2013年

【2013アニメ】「キルラキル」アニメレビュー





(86点)全24話

父の死の謎を追い転校してきた少女・纏流子。転校した本能字学園は、着た者に特殊な能力を授ける『極制服』により絶対的な力と恐怖で生徒会会長・鬼龍院皐月が支配していた。その出会いは、偶然か、必然か。学園に巻き起こる波乱は、やがて全てを巻きこんでいく!TVアニメ「キルラキル」公式サイト




謎を追い求める主人公を描く学園バトルアニメ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (86点)
完走難易度 普通

原作はTRIGGER・中島かずき先生。

監督は今石洋之さん。

制作はTRIGGER。

本能寺学園

©TRIGGER・中島かずき/キルラキル製作委員会

本能寺学園という学園に、父の死の謎を追い求めて主人公が転校してくるところから物語が始まる。

舞台は戦後のような廃れた世界感と、グレンラガン的なバトルものっぽい荒々しい雰囲気を併せ持った世界。

そんな世界で謎を追い求めて戦う主人公。父の形見である「鋏」の片側を探して生徒会に勝負を挑む。

派手なエフェクト。派手なバトル。大げさな口上やキャラクターの動き。元ガイナックスだった方々が作ったアニメだけあって「癖」しかない作品だ。

とにかくバトルの「熱量」というのを大切にしているのが良くわかる。キャラクター同士の会話や場面転換をシームレスにして、一息つく暇すら与えないほど次々と嵐のようにシーンが入れ替わる。

そしてそんな熱を帯びた世界観の中で清涼剤のような、唯一休憩できる場所になっているのが満艦飾マコというキャラクターだ。

彼女は主人公が学園で最初に出会うキャラクターで、いわゆる「アホ」な彼女がいることでストーリーにアクセントが付いている。

自由奔放でとにかく自分がしたいことを衝動に任せて、空気を読まない行動をする彼女がいることで、熱が少し冷めてちょうどいい塩梅になっている。

ただ1話を観た限りでは、緊張感が欲しい場面で彼女の奔放さが少し足を引っ張っている感もあり、バトルにそれほどプラスな影響をもたらしているとは思えない。

さらにエロについても同じことが言える。エロと言ったら少し語弊があるが、このアニメではかなり「セクシー」な部分というのが強調されている。

主人公の勝負服はかなり露出が激しいし、周りもその際どさに反応することで、バトルの緊張感が少し損なわれている。

さらに人質にとられたマコも助けを求めるわけでもなく、逆さ吊りにされることでパンツが見えてしまわないか心配をし、ピンチの場面でも変わらずマイペースを貫いている。

バトルの緊張感がギャグやセクシーで相殺されてしまっている。とはいえ、これほどあからさまだと元々狙っているポイントはそこなのかもしれない。

セクシーとバトルを組み合わせつつ、間に程よくギャグを入れ込んで生きるか死ぬか程の緊張感を出さないで、気楽に楽しめるというラインを目指しているのならば問題はない。

ただこれが途中からバトル一本で攻めるようになったら「1話は何だったんだ」ということになるので、2話以降も注視していく必要があるという感じだ。

いずれにしても、いまだかつてないバトルものという感じで素直に面白い。

CGを一切使わずに全て手書きで、躍動感のある動きを演出する線の一本一本は芸術の域だ。

独自性の中にも生徒会の異常な権力だったり、四天王の存在だったり、階級制度だったり。

バトルもので見慣れた設定などもあり、すぐに馴染める部分とそうでない部分のバランスも絶妙だったりする。

目指すべき方向性をはっきりと示した1話という感じで、個人的にはかなりの好感触だ。

生徒会

©TRIGGER・中島かずき/キルラキル製作委員会

生徒会が大ボスみたいな立場になっており、生徒会長の思惑に主人公が翻弄されるという構図でストーリーが進んでいる。

はっきりとした敵対関係があり、分かりやすい勧善懲悪があり、セクシーな要素を除けば日曜の朝から地上波で放送されていても違和感がない作品だ。

ラスボス的なポジションにいるのが生徒会長。その生徒会長に向かって各部部長→四天王と進んでいく。ポケモンのゲームのような分かりやすさだ。(笑)

だがその分かりやすさゆえの味気無さは、やはり多少なりともついて回る。

バトルの流れも一辺倒だ。それこそ日曜の朝にやっているような戦隊ものやライダーもののような主人公のお決まりの変身シーンから、「ちょっと苦戦するけど結局倒してハッピーエンド」みたいな鉄板の流れが続く。

