サリバンの孫になってしまう!
溺愛される入間は、彼が理事長を務める悪魔学校に通うことに…。
人間の正体を隠しつつ、平和な学園生活を送りたいと願うも、なぜか入間はいつも注目の的。
エリート悪魔にケンカを売られ、珍獣系(?)女子悪魔になつかれ、さらに厳格な生徒会長に目をつけられてしまう!
次々に起こるトラブルを入間は持ち前の優しさで乗り越えていく!TVアニメ「魔入りました!入間くん」公式サイト
Contents
魔界へ連れてこられた主人公の学園ファンタジー×コメディ
ストーリー | |
作画 | |
面白い | |
総合評価 | (81点) |
完走難易度 | 易しい |
原作は西修先生。
監督は森脇真琴さん。
制作はBNピクチャーズ。
人間が魔界へ
引用元:©西修 (秋田書店)/NHK・NEP
主人公の鈴木入間は人間。
ある日アホの両親に売られて、大悪魔・サリバンの孫になってしまう。
頑張って両親の言うことに従い、若いながら仕事に精を出す息子を売ってしまう両親。
「ハヤテのごとく」で1億7000万円を息子に押し付けて蒸発した両親に負けず劣らずクズな両親だ。(笑)
しかしサリバンは大悪魔でありながら、純粋に孫を欲する好々爺で、入間をデロデロに甘やかして学校にも通わせる。
魔界に放り込まれた主人公は魔界で唯一の人間。
しかも悪魔にとって人間は捕食対象。
絶望・恐怖・不安。
しかしそんな負の感情や暗さがこのアニメにはない。
孫を溺愛するサリバン。学校での新しい出会い。入間の優しさ。友達の友情。
そして何と言っても、目立たないように生活しようとする入間の思惑とは裏腹に、トラブルに巻き込まれて有名人になっていく過程も面白い。
入間
引用元:©西修 (秋田書店)/NHK・NEP
主人公の入間はいわゆる「巻き込まれ体質」。
目立たないように普通の生活をしたいという気持ちとは裏腹に、段々と学園での地位を確立していく。
世間ではあんまり好まれないタイプの主人公でもある。
仕方ないな…といちいち重い腰を上げるようなセリフが、すかしているような印象を与えてしまうことも多々ある。
その点入間はすかしている感じはなく、常にだれかを気遣い、誰かのために自分を犠牲に出来る好青年だ。
目立ちたくないと日頃から嘆いてはいるものの、誰かがトラブルに巻き込まれたり、困っていると、つい手を貸してしまう。
その結果、あらぬ功績を残して有名になっていく。
自分の弱さや立場を受け入れて、自分なりに限界を超えようと頑張って、困っている人を見逃せない。
根っからの善人で努力家で、主人公が魅力的だとやはり作品がより一層映える。
オトモダチ
引用元:©西修 (秋田書店)/NHK・NEP
入間は人間界では友達と呼べる存在はいなかった。
しかし悪魔界では初めて友達ができる。
エリート悪魔のアスモデウスと元気印のクララ。
この3人の関係性も非常に心地よく微笑ましい。
サシの勝負で入間に敗れてからというもの、入間に忠誠を誓い行動を共にするようになったアスモデウス。
「友達だから」と称していいように使われていたところを入間が解放して、真の遊び相手になったクララ。
アスモデウスは入試首席のエリートで常に冷静で、反対にクララはいつも騒がしくてやかましい。
クララが突っ走って、アスモデウスが収める、という光景を温かく見守る入間。
この3人の性格と関係性がストーリーを追うごとに愛おしくなっていく。
決して爆笑必至な面白いやり取りをしているわけではない。
それでも3人がお馴染みのやり取りをしているだけで、温かい空間が形成され、見ている側まで笑顔になってしまう。
処刑玉砲
引用元:©西修 (秋田書店)/NHK・NEP
入間は逃げるのが得意。
幼少期から数々のピンチを乗り越えてきたため、危機回避能力が優れている。
そんな入間に立ちはだかるのが「処刑玉砲」という昇級試験。
