2016年

【2016アニメ】「終末のイゼッタ」アニメレビュー





(40点)全12話

西暦1939年、帝国主義国家ゲルマニア帝国は突如隣国に侵攻を開始した。その戦火は一気に欧州全域に拡がり、時代は大戦の渦に巻き込まれていく。そして1940年、ゲルマニアはその矛先を美しい水と緑に恵まれたアルプスの小国エイルシュタット公国に向けようとしていた。TVアニメ「終末のイゼッタ」公式サイト




終末世界の隣国同士の戦いを描いた戦争ファンタジーアニメ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (40点)
完走難易度 難しい

亜細亜堂によるオリジナルアニメ。

監督は藤森雅也さん。

戦争

©終末のイゼッタ製作委員会

舞台は1940年付近の史実に近い出来事が起きている世界。

現実でいうところのドイツ帝国が戦争を引き起こし、連鎖的に巻き起こる戦い。そしてそんな大国と戦争をすることになる一国の王女が主人公の物語。

まず冒頭で姫様と思しき人物が列車内で、何者かに追われ、辛くも列車から飛び降りて生き残るというシーンから始まる。

彼女が何者で、なぜ列車内にいて、なぜ指名手配のような扱いを受けていて、なぜ命を狙われて、なぜ我関せずだった乗客が姫様の命を狙うのか。

とても「なぜ?」が尽きない1話の導入になっている。

確かに盛り上がってはいる。列車の上での銃撃戦。アクロバティックな動き。列車からの決死のダイブ。

激しいアクションから始まり、興奮から始まる掴みは良い。だがあまりに謎が多すぎて何が起きているのか分からない。

お互いの関係が分かってこその駆け引きだし、逃げる・戦うというアクションにしてもお互いの立場が分からないと、盛り上がろうにも心が付いてこない。

まさにそんな心境だ。キャラの紹介も何も済んではいないのに、冒頭でクライマックスのような逃避行と銃撃戦。興味はそれほどそそられない。

冒頭ではまず「どんな作品なのか教えて?」という気持ちが先行する。

何よりもまず作品に引き込まれるための情報と、作品ならではのアイデンティティを視聴者は期待している。

この作品は一国の姫様が交渉に向かう道中で、敵国の兵士に命を狙われているというざっくりとした情報しか得られない。画面上での迫力の割に感じるものはない。

ただ1話でなんとなく全体像をつかむことはできる。

ゲルマニア帝国という強大な国。ゲルマニアの侵攻によって次々と壊滅に追い込まれる周辺諸国。そして主人公の姫様が治める国もまた、ゲルマニアとの交戦に入る。

そんな国のピンチを救うため、周辺諸国に同盟を持ち掛けたり、国民のために最後の瞬間まで戦い抜く覚悟を固める姫様の強い意志だったり。ある程度の情報を拾うことができる。

しかしまだフワッとしていて掴みどころがない。軍事機密になっているカプセル少女・イゼッタの正体。主人公との関係。イゼッタの不思議な力の正体。

国名や人名など、全く整理がついていない状態で次々と追加される設定が多く、さらに理解を困難にしている。

分からないなら分からないなりに楽しめれば問題ないが、そういった雰囲気さえない。1話だけなので判断はできないが、明らかに情報過多な作品だ。

もちろん分からないことが後の「伏線」にはなっているだろうが、分からないことが多すぎるのも問題だ。

イゼッタ

©終末のイゼッタ製作委員会

タイトルにもなっている「イゼッタ」という魔法使いの少女がキーパーソン。

1人で戦局を傾ける力を持つ彼女は主人公と旧知の仲。したがって彼女は主人公である王女のため、そして国のために共に戦うと言い張る。

しかし姫様はイゼッタを安全な場所に逃亡させようとし、そこで反発が生まれる。

なるほど魔法使いの少女が戦力となることで、ゲルマニアとの力関係をひっくり返し、ジャンヌダルクのような救世主となると予想がつく。

ようやく大枠が飲み込めて、2話にして作品の雰囲気をなんとなく掴むことができる。

しかし相変わらず分からないことだらけで、気持ちが一向に乗ってこない。

まず魔法少女と旧知の仲という事実がはっきりと描かれていない。幼いころに出会う回想は冒頭であるが、一体どんな関係だったのか、なぜ姫様にそこまで入れ込んでいるのか。全く伝わってこない。

