2013年

【2013アニメ】「ログ・ホライズン」アニメレビュー





(78点)全25話

ゲームの世界と現実が逆転。内気な青年の異世界変革アドベンチャー。これが、僕たちのリアル。ある日突然、老舗オンラインゲーム<エルダー・テイル>に日本人ユーザー3万人が閉じ込められてしまった。ゲーム歴8年の大学院生・シロエも異世界に取り残されてしまう。モンスターとの戦闘、死ぬことのない境遇。何が起きたのかわからず不安に駆られたプレーヤーが街にあふれ、ヤマト地区最大の都市<アキバ>は秩序を失う。一匹狼を自負していたシロエは、旧友・直継、美少女アサシン・アカツキたちとギルド<ログ・ホライズン>を設立。他人と接することが苦手で内気な青年が仲間とともに廃墟アキバから世界を変えようと立ち上がる。TVアニメ「ログ・ホライズン」公式サイト




ゲームの世界に閉じ込められるバトルファンタジーアニメ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (78点)
完走難易度 普通

原作は橙乃ままれ先生。

監督は石平信司さん。

制作はサテライト。

異世界

©橙乃ままれ・KADOKAWA/NHK・NEP

このアニメはゲームの世界に閉じ込められた現実世界の人間たちを描いたバトルファンタジーアニメだ。

「ゲームの世界に閉じ込められる」という世界観は、昨今では実にありふれたものになっているが、この作品の放送は2013年ということもあり、先駆けに近い存在と言っても過言ではない。

異世界に召喚されるような描写はなく、いきなり異世界が舞台となり、主人公が見慣れない風景に戸惑うというシーンから始まる。

そしてそこから同じゲーム仲間と落ち合い、自分たちが知っているゲームとの共通点や、コマンド操作などを実際のバトルで確かめつつ、徐々に異世界に身体を慣らしていくという過程をしっかりやっている。

あんまりゲームに入る系のアニメでこのような描写はない。序盤の尺を使っていろんなことを試しつつ、そして新たな出会いや事件を経て、主人公の名はゲーム内に轟いていく。

主人公のパーティーは3人とも高ランカーで、バトルでは敵なし。バランスの取れた構成にもなっており、大人数のPKに遭おうともへっちゃら。

パーティーメンバーには女の子もいて、主人公と何やらいい感じというラブコメ方面の匂わせもあったりと、楽しみな伏線が多い序盤になっている。

だが1つ気がかりなのが、製作・著作がNHKということで、あんまり過激な表現には期待できないということだ。

異世界バトルもので過激描写ができないとなると、かなり制限を食らうと思われるので、果たしてどうやって盛り上げていくのか。

バトル

©橙乃ままれ・KADOKAWA/NHK・NEP

バトルにこだわって作られている印象だ。

ただ魔法をぶっ放したり剣をぶん回すだけではなく、「どのように勝つか」というしっかりとした戦術があり、即席で呼吸を合わせる連携がある。

すすきのでの戦いでは、主人公の思惑通りに事が運び、見事に悪役を成敗している。

そしてバトルが終わった後に仲間による解説が入る。「あそこはああすることで、ああいう意図があり、結果的に勝利できた。信じられない」とご丁寧にモノローグで説明をしてくれる。

確かに主人公は相当な切れ者であり、悪役がしっかり成敗されてスカッとする気持ちも味わえる。

だがそこまで濃密な駆け引きがあるわけではなく、序盤のすすきのの戦いに限っては、油断した方がまんまと罠に嵌って負けたという印象の方が強い。

主人公が幾重にも策を弄したというより、敵側が主人公のプラン通りに行動してくれた、という方が正しい気がしている。

なのでそこまで主人公がすげーとか、主人公つえーとはならない。戦況を見て臨機応変に動くようなシーンも特になく、事前に準備したもので勝っているので、「賢い」というより「用意周到」という感じだ。

