2021年

【2021アニメ】「怪物事変」アニメレビュー





(70点)全12話

古来よりこの世の影に潜み、人に見つからぬよう、人と関わり合って生きる“怪物”(けもの)という存在。彼らの多くは人間の世界に適応し、社会に交じり生活していた。しかし現代では、人と必要以上に深く関わろうとするケースが多数報告されるようになっていた。探偵事務所を営む隠神は、そんな“怪物”たちが起こす怪事件のうちの一つを追い、片田舎のとある村を訪れる。そしてそこで夏羽という少年に出会う—。TVアニメ「怪物事変」公式サイト




人間と怪物が共存する世界で探偵として活動する少年を描いたバトル×ファンタジー

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (70点)
完走難易度 易しい

原作は藍本 松先生。

監督は藤森雅也さん。

制作は亜細亜堂。

怪物

©藍本松/集英社・「怪物事変」製作委員会

怪物と書いて「けもの」と読む。

人間と怪物が共存する世界を舞台に、主人公の少年がひょんなことから東京の探偵と知り合い、紆余曲折あって事務所に転がり込むところから物語は始まる。

主人公はいわゆる「半妖」。この手のアニメでは鉄板のキャラ設定だろう。境界の彼方の主人公しかり、ナルトしかり、エレンしかり、犬夜叉しかり、ぬーべーしかり、カバネリしかり。

若干ズレているキャラもいるが、悪魔や妖怪に身体を半分明け渡している。あるいは両親が血を分けた結果、半分妖怪じみた身体や能力を得た子が生まれてくる、みたいな設定はかなりポピュラーだ。

理由の1つに分かりやすく「葛藤」を描くことができるというのがある。

人間としての自分と妖怪としての自分。どちらが本物の自分か。または「妖怪の能力を使いこなすことができればとんでもない武器になる。けれどなかなか飼い慣らせない」的な展開も既視感があるだろう。

他人との葛藤を通した自分との葛藤。謂れのない迫害を受け、それによって悩み葛藤し、答えを見つけていく。

半妖ということは、社会からのはみだし者というニュアンスも同時に含む。一目人間にその姿を見られれば迫害を受け、主人公の叔母のように「殺せ」と探偵に依頼するということが起きる。

半妖という設定は強い。だが明らかに強い分、ストーリーの流れに対して捻りはない。

迫害を受ける主人公が探偵をしている怪物と偶然出会い、共に怪物退治をし、主人公は殺されたという「事実」を作ったうえで、東京の事務所に連れていく。

そこには弟子と思しき少年の怪物がおり、きっと共に切磋琢磨していくのだろう。鉄板中の鉄板という感じだ。

もちろんそれが悪いということではない。迫害を受けていた半妖の主人公が誰かの役に立つ。自己肯定感を徐々に高めていき、周りからの評価も上がり、戦闘力も向上していく。

いかにもジャンプ系列の作品らしい「王道」を地で行くストーリー。全く嫌いではない。

目的

©藍本松/集英社・「怪物事変」製作委員会

目的がストーリーを盛り上げる。主人公の目的は両親を探すこと。

「両親が自分の前から消えたのは自分を捨てたから」そう思い込んで、叔母の元でぼろ雑巾のように扱われてきた主人公。

しかし、探偵との出会いをきっかけに、両親と生きて再会することに希望を見出すようになり、強く生きる決意を抱く。

同じ探偵仲間の少年は、過去の主人公のように自分は両親に捨てられたと思い込んでいる。今の今まで探しに来ないということは、自分は捨てられたも同然だと思い込んでいる。

その発言に対して、主人公は「生きているかもしれないなら、生きている」と暴論をぶち上げるが、その根底にあるのは「信じる気持ち」だ。

信じないことは簡単で楽だ。希望を抱いて裏切られたときの精神的ダメージは大きく、一層みじめな気持ちになる。それなら何も信じない方が楽だし、裏切られたとしても「ほらね」と言って正当化することができる。