だから魔法使いの加入がこれ以上ない「ご都合展開」にしかなっていない。戦局が圧倒的に不利。でもどこからともなく「都合よく」救世主が現れ、国の運命を1人で変えてしまう。

もしはっきりとした思い出や、仲の深さを示すエピソードでもあろうものなら、2人が再会することに大きな意味が生まれるし、偶然の再会も「運命」になる。

だが2人の関係といい、魔法の存在といい、イゼッタの正体といい、分からないことが多すぎて前のめりになれそうでなれない。

伏線を多く張り巡らせ、最後に一気に回収して「爽快!」というのをやりたいのかもしれないが、どこかでパズルの一部分がハマって、完成が少しずつ見えてくるという体験ができないと、アニメとしては全く面白くない。

戦争から連想されるもの。仲間との絆。国にかける思い。家族や友人。愛する人。敵国への恨み。平和への願い。各キャラの戦争に対する思い。

そのような感情が一切混在していないから無機質極まりない。戦争とファンタジーを掛け合わせるという世界観自体は面白いが、どうもそこに寄りかかっているような印象を受ける。

契機

©終末のイゼッタ製作委員会

魔女の力を持つ少女が加わることで、主人公の国は戦線を一時的に押し返すことに成功する。

戦局をひっくり返す契機がようやく訪れ、救世主を迎えた主人公たちの国が逆転していくためのきっかけを4話にして掴む。

そして序盤から伏せられていた主人公と魔女の過去。忠義の理由。

幼いころに放火の冤罪をかけられた魔女の女の子を、姫様が身体を張って助けたことがきっかけで、魔女は姫様に尽くすことを決める。だから姫様の国を助けようと戦線に加わったということになる。

恐らくだが少しずつ回を追うごとに、他の伏線も回収されていくことだろう。

しかしその過去は伏線ではなく「根本」とすべきところなのでは、と個人的には思う。

アハ体験で後々繋がるというようなものではなく、そもそも前提条件として、姫様と魔女の過去の出来事はあるべきで、なんなら1話で明かしてもいいような事実ではないだろうか。

隠しておく旨味はそれほどないように感じる。姫様が命がけで魔女の女の子を守ったという事実があれば、その後に魔女が姫様の味方をするのも納得がいくし、恩を返そうと命を張るのにも自然と合点がいく。

ストーリーの組み立て、いわゆる「構成」の部分で少し前後している感はある。

キャラクターの関係性や詳細な世界観が出来上がる前に、派手なアクションや救世主の登場など、本来ならもう少し後半に来てもいいような見せ場を序盤に持ってきてしまっている。

だから「派手なアクションがなんだ?」「救世主が登場したけど誰?」「そもそもなんで戦ってるの?」と疑問ばかりが浮かび、興奮の熱も感動も鳥肌もへったくれもない。

魔女の女の子を味方に加えたことで劣勢だった国が逆転していく。

まさにジャンヌダルクを加えたフランスのごときパワーで跳ね返していく。そのストーリー自体は間違いなく面白い。

だが中身がスッカスカなので、感情が動くことはなく、常に真顔で観てしまう。

現実に起きた第二次世界大戦を基にした世界観は面白いが、いろいろともったいない作品だ。

弱点

©終末のイゼッタ製作委員会

魔女の女の子の力は万能ではない。それが中盤で明らかになる。

地脈の流れが濃いところでは強い魔法が使え、そうでないところでは弱い魔法、または全く魔法が使えない場所もある、ということが明らかになる。

それにより新たに国同士の「駆け引き」が始まる。

「強い魔法使いがいるなら、皇帝の首を直々に取れば良い。そうしないのは何か弱点があるからではないか」と敵国の幹部は思い至る。

対する魔女を要する主人公側の国は、弱点を何とか敵国にさらさないように機密事項として管理し、敵国のゲルマニアに「魔女は弱点などない」と知らしめるために様々な工作を仕掛ける。

