おすすめアニメ

【2017アニメ】「このはな綺譚」アニメレビュー

(62点)全12話

神様に遣える狐っ娘たちが働く温泉宿「此花亭このはなてい」。

「このはな綺譚」は此花亭に奉公にきた新人仲居の柚と、
柚を取り巻く仲間たちとの心温まる物語です。

仲居たちの想いはひとつ。
「正体が何者でも、 どなたさまでも、お客様は神様です。」
もちろん、 いま目の前におられる、あなたも…。

柚たち仲居の “おもてなし” に触れ、疲れた心を癒してください。TVアニメ「このはな綺譚」公式サイト

ケモミミ版「花咲くいろは」

旅館で働くケモミミ少女たちの仕事風景と日常を描いたファンタジーアニメ。

原作は天乃咲哉さん。

監督は岡本英樹さん。

制作はLerche。

旅館へ

©天乃咲哉・幻冬舎コミックス/このはな綺譚製作委員会

主人公の柚は自分を育ててくれた尼さんの元を離れ、社会勉強をするために旅館・此花亭で働くことになる。

掴みの時点で「ケモミミ版花咲くいろは」みたいな世界観になることは想像がついていた。

多感な少女が旅館へ入り、失敗や成功を繰り返しながら成長していく黄金パターン。

自分が成長するのはもちろんのこと、主人公が入ることで組織の雰囲気すらも変えてしまい、気づいたら主人公が欠かせない存在になっているという流れだ。

この作品でも社会を知らない未熟な主人公が、旅館という未知の世界に入って最初は右往左往しながらも、自分らしいやり方を見つけて順調に成長をしていく。

1話

©天乃咲哉・幻冬舎コミックス/このはな綺譚製作委員会

自分を良く思わない、仕事の不出来に対して叱ってくる「対立」の相手も不可欠。(『花咲くいろは』でいうところのホビロン)

その「敵」となるのが皐月という女の子なのだが、彼女は新人で仕事というものを全く知らない柚にいきなり強めに当たる。

もちろん彼女はヒステリックな性格などではなく、彼の生真面目さは仕事への人一倍の責任感の裏返し。

一つ残念なのが、彼女の「言葉の裏にある優しさ」が見えにくいということ。

声優さんの演技が一本調子で、彼女がただ怒っているだけのキャラになってしまっていた。

それを1話のAパートから見せられたもんだから、彼女の第一印象が最悪になったのはもちろん、アニメの入りの印象としても全く良くなかった。

キャスティングに文句を言いたいが、それよりも、皐月という少し癖のあるキャラを最初に持ってきたことが問題だ。

登場させたとしても顔を見せる程度か、主人公と一言交わす程度で良かったものを、アニメの印象を決める大切な1話の、しかもAパートから「仕事の厳しさ」を主人公が感じてしまうシリアスシーンを持ってきては、作品のイメージ付けとしては悪手。

『花咲くいろは』の場合はAパートのキラキラした空気感から一転、Bパートでシリアスなシーンをてんこ盛りにするという対比の演出で、視聴者の心を鷲掴みにしていた。

1話というのは作品の紹介をするところでもあり、視聴者の印象にも残りやすい大事な局面だ。

それをなぜ、「主人公が旅館で仕事の厳しさを学ぶ」というシリアス回にしてしまったのか。

さらに大きな問題点として、1話で既に主人公の成長が完結してしまっている点だ。

仕事や社会について知らない柚は、当然最初はミスを繰り返し、皐月に怒られて凹んでしまう。

そこから失敗を繰り返して恥をかいて、周りに迷惑をかけながらも、徐々に職場の空気に慣れていって自分のスタイルを探し出し、同時に周りからの評価も確実に上がっていき、最終的には組織の中で欠かせない人材になっているというのが鉄板の流れだ。

しかし、この作品の1話でそれが完結してしまっている。

失敗をして反省をして、自分に厳しく当たってくる皐月の裏の優しさに気づいた柚は、皐月とのギスギス感がそれ以降全くなくなる。

対立が1話にして消える。ホビロンと1話で仲直りしてしまう『花咲くいろは』など誰が観るだろうか。(笑)