悪魔としての位を上げるためには、この処刑玉砲、つまりドッジボールで勝ち残らなければならない。
詳しい事の顛末は省くが、逃げるだけだった入間は自らの力で勝つために修行を重ねる。
今まで逃げて来た自分との決別。
逃げるだけではなく受け止め、乗り越える。
そういった入間の内面の変化が描かれるのが処刑玉砲だ。
他にもアスモデウスの心境の変化、クラスでの立ち位置、教師の評価など様々な変化が10話で起こっており、月並みな言葉にはなるが、まさに「神回」と呼ぶにふさわしい回だった。
「アスモデウスの本気を入間が受け止める」
10話は、その後のストーリーにおいても大きな意味を持つ分岐点にもなっている。
それまで「サシで入間に負けたから」という理由で、アスモデウスが一方的に入間を慕うなあなあな感じもあった中で、処刑玉砲でアスモデウスの本気を逃げることなく入間が受け止めたことで本当の「友情」が生まれた。
わざと当たって負けようとしていたアスモデウスが、本気モードに切り替わる時のオーラ、そして声を演じた木村良平さんの迫力ある演技もパーフェクトで鳥肌モノだった。
成長
引用元:©西修 (秋田書店)/NHK・NEP
入間の成長にしっかりスポットが当たっている作品だ。
人間界から悪魔界に連れてこられて、最初は、恐怖におびえて目立たないように過ごしたいと考える入間。
しかし目立たないように過ごすつもりが、気づいたら目立っている。
「目立たないように」と言う割に、困っている誰かを見逃せずに助けてしまったり、自分の弱さと向き合って克服しようとしたり。
そういった優しさや芯の強さを表に出せる魅力的な好青年であり、自分を変えようと行動を起こす「主人公らしさ」も兼ね備える。
学園ファンタジー作品といえば、主人公最強で俺TUEEEで、事件に巻き込まれるたびに颯爽と解決して、女子からもモテモテで…
というタイプが容易に想像できるが、そういった量産型の主人公とは一線を画した魅力が入間にはある。
ネガティブ気質ながらも変化を望む意志があり、誰かを進んで助けようとする自己犠牲の精神を持っていて、友達や家族も大切にする。
王道な巻き込まれ主人公ではあるものの、ここまでマイナス面が少ない主人公というのも珍しい。
その良すぎる性格が災いしてか、失敗や挫折というところに焦点が当たらなかったことが唯一の心残り。
原作者や制作陣に大事にされすぎて、サリバン同様入間を過保護にしてしまった印象がある。
入間の成長を考えたら、努力して乗り越えるだけではなく、失敗・挫折・後悔をもっとシリアスに描いても良かった。
ただ作品の世界観や雰囲気を守るという観点では不要と捉えることもできるので、ただの私の願望ということにしておこう。
2期の制作が既に決定しているので、もしかしたら2期でシリアスな展開も見られるかもしれない。
優しい世界
引用元:©西修 (秋田書店)/NHK・NEP
作品全体がとにかく優しい雰囲気で包まれている。
誰かを助けるために、自分を変えるために行動できて、友達や家族への愛に溢れた主人公の入間。
入間に忠誠を誓い行動を共にして、いつも入間を大切に想い、友情を超えた「愛」すらも持っていそうなアスモデウス。
やんちゃでムードメーカーで破天荒だけど、入間を友達として、遊び相手としても大切にしていて、アスモデウスとぎゃあぎゃあ言い合っているのが可愛いクララ。
両親に捨てられた入間を本当の孫のように大切にし、孫のピンチとなると、何を置いても真っ先に駆けつけるサリバンおじいちゃん。
入間のクラスメイトも曲者揃いだが、誰かをハブったり悪口を言ったりせずに、素直で優しい一面をみんなが持っている。
この手のアニメで良く出てくる、ほくそ笑む謎の黒幕みたいなキャラも全く存在しない。
悪人との対立が一切ないので、ファンタジーモノとしては少し物足りない感じがありつつも、その分余計なストレスもなくすっきりとした後味になっている。
