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【2020アニメ】「虫籠のカガステル」アニメレビュー

(74点)全12話

西暦2125年―人が巨大な虫になる奇病”カガステル”が発症。
虫は理性を失い、人を襲い繁殖し続ける。

これはカガステルを狩る”駆除屋”の青年・キドウと
閉ざされた過去を持つ少⼥・イリの物語。TVアニメ「虫籠のカガステル」公式サイト

人間が虫になって人を食う世界を描いたファンタジーアニメ

人間が突如虫に変化し、人を食らう世界を描いたフルCGアニメーション。

Netflix限定アニメ。

原作は橋本花鳥さん。

監督は千明孝一さん。

制作はスタジオ KAI。

© 2019 橋本花鳥/徳間書店・「虫籠のカガステル」製作委員会

人が巨大な虫になる奇病「カガステル」

2019年に放送されていたアニメ「炎炎ノ消防隊」では、人が「焔ビト化」してしまう現象があったが、その虫バージョンだ。

人類の3分の2が減少していて、虫に支配されている世界。

そんな世界で、虫を駆除する仕事をしているのが主人公のキドウ。

彼は凄腕の駆除屋で、持ち前の身体能力でバッサバッサと虫を殺していく。

キドウは荒れ果てた荒野で、一人の少女と出会う。

名前はイリ。

彼女との出会いをきっかけに、キドウは後ろに隠れた大きな陰謀に立ち向かうことになる。

ファンタジー系の作品で良く見かける世界観だ。

抗えない何かに支配された世界と、その世界に抗う青年。

訳あり少女との出会いで物語が動き出していく。

キドウの過去

© 2019 橋本花鳥/徳間書店・「虫籠のカガステル」製作委員会

キドウの過去が中盤で明かされる。

彼が極東に住んでいた頃、駆除屋の祖と言われたラザロという養父がいた。

彼の背中を見て育ったキドウは着実に実力をつけていく。

しかしキドウは師でもあり、父代わりでもあったラザロを失ってしまう。

それが心の傷となり、彼はカガステル化した人間を殺すという行為に苦しんでいた。

カガステルが発症してもすぐに虫になるわけではない。

発症してから20分は人間の理性を保っている。

20分以内に殺すことはまだ人間であるうちに殺したとみなされ、「殺人」となってしまう。

しかし結局は待ったところで人間に戻るわけではなく、確実に虫に変化する。

他の市民に被害が及ぶ前に殺すのが最適解だとは分かっていても、人間のまま殺すことに葛藤するキドウ。

それぞれの価値観や倫理観がぶつかるシーンがあり、非常に見ごたえのある人間ドラマがあった。

アハト

© 2019 橋本花鳥/徳間書店・「虫籠のカガステル」製作委員会

敵でも味でもない謎の人物。

殺人鬼として登場したかと思えば、キドウの味方をしたり、次の場面ではキドウと殺し合ったり。

不安定なポジションにいたアハトというキャラは、物語を大いに盛り上げていた。

彼は半身がカガステル化しているが、理性を失っておらず、意思疎通をすることができる。

彼は執拗に駆除屋だけを狙った殺人を繰り返している。

しかし彼はただ狂った殺人鬼ではないことが、後に明かされることになる。

悪者にも正義あり。

イリと一緒に育ったという過去があり、イリを家族のように大切に想っている優しい一面も持っている。

キャラ作りが非常に上手い。

最初はただの狂った殺人鬼としての印象しかないが、回を重ねるごとにアハトの出生や本来の性格が覗くたびに、アハトという存在が愛おしくなっていった。

総評:綺麗

© 2019 橋本花鳥/徳間書店・「虫籠のカガステル」製作委員会

序盤~中盤の何気ないシーンで伏線を張りつつ、終盤で一気に回収される爽快感を味わえた。

ヒントを小出しして視聴者に考えさせるような仕掛けもバッチリハマっていたし、謎を解き明かしていくミステリー作品のような体験ができた。

キドウを始めとしたメインキャラたちも非常に魅力的。

駆除屋として比類ない強さを持つキドウだが、彼は過去のトラウマがきっかけで、カガステル化した人間を殺すことに葛藤を抱えている。

内面に弱さを抱える主人公。

駆除屋として自分の非力さを嘆くばかりだったキドウを変えるのが、イリという少女の存在。

彼女のおかげでキドウは自分のやるべきことを再確認する。

そうして2人は愛を育んでいく。

しかし、順調に距離が縮まっていたところで訪れる別れ。

虫を殺すこと以外興味のなかった昔のキドウなら切り捨てていたところだが、自分を変えてくれたイリを助けるために1人で敵地に乗り込む。

ここまでは完璧。

序盤から中盤にかけての伏線や、キドウというキャラを深める回想、カシムという軍人の存在もキドウという人物を掘り下げる上で、この上ない貢献を果たしている。