分かりやすい成長を見せる方法として、対立相手との和解というのは一つのポイントとして使えるが、このアニメの場合は1話で早くも成長を遂げてしまうのだ。

しかしこの作品はあくまで、ケモミミ少女たちのキャッキャウフフな日常と、お客様との人情を描いた作品だから…と弁明するのも少し苦しい。

だったら舞台を旅館にする意味はあったのか、1話で仕事の大変さを学ぶシーンが必要だったのか、そもそも主人公と対立するキャラなど必要だったのか、という疑問が出てくるが…

テーマ設定の段階で何を伝えたい作品なのか見えづらい作品になってしまった。

モノローグ

©天乃咲哉・幻冬舎コミックス/このはな綺譚製作委員会

モノローグは視聴者が察しにくい気持ちを伝えることができたり、キャラの意外な内面を明かすことができる便利な手法だ。

しかし使い過ぎると一気に説明っぽくなってしまう諸刃の剣でもある。

このアニメではまさにその愚を犯しており、多すぎるモノローグが作品の世界観までも壊してしまっていた。

キャラの感情をモノローグでいちいち話させることで、キャラの心情を察するという視聴者の権利を奪ってしまっていた。

1から100まで全部説明することを丁寧な心理描写と捉えることもできるが、あまりに多いモノローグは会話のテンポ感を台無しにしてしまう。

特に序盤は、いちいちキャラに思ったことや感じたことを話させてしまったせいもあり、普通のアニメの尺の2倍の長さに感じられた。

あまりのスローテンポに3、4話で切った人も大勢いることだろう。

人情

©天乃咲哉・幻冬舎コミックス/このはな綺譚製作委員会

このアニメの最も見せ場となるのがお客様との「人情噺」だ。

現世に未練のある人が訪れたり、めっちゃ可愛い日本人形が襲来したり、有名な神様が来たり。

ふんわりした作画も相まって、心がポカポカするようなハートフルストーリーが中盤以降は多くなる。

ただ人情として成り立っていなかった回もあり、人情アニメとして捉えるべきかも微妙なところだ。

8話がまさにその回。

柚が浜辺に漂流していた礼という少女との出会いをきっかけにして、他の仲居の元にも現世からの来客があって、 Bパートのラストで全員が家族だったと判明する回となっている。