中盤にしてようやくバトルというか「戦争」が本格化してきたという印象だ。

大きな力を持つことの代償。巨大な力をいかに有効的に使うか。敵国からすれば、相手の巨大な力の謎をいかに暴いて、あわよくば奪ってしまうか。

魔女を巡る駆け引きが始まり、これぞ戦争モノという醍醐味が出てくる。

1人が巨大な力を持つというのは案外弱点になりやすい。その1人に比重が偏ることで生まれる歪みだったり、心理的な油断だったり、意外といいように狙われるケースが多い。

そこがアニメで上手く描写されており、巨大すぎる力がどのような結果をもたらすのか。ようやく先が気になる展開になっている。

総評:惜しい

©終末のイゼッタ製作委員会

カメラがバンバン切り替わるド迫力の空戦バトル。魔女を巡っての国同士の駆け引き。

各部分を切り取ったら面白い要素はたくさんある作品だ。しかし、いまひとつのめり込むことができなかった。

まず繰り返しになるが主観であるとはいえ、魔女と主人公の関係がそれほど深いとは思えない上に、2人が出会い、信頼関係を結ぶに至るきっかけが中盤にずれ込んだことで、冒頭でのアクションやバトルがイマイチ盛り上がらなかった。

掴みで引き込まれるような魅力がそれほどなく、状況説明のないままにクライマックスのような展開が始まり、魔女が現れ「ま、そうなるよな」という予定調和な流れで戦局を覆す。

全体を通して予想を裏切るようなトンデモ展開も皆無だ。魔女が現れて救世主となり、徐々に押し返す。しかし弱点を見破られた末に無力化され、最終的にはその身を犠牲にする。

全て筋書き通りだ。魔女が悲運な最期を遂げるのはどんな物語でもそうだ。お約束通りに事が運び、落ち着くべきところに落ち着く。

キャラ1人1人の印象も薄い。強く何かを思い、成し遂げようとするのは主人公くらいなもので、戦争に臨むうえでのキャラの心境や感情がほとんど無視されて、国単位での駆け引きや戦争を描いているに過ぎない。

感情の起伏がなく、最初から最後まで真っ平らなまま。

主人公は魔法使いの少女を愛しく思い、民のことを大切に思う聖人であることはよーく伝わる。

だが彼女は、その言葉の真意を見せるような行動を一切していない。いつも魔法使いの少女だけを戦場に向かわせ、本部で命令を下すだけの存在でしかない。

言葉では確かに国を治める姫様らしいことを言っているが、行動が伴っていない。だから魔法使いのことが大切だとか、国民の命が第一だとか言っても説得力がない。

したがって核となる魔法使いの女の子との関係でさえも、最後まで薄っぺらいままだ。

主人公が彼女のために何をしただろうか。魔法使いの女の子が戦場で姫様のために命をかけるなら、友人である主人公もまた、彼女のために「覚悟」を行動で示すべきだった。

自ずと深い人間ドラマなどは生まれない。各キャラが背負うもの・守りたいと思うものがないから、伸るか反るかの緊張感もない。だから感情も動かない。

終盤の展開は着地はしているが、大急ぎで不安定な着地になっている。

魔法使いの少女が筋書き通りに悲運をたどり、そこでピークを迎えたために、ラストは良く分からないまま戦争が終結。

ゲルマニア帝国の皇帝が最後に自害するのも史実に基づいていると思われる。どうも手抜き感も否めない。

第二次世界大戦が終結したときと同じように、新型爆弾だ侵攻だ自害だと、オリジナルで創造性あふれるストーリーを見せようという気持ちを全く感じない。

そもそも救国の少女という設定の時点で丸パクリだ。

せっかくバトルが素晴らしくても、どんなに主人公を演じる早見さんの演技が鬼気迫るものであっても、ストーリーがこれでは宝の持ち腐れだ。

雑感:オリジナリティ皆無

©終末のイゼッタ製作委員会

この作品の確固たるアイデンティティを見つけることができなかった。

どの設定もストーリーも、全てが既にこの世にあるもので、何を見て欲しいのかもよく分からない作品だった。

オリジナリティはなくても別にいい。だが「戦争を描く意味」を見せて欲しかった。何のために戦争をして何を得たいのか。1人1人が何を背負って何を感じているのか。

そこら辺の核となる掘り下げがほとんどないせいで、金太郎飴のごとく、どのシーンを切り取っても同じ顔、同じ味しかしない作品になってしまっている。

外見はいっぱしのイケメン・美女のごとく、バトル&ファンタジーという王道、そして窮地に追い込まれた国に現れる魔法使いの少女、ド派手な空戦、魔法使いを巡る策略など。

外から見れば大変魅力的だが、中身を知って残念な気持ちになる。そんな作品だ。

戦争モノが好きな人ならばハマるかもしれないので、興味があれば観てみて欲しい。




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