唯一キリヲのキャラだけは作品の世界では少し浮いているが、彼のぶっ飛んだ変態性もアクセントになっており、彼元来の優しさがあるから「悪」ではない。
総評:NHK侮りがたし
引用元:©西修 (秋田書店)/NHK・NEP
このアニメの製作はNHKが担っている。
NHKといえば子供向けアニメで有名で、この手の深夜アニメとは無縁のように思える。
しかし近年少しずつ深夜アニメにも触手を伸ばしつつあり、深夜枠にアニメを放送する機会も多くなっている。
NHKを子供向けアニメしか作れないと侮っていた時期があったが、そんな自分をぶん殴ってやりたい。
「魔入りました!入間くん」のように、子供も大人も楽しめるようなアニメはそう簡単には作れない。
NHKは公共放送で、際どい内容はご法度。
多くの制約がある中で、しっかりと視聴率をとれる作品をアニメ化し、完成度の高い作品を完成させる手腕は素晴らしい。
話が逸れたが、アニメとしての完成度はすこぶる高い。
主人公は無個性に近い上に、弱い「人間」という種族でありながら強制的に魔界に連行される。
恐怖や不安を抱えながらも自分と向き合って強くなって、友達との絆を深めたり周りからの評価も変わったり。
入間が成長していると分かるようなポイントが各所にあり、入間に共感しながらストーリーを追うことができる。
悪人やシリアス展開は一切なく、NHKらしさが詰まった健全なアニメでありながら、観だしたら止まらない中毒性もある。
作画が崩れる場面も多いが、ストーリーがしっかりしているから全く気にならない。
真面目なシーンからコメディへの鋭い場面切り替えも、坂道を駆け上がる車のごとくピーキーで、面白いアニメを作ろうという工夫もあった。
本編の尺を削ってまで入れたCパートのおまけ劇場も良かった。
飛ばしても作品の理解に支障はなく、テンポの良さやスピード感が演出されてバッチリハマっていたように思う。
構成としては賛否があるが、キャラの個性や関係性がある上でのやり取りがあり、少ない時間でもしっかりとした笑いがあった。
最終話の23話は中途半端な終わり方にはなっているが、2期前提の1期だったことは、1期終了後の2期決定のスピード感からも明らかなので問題ない。
むしろ2期への引きを残すような絶妙な締め方になっており、続きが気になって仕方がない。
NHKだからと偏見を持っている人がいたら、余計な前情報はなしに頭を空っぽにして、ぜひこのアニメに没頭してほしい。
個人的な感想:続きが観たくなる
引用元:©西修 (秋田書店)/NHK・NEP
2期の制作が決定済み。
放送期間は2021年4月からの予定だ。
とにかく早く続きが観たい。そう思わせる作品だった。
何を置いても、エイコちゃんの行く末が気になる。(笑)
エイコちゃんは1話から入間に熱い視線を送っており、何かあるたびに入間に近づこうとするのだが、毎回邪魔が入ったりニアミスしたりで全く接触できない。(笑)
不憫なエイコちゃんが2期では報われて欲しいし、エイコちゃんの恋心が実を結んでほしいと心から思う。
それ以外にも多くの伏線を残した終わり方になっており、私からしたら生殺しもいいところだ。
ここまで続きが気になるアニメは最近では珍しい。
「USA」で一躍有名になった「DA PUMP」の「Magical Babyrinth」もノリノリでアゲアゲなOP曲だ。
入間を演じた村瀬歩さんの演技も印象的で、弱々しさの中にもしっかりとした芯があって、入間にはピッタリな声優さんだった。
ストーリーやキャスティングに制作陣の意気込みや愛が詰まっており、お金をかけた作品ではないだろうが、23話しっかり楽しめるアニメだった。
最近のファンタジーモノのアニメの中でも指折りの面白さで、アニメをあまり観ない人にもオススメしたい作品だ。