まさかの伏線回収にはびっくりしたが焦点はそこではない。

無駄にこじゃれた設定を入れ込もうとして、分かりにくくしていまっていたことが問題だ。

8話のBパートは、カイトという人間がいきなり此花亭の世界に迷い込むところから始まる。

彼は現世で両親と離ればなれになって新しい環境に飛び込んだものの、空気に馴染めず悩んでいたところで、此花亭の世界へ突然やってくる。

ちなみに此花亭がある場所は人間界とは別の次元に存在しており、ときたま人間界から人間が迷い込むことがある。

カイトは此花亭で、同じく異世界に迷い込んだ主人と出会い、未来への希望を諭され現世に帰る。

その後、後を追って現世へ帰った主人の盲導犬として一緒に歩きだすというのがラストシーン。

そう、ラストのシーンでそれまで人間だったカイトが、現世では実は「犬」だったことが判明するのだ。

両親と離ればなれになったのは盲導犬としての才能を見出されたからで、新しい環境に馴染めなかったのは盲導犬の「訓練所」でのお話だったということが最後に語られる。

最後に意外な結末を用意するという意味では確かに成功している。

しかし「人間が実は犬だった」なんて仕掛けは明らかに必要ない。

サプライズの方向性を明らかに間違っていたし、こういうところから人情のクオリティの低さが顕著に出てしまっていた。

8話の登場人物が実は家族だったという仕掛けも、個々のストーリーが淡泊だったために大きな驚きに繋がらず。

上っ面だけの人情噺を見せられたところで泣くにも泣けない。

後半はさらに見せ場の少ないアニメだった。

百合

©天乃咲哉・幻冬舎コミックス/このはな綺譚製作委員会

この作品の一翼を担うのが結構ガチめの百合展開だ。

カップリングが序盤で完成しており、事あるごとにイチャイチャシーンが挟まれる。

人を選ぶジャンルで嫌悪感を覚える人もいるが、作品の世界観に上手く溶け込んでいた。

嫉妬心から素っ気なくするくらいのシリアスさで、百合アニメ特有のねばっこさが全くない。

ふわりとした作画も相まって、とにかく可愛くて微笑ましいだけの空間が作られていた。

百合が好みではないという人でも問題なく観られるレベルの百合だ。

総評:惜しい

©天乃咲哉・幻冬舎コミックス/このはな綺譚製作委員会

無駄にシリアスなストーリーと不必要なモノローグ。

一向に盛り上がらない展開にやきもきしたが、中盤以降、9話からかなり持ち直した印象だ。

特に脚本や演出が代わったなどの変化があるわけではないが、明らかに会話のテンポは格段に良くなっていた。

無駄なモノローグもなく、ボケとツッコミが小気味良く繰り広げられ、それまでは皆無だったしっかりとした笑いがあった。

9話のやり取りのテンポ感を序盤から出していれば、退屈が少しは和らいだかもしれない。

せっかく素晴らしい作画があり、ケモミミ少女たちの個性あふれるキャラクターがあるのに、十分に脚本に落とし込むことができなかったのは残念だ。

「右も左も分からないまま仲居になる主人公」が出てくるのに、1話で厳しい先輩の内なる顔を知ることで、早くも見ず知らずの環境に溶け込んでしまう。

「社会を知らない・仕事を知らない・友達もいたことがない」そんな少女が新しく旅館へ仲居として入ったというのに、困難を背負うのは1話だけ。

笑ってしまう。

主人公の柚は人の温かさや仲間の温かさに触れていくが、彼女がはっきりと「成長した」という描写は最後まで出てこなかった。

それなら何も知らない箱入り娘である必要は、最初からない。

作品の方向性が不透明。中途半端でテーマも分かりにくい。そんな作品だった。

個人的な感想:泣けない

©天乃咲哉・幻冬舎コミックス/このはな綺譚製作委員会

主人公の柚を始め、このアニメのキャラはことあるごとに泣く。

あるときは寂しさから、あるときは相手の気持ちをおもんばかって、あるときは新しい感情を知って。

人情と涙はセットだが、このアニメではどうにも涙は流れない。

山で暮らしていた弊害か、何でもないことでも感情が揺さぶられて泣いてしまう柚だが、残念ながらそれは私たち視聴者と共有できる感動ではない。

勝手に感動して勝手に泣く。ただそれだけだ。

もちろん柚の感受性を否定する気はない。(笑)

しかしその涙が視聴者と共有できなければ意味はない。

人情噺が物足りなく感じた理由だ。

例えば8話の盲導犬と主人の話で、1話まるまる尺を使っても面白かったと思う。

主人が事故に遭って盲目になる。悲しむ家族。死んでしまうんじゃないかという恐怖。

一方、カイトが親の元を離れて新しい訓練所という環境に慣れず、悩んでいたところにさらに不幸が襲い掛かる。

一人と一匹は此花亭という別の次元で対面し、それぞれ現世に帰る理由を見つけて、現世で仲良く暮らしたとさ、でまとめる。

これは私の妄想に過ぎないが、もっと一つの人情噺にじっくり時間を使っても良かったと思ってしまう。

必要最低限のキャラ掘りはしつつ、難しい設定を排除してすんなり入ってくるようなストーリーにしていれば、もっと評価は高くなっていた作品だ。

百合要素を多分に含むため、慣れていない人にはあまりオススメできないが、ソフトな百合に分類されるアニメなので、ケモミミが好きな人・人情が好きな人にはオススメしておこう。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です