そこに24話という尺の長さも相まって、序盤の終盤以降は特に間延び感が否めない。思うに1クールでも十分成立してしまう作品だ。

序盤にラスボス的な立ち位置にいる生徒会長と早速戦うシーンがある。序盤からラスボスと戦って最後に再戦するみたいな作品は多々あるが、見どころを序盤に持ってくる意味でも効果はあると思う。

だが逆に一番の盛り上がりを最初に持ってきてしまったが故に、後の部長や生徒会長四天王との戦いがそれほど盛り上がらなくなっている。

生徒会長が頻繁に登場することで、手の届く感じがしてしまうのも少し違和感がある。

互角に戦える。話せる。

生徒会長のポジションがイマイチつかみきれない。ラスボスと言おうにも主人公とはあまりに近い存在で、不気味さとか人知を超えた能力とかがなく、ラスボスの要素が全くない。

ラスボスでないならライバル?他に共通の敵が現れて共闘をする?しかし中盤までに2人が分かり合うことも、共通の敵となるような人物も登場していない。

一体ストーリーがどこに向かうのか。律儀に四天王を倒して生徒会長と戦うような安直な流れではないことを期待したい。

バトル、バトル、バトル

©TRIGGER・中島かずき/キルラキル製作委員会

1にバトル2にバトル3にバトル。とにかくバトルだけで構成されている作品だ。

何をするにも何を決めるにも学校の行事にしても全てバトル。とにかく熱量が凄まじい。

中盤の選挙や「襲学旅行」とは名ばかりのただの侵略戦争。「バトルで魅せてやるぜ!」という制作陣の本気度が違う。

バトルの出来がけた違いだ。特に作画は類を見ないほどに洗練されており、キャラクターの動きの躍動感がそこら辺の有象無象とはわけが違う。

決して過大な評価ではない。これほどの熱量でこれほどの尺でアニメ化しているにも関わらず、序盤から終盤までバトルの質が全く落ちない。

エフェクトやSEなどの迫力、多彩なカメラワークによる臨場感。そしてもちろん小清水さん、柚木さんをはじめとするキャストさんが思い切りシャウトする演技も。

ギャグを時折挟むところを見ても、なんとなく昭和のバトルアニメを連想させるような懐かしさや荒々しさもあり、いろんな世代に刺さりそうな完璧に近いバトルアニメという感じだ。

しかしバトルの中身、いわゆる「シチュエーション」の部分では物足りなさがある。

「壊惨総戦挙」にしても「襲学旅行」にしても、外面の熱量だけで押し切っている感があり、心から熱くなるような戦いではなくなっている。

そこはスポンサーの意図も絡んだオリジナルアニメの宿命かもしれないが、どうも「バトルのためのバトル」という感じがする。

一体選挙にどのような意味があるのか。なぜ普通の選挙のような形を取らないのか。四天王と戦うことが前提なら、わざわざ選挙などと大々的にやる必要はあったのか。

なぜ生徒会長は他の地域を侵略しようとしているのか。侵略に何の意味があるのか。なぜ旅行と名がついているのか。なぜバトルをしているのか。関西で登場するキャラクターは一体誰なのか。

中盤以降は特にバトルの意味合いが伝わってこない。選挙はまだしも、いきなり侵略などというおっかない行事が始まったかと思いきや、わけのわからん奴とバトって一方的に蹂躙する生徒会長には全く付いていけない。

主人公が正義で生徒会長が悪ということはなんとなくは分かる。お互いのポリシーを曲げずに自分の正義のために行動し、同じ「神衣」を着こなす者同士何度か剣を交えるシーンがあり、中盤以降は徐々に生徒会長のポジションもつかめてきてはいる。

しかし、はっきりと言語化できるような関係ではないので気持ち悪さはある。ライバルでもないし完全なる悪役というわけでもない。主人公が知りたがっている秘密を知っているかどうかも不透明。

最終的に仲間となるのかラスボスとなるのか。関西を蹂躙したかと思えば、暴走した主人公を止めに入ったり、主人公に負けた生徒会四天王を除名しなかったり。やっぱりはっきりとは定義できない。

