2021年

【2021アニメ】「回復術士のやり直し」アニメレビュー





(78点)全12話

【癒】の勇者としての素質に目覚め、勇者たちと世界を救う冒険の旅に出ることになった少年・ケヤル。しかし戦闘能力のない回復術士には、勇者たちにその能力を搾取され虐待を受ける日々が待っていた。自由と尊厳を奪われ、自我すらも失いかけたケヤルはある日、正気を取り戻し《回復》の真実に辿り着く。《回復》はただの癒やしではない。《回復》は世界を、人を、根源から揺るがす力である、と。ケヤルは世界そのものを《回復》し、四年前からすべてを“やり直す”ことを決意する。そして勇者たちへの報復に胸を躍らせるのだった……。「さあ、パーティー<復讐>のはじまりだ─」TVアニメ「回復術士のやり直し」公式サイト




回復を専門とする勇者の反撃を描いたバトルファンタジーアニメ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (78点)
完走難易度 易しい

原作は月夜 涙先生。

監督は朝岡卓矢さん。

制作はティー・エヌ・ケー。

リベンジ

©2021 月夜 涙・しおこんぶ/KADOKAWA/回復術士のやり直し製作委員会

主人公の回復術士が世界を「回復」して、己を虐げてきた王女に復讐をする物語。

異世界のリベンジ系の作品で思い出されるのは「盾の勇者の成り上がり」だが、この作品は盾の勇者よりもいろいろな面で「尖っている」作品だ。

1話を観ただけでも、この作品がいかに異質であるかが分かる。

主人公がいきなりゴミのように扱われ、復讐をするために世界を作り変えて別の人生をやり直し、再び同じ王女の元で勇者として仕えるようになる。

宮廷暮らしをする中で、主人公は自分の魔力を高めるために、お抱えのメイドとあんなことやこんなことをする衝撃のシーンがある。

あんなことやこんなことがどんなことかはお察しの通り。1話から普通じゃないストーリーが繰り広げられる。

しかし、根底にあるのは「復讐」というシンプルな憎悪だ。自分をコケにしてきた王女に対して、今度は自分が虐げる側に回るためにいろいろと策を巡らす。

やり直した先の世界でも王女はクズのままで、これで心置きなく地獄に落とせる、と主人公はほくそ笑む。リベンジ系の作品は出だしのパワーがとてつもない。

ただ、序盤でエンジンを使いすぎて途中でガス欠を起こすことも珍しくない。この勢いのまま最後まで突っ走ることができるか。焦点はそこにある。

復讐劇

©2021 月夜 涙・しおこんぶ/KADOKAWA/回復術士のやり直し製作委員会

この作品はシンプルな復讐の物語だ。

前世と現世で自分を散々痛めつけてきた人間を、自分と同じように痛めつけるために、様々な魔術を模倣し、何者にも屈しない力を手に入れ、復讐劇を実行する。

目には目を。歯には歯を。やられたらやり返す。人間は復讐劇が大好きだ。本能で感じる面白さ。当然この作品も面白い。

だが問題はやりすぎている点だ。主人公は倍返しという言葉が可愛く思えるほどの所業を成す。

自分を虐げてきた王女の部屋に、魔術を使って他人に成り代わることで侵入し、王女を屈服させ、指を一本ずつ折り、回復させ、また折る。

悲鳴を上げた王女に対して、さらに追い打ちをかけるように次は凌辱を始める。そして最後には記憶を奪い、従者とは名ばかりの奴隷とする。

ここまでぶっ飛んでいる作品は珍しい。(笑)

そこまでせんでも…と逆に王女がかわいそうになるほど、過剰に、常軌を逸した行為を行う主人公。

人間の心が残っていない復讐劇だ。前述の盾の勇者の主人公は、同じように自分を地獄におとした仇に対して、最後は温情を与えて命を救っている。

復讐劇と言っても、復讐が完遂することは体感的に、あまりない。復讐をしようとすれば自分が逆に痛い目に遭うこと。復讐がいつの間にか別の気持ちにすり替わること。復讐する側が最終的に地獄に落ちること。そう結論づけられることが多い。

なぜなら、リベンジを完成させてしまっては、そこで作品が終わるも同然だからだ。もし政宗が、自分をコケにした愛姫を1話でみじめに振ってしまったら、そこから広げようがない。

しかし、この作品の主人公にはそんな思考は一切ない。振り切っている。たがが完全に外れてしまっている。

復讐するなら遠慮なく。慈悲もなく全力でいたぶる。これを爽快と感じるか、不快と感じるか。

「ここまで行くと賛否両論は避けられない」という領域にまで踏み込んでいる。もちろん中途半端よりは思い切りの方がずっと良いが、さすがに限度はある。バランスも同時に大切だ。