だが終盤の展開には不満点が多い。

まずは万事が上手く運び過ぎた。

アドハムという男が掲げる崇高な理念。

イリを第二の女王に据えて、虫を完全にコントロールしようとしている。

その理念に賛同して協力するイリの本当の父親・フランツ。

それを阻止するために単身敵地に乗り込むキドウ。迎え撃つアドハムの軍隊。

イリの父親代わりになっていたグリフィスの願いでもある、イリと母・タニアの再会。

場面場面の流れで見れば不自然さもなく、キャラの動機付けもあって行動に必然性も伴っている。

だがどうしても薄っぺらさが否めない。

お約束通りの流れ。起伏がないストーリー。

そう思ってしまった理由の一つとして、「失うことへの恐怖心の欠如」が挙げられる。

キドウはイリからの折角の好意をのらりくらりと交わしており、クライマックスのシーンまでまともに答えを出さない。

加えて彼の少しひねくれた性格も手伝って、イリを本当に心の底から愛していて、彼女を失いたくないという必死さが全く伝わってこないのだ。

恋愛モノにおいて「別れ」というのは、「二度と会えないかもしれない」という恐怖心があってこそ、私たち視聴者の心を大いに揺さぶってくれる。

しかしそういった恐怖心を煽るようなシチュエーションも、キャラの態度もないままに、万事が上手く運んでしまっていた。

イリをもっとピンチに追い込んでも良かったと思うし、キドウにもっと生傷を負わせても良かったかもしれない。

長くなってしまうので、もう一つ気になった点を挙げて終わりにしたい。(笑)

2つ目は「敵役がショボい」ことだ。

キドウたちと対立するのはアドハムという東邦連合E区の責任者だ。

本来なら敵役というのは憎むべき相手だが、アドハムは優しすぎる。

彼の理念は「世界から虫のいない世界を作る」こと。

その方法とは虫を一掃するのではなく、一掃できないと諦めた上で、従えてしまおうという目論見だ。

彼はカガステルの軍事利用まで視野に入れており、キドウやイリの思い出が詰まったE-05までも侵略しようとする。

「自分の家やお世話になった人がいる街」「イリ」

キドウにとって大切な2つのものを奪わんとするアドハムだが、いまいちヘイトがたまらなかった。

そう、彼の理念は100%悪と言いきれないところがあるからだ。

自らの欲を満たすためではなく、純粋に世界を書き換えて健全な姿に戻すために彼は行動をしている。

敵役の理念に少しでも共感出来てしまえば、その時点で完全な悪役、倒すべき相手として認識できなくなってしまう。

さらに彼が起こしたE-05への侵略戦争で、誰一人犠牲者が出なかったことも不自然極まりない。

あれだけの装備で攻め込まれていて、E-05側は市民が戦場に立たないといけないほどの戦力差があったにも関わらず、キドウの知り合いは全員無傷。

結果戦いに全く緊張感がなく、アドハムが真に恨むべき敵役になり切らないまま終わってしまった。

「生きる」ということをテーマにした作品で、キャラ同士の対立やアクションもあり、総合的に見れば良く出来た作品なのは間違いない。

しかし大事な大事な終盤の作り込みが少し甘く、徐々に尻すぼみになってしまったのが残念だ。

個人的な感想:CGでしか表現できなハードな世界観

© 2019 橋本花鳥/徳間書店・「虫籠のカガステル」製作委員会

手書きかCGか。

手書きの良さはもちろんあるが、CGはこのアニメの世界観にバッチリ合っていたと思う。

虫のビジュアルやうねうねした動きが最高に気持ち悪かった。(褒め言葉)

この作品はネットフリックス限定配信なので、当然ネトフリと契約している人しか視聴することはできない。

ネトフリと契約している人なら分かると思うが、このような世界観の限定配信アニメは本当に多い。

ご存知の通り、ネトフリは日本だけではなく、世界中の人が使っている配信サービスだ。

当然アニメの内容も世界に向けたものにしなければならない。

そうなると日本人が大好きな「萌え」や「日常」ではなく、外国人が大好きなハードな世界観のグロ描写が惜しげもなくあるファンタジーアニメをチョイスするのが必然となる。

日本人が敬遠しがちなグロアニメが海外で絶賛されているという話は枚挙にいとまがない。

この「虫籠のカガステル」も万人向けアニメとして作られてはおらず、配信サービスならではの過激な表現も豊富に含まれている。

「グロ」+「虫」

分かりやすく人を選ぶアニメと言えるだろう。(笑)

グロも虫も大丈夫という人は、ぜひネトフリと契約をして視聴してみてほしい。

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