おそらくその気持ち悪さは狙っているとは思うのだが、物語の核となる関係性なのではっきりしてほしさもある。

せっかくの直接対決も最高潮の盛り上がりとはいっていない。一番の見せ所といっても過言ではない対決も、特に心が揺さぶられることはない。

画面上での熱量は確かに凄まじい。だがバトルでかかっているものがあやふやで、悲しいかな、心には響かない作品になってしまっている。

逆転

©TRIGGER・中島かずき/キルラキル製作委員会

まさかのどんでん返しにしてやられた気分だ。

中盤終わりの16話あたりから始まる「大文化体育祭」。ここで大きな転機を迎える。

いつも通りに退屈な学校行事という名のバトルが開かれると思いきや、予想だにしない展開へと転がっていく。

それまで意味合いが分からなかったイベントが何のためだったのか。散らばった糸が1つにまとまるような見事な伏線回収が始まる。

ネタバレになるのでここでは控えるが、とりあえず中盤までの退屈が嘘のような緊迫感のある展開が繰り広げられる。

これは見事と言う他ない。どんでん返しの可能性は少なからず頭の中にあったし、24話の尺があって、このまま終わることがないのは薄々気づいてはいた。

しかし退屈からここまで一気に進展するとは思いもしなかった。それまでの退屈が吹き飛ぶような疾走感。これはまさしく一杯食わされてしまった。

総評:終盤から本番

©TRIGGER・中島かずき/キルラキル製作委員会

この作品においては詳しい展開を書くのは控える。それほど衝撃的で刺激的な展開が終盤に待っている。

ネタバレをしてもいいと判断する作品もあるが、この作品においては18話まで観てこそ初めて価値が生まれるどんでん返しなので、今から観る人の楽しみを奪わないためにも、さらけ出したい気持ちを抑えておくことにする。

それほど中盤までの退屈が嘘のように一気に盛り上がる。それまでの選挙や襲学旅行での生徒会長の振る舞いの裏にある思惑、主人公を育てた父親の正体など。

やはり生徒会長をあやふやな立場にしていたのは明らかに制作陣の狙いだ。あえて関係性を定義せずに、終盤の盛り上がりのためにとっておくとは実に巧妙だ。

この作品は終盤のだいたい16話あたりから本番が始まる作品だ。それまで退屈だった分、16話以降で放出するエネルギーはとてつもないものがある。

本能寺学園という生徒会長が実権を握っている学園があって、弱肉強食で全てが決まり、服で階級が決まっているという特殊な制度があって、主人公がご都合で「神衣」という最強の服を手に入れ、鋏の片方を探していたり、わけのわからない選挙や旅行とは名ばかりの侵略戦争をやったりと、一体どこを目指しているのかが分からない瞬間が序盤~中盤は多々ある。

だが終盤の伏線回収によって、その全てに意味がもたらされるから驚きだ。中盤までの退屈を経て、終盤ではようやく視界が明瞭になり、より分かりやすい勧善懲悪が完成する。

足りなかった「シチュエーション」のピースが足され、元来備わっていたバトルの迫力がプラスされ、とんでもない相乗効果をもたらしている。

まさに「至高のバトルアニメ」と形容するに相応しい作品だ。

あまりに退屈な時間が長すぎて眠ってしまいそうになるが、ちゃんと24話分の時間を費やすに値する作品なのは間違いない。

雑感:夜露死苦!

©TRIGGER・中島かずき/キルラキル製作委員会

最初から最後まで喧嘩上等な不良よろしく、オラオラとした熱量しかない作品だった。

昭和アニメのようなせわしないキャラクターの動きや滑り気味のギャグ。

下ネタに近いようなセクシーなギャグもふんだんに盛り込み、背景やキャラデザなど全ての作画に至るまで昭和感が漂っている。

どこを見渡しても癖しかない作品だ。しかしちゃんと面白くなるポイントだけは押さえており、独自性と普遍性のどちらも表現している素晴らしい作品だった。

これぞアニメと言ってもいい。それほどに日本アニメの粋が結集したような高密度な作品だった。

根性論を絵にかいたようなバトルアニメにも関わらず、「服」という1本の太い幹もある。

「人が服に着られている」とは背伸びした身の丈に合わない服装の人を言うが、「それでもいい」と主人公はその考えを肯定する。

めちゃくちゃでも似合っていなくてもいい。世界はそんなハチャメチャな人間たちで構成されていると。

対する敵側は同じ服で世界を統一しようとしている。「服」の考えを通して見えてくる「人としての生き方」みたいなもの。

いろんな服があるからいい。いろんな人がいていろんな生き方があるから面白い。服という一枚の布を人生に見立てたオリジナルの世界観に魅了され、いろいろと考えさせる機会もくれた。

もちろん24話という尺の3分の2が退屈ということを考えると、いくら終盤で面白くなるからといっても、あまり印象は良くない。

だが絶大な人気を誇るようないわゆる「神アニメ」と呼ばれるような作品を見ると、意外と終盤に本気を出す作品もチラホラある。

個人の捉え方にもよるが、「2クールアニメ」に限っては助走が大きければ大きいほど高く飛べるのかもしれない。

流石、元ガイナックスのメンバーが立ち上げた会社の作品だ。興味がある人で時間もある人はぜひぜひ観て欲しい。




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