矛盾

©2021 月夜 涙・しおこんぶ/KADOKAWA/回復術士のやり直し製作委員会

多少の矛盾には目をつむるべきなのかもしれない。しかし、主人公の発言においてはその限りではない。

主人公は王女を痛めつけ、凌辱した。それは当然、王女にされた仕打ちをそのまま王女に返すためだ。

だが主人公は中盤の戦闘シーンでこんなことを言っている。

「記憶を消してからのフレイアには王女フレアにあった醜悪さがない。ジオラル王国という環境が、あのクズだったフレアを作ったということか。フレアがいなくなったところで、この国は代わりをいくらでも生み出すだろう。俺がほんとに復讐するべきはこの国自身だ。」

フレイアとは主人公の従者となったフレアの名前だ。つまりは、フレアが主人公に外道な行いをしたこと自体が悪いかどうかはさておき、諸悪の根源はフレアを育てた「国」自体にあるというニュアンスのセリフになっている。

それが分かっていたなら、どうしてフレアをいたぶったのか。怒りの矛先が国に向いているなら、フレアに仕返しこそすれど、指を折ったり、凌辱したり、記憶を消して従者にしたりするまでのことを、する必要はないように思える。

一体主人公の本当の敵意はどこに向いているのか。王女なのか国なのか。「最初は王女だったけど、国が悪いとよくよく思い直した」というのなら辻褄は合う。

だがそうなると、王女への過剰な折檻の意義が問われることになる。最初から国に敵意を向けていれば、そのための行動を最初からすればいい。王様を襲うなり、錬金術を使うなり、他に方法はいくらでもある。

最初に取った行動が王女への仕返しだったということはつまり、一番復讐したい相手が王女だということ。それを覆して中盤で「あ、やっぱり国だった」では済まないレベルの行いを主人公はしている。

関係ない人を殺しもした。ジオラル軍の兵士を「自分の復讐を邪魔する人じゃないからOK」と言って容赦なく殺しもした。

主人公の評価はどんどんマイナスに振り切れていく。王女から国へ、国から世界へ。あまりに果てしない復讐という闇にどす黒く染まった作品だ。

©2021 月夜 涙・しおこんぶ/KADOKAWA/回復術士のやり直し製作委員会

この作品は主人公の復讐劇を痛快に描いたリベンジアニメだ。

中盤以降、ついに「国」を相手取った戦いへと発展していく。次々と困難が主人公を襲う。

継続的に刺激を送ってくる作品だ。「復讐を達成しましたハイ終わり」の出オチではなく、復讐をするということは同時に、誰かの恨みを買って、さらなる復讐の連鎖を生み出すということ。

人間の心理を的確に捉えて、次々と新たな敵が主人公を殺さんと襲ってくる。それは過去に助けた剣聖であり、フレア殺しの罪を着せられた兵士長であり、フレアの妹のノルンだ。

そのことによって退屈する暇がない。強敵が現れて主人公の復讐劇を遮ろうと邪魔をしてくる。その敵に対して主人公は気持ちいいほど圧倒的な力で返り討ちにする。

そしてこううそぶく。「正義はこちらにある」と。主人公を邪魔するのは当然、王国の人間に限られる。その王国にも散々罪のない人を殺し、凌辱の限りを尽くした罪がある。

主人公が生まれた村の人達も殺した。さらに主人公の育ての親も凌辱した末に、殺した。だからお前らは悪だ。こちらが善だと。似たような所業をしてきた主人公が何食わぬ顔で言う。

正義の在りか。復讐のスパイラル。命の価値。ただバトルをして殺し合うだけではない、重くて深いテーマを投げかけてくる作品でもある。

善と悪に区別できる単純な正義ではない。主人公も人を殺してきた。国に復讐するという目的のために。国もまた自分勝手な利益のために多くの人を不幸にしてきた。殺しもした。

逆に良い行いもしている。国は表向きでは市民を守っているし、主人公も奴隷を解放したり、人質を助けにコロシアムに乗り込んだりと、善悪の両面を併せ持つ。

だからより正義の問いが難しくなる。答えを出せない。どちらも正義とは言えない。それがこの作品の面白さだ。

だが中盤から終盤にかけて、徐々に横道に逸れている感もある。

9話の敵となるのは酒場にいる魔王候補を襲った一行で、別に主人公の復讐を直接邪魔したわけではない。

それでも主人公は「食べ物の恨み」を名目に彼らを殺している。それが冗談なのか本気なのかはさておき、国への復讐をゴールだとすると、明らかに遠回りだ。

総評:シンプル

©2021 月夜 涙・しおこんぶ/KADOKAWA/回復術士のやり直し製作委員会

シンプルで分かりやすい復讐劇だ。主人公から奪っていった者たちを、今度は二度目の人生で主人公が奪っていく。

それを自然な形でストーリーに落とし込み、痛快な物語にしている。

最初は不快から始まる。いくら主人公をクズ犬呼ばわりして、踏みつけて、薬漬けにしたとはいえ、フレア王女は根っからの悪人ではなく、勇者であり、国のお抱えにすぎない。

しかし、そんなことはお構いなしに主人公は恨みを晴らさんとばかりに、王女を凌辱した末に記憶を奪い、手ごまにする。

さらに王国が魔族の村を襲っているシーンで、主人公は「自分のポリシーとは関係ないから殺してもOK」と言い、王国の兵士を殺す。

その行い自体がポリシーに反するようにも思える。自分の邪魔さえしなければ殺さない。無用の殺生は好まない。それなのに、関係ないから殺してもいいと、矛盾したことを言って殺している。ポリシーに一貫性がない。