それが大人だと少年は言う。だがあくまで主人公は無垢に信じる。自分の信じることを信じる。人生において大切なことを主人公は教えてくれる。

ただ目的があるにしても、少し物足りなさも感じる作品だ。王道に+αがないとでも言おうか。

主人公には覇気がなく、運命を切り開いていく力強さもなく、世界観がどんよりとしており、全体的に華もない。今一つパンチが足りない。

気持ち

©藍本松/集英社・「怪物事変」製作委員会

主人公は人間のことを徐々に知っていく。

元は田舎暮らしで畑仕事ばかりしていた主人公。世間のことばかりか、人間の気持ちや感情を最初は理解することができない。

しかし事件や依頼を通して、家族愛や恋について知り、どうすればその恋が成就するのか、どうすれば相手に気持ちを伝えることができるのかを肌で感じていく。

それが人間らしい自己の獲得に繋がり、行く行くは両親との出会いに…こんなところだろうか。

どのエピソードも心が温まる。初めて主人公に出来た「弟子」の友達との友情も、彼が壁を乗り越えようと頑張る姿も相まって、非常に感動的で心を揺さぶられる。

怖いもの・汚いもの・グロいものが苦手な晶という少年。彼はそれまで現場で全く役に立てないことに引け目を感じていたが、ある依頼を切っ掛けに自分の殻を破ろうとする。

弱い自分のままは嫌。強くなるために勇気を出し、敵を一網打尽にする。強くなろうと頑張るキャラクターはいつだってどこだって美しい。

総評:丁寧

©藍本松/集英社・「怪物事変」製作委員会

かゆいところまで手が届く、しっかりと今いるキャラクターを丁寧に深堀りしていく「愛」に溢れた作品だ。

下手にコミュニティを広げずに、狭く深く、キャラクターの過去や、家族関係、それによるトラウマなどを掘り下げていき、キャラクターが何を思ってどう変わろうとするのか。

その過程が尺を使ってじっくりと描かれ、キャラクターの心境の変化や、実際の行動からの顛末まで丁寧に描かれている。

織は自分が母親から見捨てられたと信じて疑わなかった。しかし、育ての親が黒幕だと知り、絶望し、殺そうかとも考えたが、最終的に殺しても虚しさが残るだけだと気づき、母親の無事が分かってからは温情を与えている。

バトルでは、主人公が仲間の織のためにぶち切れている。主人公は晶の件に関しても当人よりも感情を露にするような共感性と優しさを持ち合わせており、その行動が3人の絆をより強固にしている。

1つ1つのエピソードが丁寧だからそのままのめり込んでいける。キャラクターの気持ちに寄り添って、泣いたり、笑ったり、怒ったりできる。それが素晴らしい。

特徴的なのはみんなハッピーで終わること。一見ホラーで残虐的な世界観は、平和なハッピーエンドとは疎遠なようにも見える。

実際に救いのない展開もある。だがそれはあくまで「他人」に対してであり、主人公の輪にいる人間はみんな最後には笑顔になっている。

よくある「天国から地獄現象」がこのアニメには全くない。「良かった。無事に助かった。これで一件落着だね」という感動的なシーンから突然トラブルが起き、一気に地獄に叩き落される。

展開としては鉄板だが心臓に悪いし、何より悲しい。とにかく悲しい。しんちゃんが戦国時代にタイムスリップする映画で、おまたのおじさんが狙撃されようとは、あのシーンで誰も思わなかったことだろう。

だがこのアニメではその手法を使っていない。使えば間違いなく観ている人を引き込めるにも関わらずだ。もちろん意図的に避けているかは分からない。

だがみんな笑顔のまま万事解決。捻りはないがやっぱりハッピーエンドが一番だ。その原点を思い出させてくれた作品でもある。

最終的に主人公の目的がかなったわけではない。俺たちの戦いはこれからだ。

しかし、しっかりと物語が分かりやすい形で方向づけされており、「遅くなっちまったけど、ようやくお前の依頼に取り掛かれるな」と1話の伏線に戻ってくるクライマックスになっており、作品本来の目的を見失ってはいない。

目的を達成するための過程として、織の母親との過去を明かすエピソードがあり、晶の雪の里での双子の兄との暮らし、そして兄の暴走を止めるための夏羽の命がけの戦いがある。

夏羽が仲間のために我を忘れて命がけで戦ったことで3人の関係は深まり、2期があるならきっと、もっと面白くて胸アツなシーンが目白押しになるはずだ。

雑感:ぜひとも2期を

©藍本松/集英社・「怪物事変」製作委員会

ぜひとも2期が観たい作品だ。ストーリーもさることながら作画もバッチリ綺麗で、バトルにも躍動感がある。

序盤にこの作品には「華がない」とガッカリしていたが、中盤以降そこらへんにもスパイスが加わり、別の方向で両手に花的な面白さも加わってくる。

探偵事務所の所長で恩人でもある隠神と飯生の敵対関係も立派なスパイスだ。

体裁上は警察と探偵で仲間。しかしその実、悪だくみをする飯生を何とか阻止しながらも、それとなく「協力関係」をアピールする大人な隠神のおかげで均衡が取れている。

何とも言葉にしづらい男女の大人の関係。決して嫌らしい意味ではなく、2人だけの世界がトラブルの火種となり、主人公の目的ともうまく交差している。

いろいろと不足感はある。主人公は不死身だからバトルの緊張感はそれほどないし、2期もあるかも分からないのに、これからというタイミングで終わっている。

だが全体的に見ても素晴らしい作品だ。ホラー系の描写が大丈夫な人は是非とも観て欲しい作品だ。

最後に晶を演じた村瀬さんが男だということに言及しておきたい。大人の男性がなぜ少女(男の娘)の声を出せるのか…凄すぎる。

銀狼や入間を演じてきた村瀬さんだからこそできる芸当だ。




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