主人公の評価が地に落ち、胸糞の悪さだけが残るようなストーリーに、多少の怒りすら覚えるほどだ。

しかし、不思議なことにそれが徐々に癖になっている。因縁の仇を殺さんと息を潜め、いざ好機を得て、復讐の相手と対面したとのニヒルな笑い顔といい、下衆な発言といい、「復讐を始めよう」というお決まりのセリフといい、謎に中毒性のある作品だ。

主人公の行動はどれも復讐に基づいている。自分の育ての親を殺したから。自分の親友を殺したから。そして、一度目の人生で自分に非道な行いをしたから。

そこには一貫性がある。心の底から湧き上がる憎悪の気持ち。それが主人公の行動指針になっているから、あらゆる行動やセリフにも説得力があり、仇と対面したときの口上や、相手に勝利の可能性を残す「ゲーム」にも魅惑の響きがある。

主人公のやっていることは正義などではない。どちらかというと悪だ。下衆な行いだ。昼夜問わずにその気になったら従者とアレをするし、仇は容赦なく酷い目に遭わせるし、殺すことも厭わない。

だがそれが癖になっている。どこの復讐劇を切り取っても因果応報が成り立っているから、不快感はない。やりすぎ感はあるが。(笑)

正義と悪のせめぎ合い。「主人公はこんなことをしているけど、でもこれはやりすぎじゃないか?でもこいつは過去にこんなことをしているし、当然の報いだ。でも…」と、永遠にこちらを悩ませるような感情と思考の迷路。

シンプルだからこそ深みがあり、シンプルだからこそ面白い。やりすぎだが手ぬるいよりはマシだ。

1つツッコミを入れるとすれば、それは主人公が奪われるものに対して、なぜ主人公は力を行使しないのかという点だ。

主人公には錬金術をはじめ、あらゆる魔術師から模倣した能力が備わっている。さらに本来持っている回復術士としての力もある。万能だと思っていい。

それなのに、大切な人が死にゆくときに主人公はただ悲しむか、静かに復讐心を燃やすだけで、必死にヒールを使って死の淵から呼び寄せるようなことをしない。

それがどうも「復讐ありき」のように映ってしまっている。復讐劇を成立させるために、親友や大切な家族を殺させる。そんな風に見えてしまっていた。

主人公の万能の力を持ってすれば、なんとでもできたはずだ。しかし、主人公は事前に動いて助けようとしたり、すぐに処置を施そうとしない。それは不自然だ。

だが、多少のご都合がないと復讐劇が盛り上がらないのもまた事実。復讐の対象が多ければ多いほどストーリーは盛り上がる。それは間違いない。

後は、一際目を引いたのはバトルの迫力。剣聖とのせめぎ合いといい、剣の勇者との戦いといい、作画がしっかりしている。

キャラクターの動きに躍動感があり、思わず声が漏れてしまうほど。バトルシーンだけでも何度も見直せるレベルだ。

世間での評価はぱっくり割れそうな作品だが、自分的には好みだ。

復讐をとことんまでやりきる。とことん地に堕ちて欲の限りを尽くす。ここまでやってくれると、いっそ清々しいというものだ。

雑感:これ以上は…

©2021 月夜 涙・しおこんぶ/KADOKAWA/回復術士のやり直し製作委員会

残念なのは2期への展望が望み薄ということだ。円盤の売り上げがどうとか、原作のストックがどうこうの話ではない。

1期で綺麗に完結した感はある。復讐すべき敵は1人だけ残っているとはいえ、残りは「国」あるいは「世界」のみ。

その2つに関しては主人公は直接的な恨みはない。口では世界を変える風なことを言ってはいるが、それだとイマイチゴールが見えづらい。

「復讐」というゴールがあるからこそ、この作品は分かりやすいし面白い。それが度を越した「エロ」をやるための大義名分にもなっている節がある。(笑)

真に復讐したい敵がいなくなったとき、それは恐らく、この作品が終わるときだ。

だが2期うんぬんより、1期単体で見てもこの作品は十分面白い。2期が蛇足に思えるほどしっかりまとまっている。

「復讐は次の復讐しか生まない。だから我慢しろ?そんなの知ったことか!そんな既存の概念はぶっ壊してやんよ!」そんな気概を感じる作品だ。

「問題作」に片足を突っ込んでいるような作品だが、興味がある人は是非とも観て欲しい作品だ。




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