序盤の印象は特になく、量産型のいかにもな異世界転生アニメという感じだ。

結成

©橙乃ままれ・KADOKAWA/NHK・NEP

序盤の終盤あたりでタイトル回収をする。

「ログ・ホライズン」という名のギルドを立ち上げ、それまで他人との関わりを避けてきた主人公が、仲間を作ることになる。

最初のミッションは秋葉の掃除。欲にまみれ、廃れた秋葉から悪者を退場させるために、ギルドメンバーと共に行動を起こす。

タイトルを回収して、主人公が一歩前に踏み出し、そして強力な仲間とともに達成困難なミッションに挑む。

ようやく面白くなってきたという感じだ。作品やキャラの紹介はあらかた済んで、これからというところ。

そして物語の中盤で「円卓会議」という大きな転換期を迎える。

秋葉の街の有力ギルドが同盟を組み、料理や生産系の知識を共有し、元からゲームに存在しているNPCプレーヤー「大地人」との温和な関係を保つために結成される。

NPCプレーヤーは意志を持つ普通の人間として存在している。主人公たち冒険者と大地人に大きな差異はなく、もはやゲームに転生した作品というより、元から異世界が舞台のアニメのようだ。

誰一人現実を懐かしんで悲しむこともなく、現実で起きたことを振り返る人もいない。みながゲームの世界に溶け込み、至って普通の生活を送っているので現実感がない。

転生した意味があまりないようにも感じるが、一般的な転生アニメにはない独特の世界観がある。

異世界にまるで長く居座っているかのような違和感のなさ。そして主人公が戦闘力に長けているわけでも、表立って何かをするわけでもなく、むしろ進んで悪役になろうとしていること。

主人公の底が見えないこと。自分の力を100%発揮しているようで全くしていない。頭の回転が早く次々と策を打ち、数手先を常に見越しているかのような立ち振る舞い。

おおよそ大学院生とは思えないほどの思考力、決断力、統率力、交渉力…etc

決してバトルで大活躍するわけではなく、裏方で力を発揮する系の主人公というのは斬新で面白い。

また「腹黒」と他のプレーヤーから呼ばれるほど腹の内が読みにくく、どす黒い何かを持っているダークヒーロー的なキャラクター性も持ち合わせており、地味な風貌から想像できないほどの存在感があるキャラだ。

「世界を変える」という大きな野望を持つ彼は、ストーリーを大いに盛り上げる。腹黒も実は優しさや熱意に裏返しでもあり、彼の底知れない魅力は確かに惹きつけられるものがある。

大地人

©橙乃ままれ・KADOKAWA/NHK・NEP

ストーリーが動いていく上で重要な存在となるのが「大地人」と呼ばれるNPCプレーヤーだ。

ゲームに元から存在しているキャラクターのことで、本来ならば決まった言葉しか発することのない彼らが、自分たちの組織を作り、さらに人間と同じように夢や意志を持ち、心まで持っている普通の「人間」として描かれている。

そんな大地人と、大地人がいうところの「冒険者」という主人公たちが属する異世界から来た人間たちの駆け引きも見どころとなっている。

異世界に干渉して、戦争だ交渉だと駆け引きをするようなアニメは他にもあるが、このアニメでも使者を送り合って互いの国の偵察をしたり、秘密裏に他の国を飲み込むための画策をしたりと、国同士のやり取りが面白い。

どうにか吸収を免れないように相手の思惑を考え、「相手の出方がこうだろうからこちらはこうしてみよう」という提案を主人公して、他の冒険者たちを動かし、大地人との交渉を有利に進める。

決してドンパチをするわけではない。アニメ的にはそっちの方が面白いのだろうが、あくまで「交渉」という方法をもって穏便に和平を結ぶ。

絵面的には地味だが、主人公が意外なところまで根回しをして、相手の一歩先を常に行く様は爽快感があり、このアニメならではの面白さがそこにある。

異世界に来たからといって、バトルをするという義務は確かにない。

どの転生アニメもバトルとは切っても切れない縁があるし、このアニメの舞台となるゲームもRPGなので、もちろんモンスターとのバトルはある。

ただバトルはあくまでサブ的な扱いで、本命は他のアニメにはあまりない「頭脳戦」にある。

モノローグを巧みに使い、両者の考えがはっきりと分かることで、その交渉がどういう結末を迎えるのかが否応でも気になる。

主人公の巧みな戦略や口上でいかようにもなる頼もしさ。

ゲームの世界であることを忘れそうになってしまうが、このアニメならではの面白さがある。

総評:リアルに

©橙乃ままれ・KADOKAWA/NHK・NEP

25話という尺をたっぷり使って、丁寧に段階を踏んで描かれている作品だ。

見知ったゲーム内とはいえ知らないことだらけの異世界。

争いも絶えず混沌とした世界で、主人公たちが少しずつ世界の法則を知り、歴史を知り、仲間や諸外国との関係を深め、平和な世界を作るために奔走する。

大迫力のドッカンバトルで興奮を誘うわけでもなく、主人公最強を謳歌するアニメでもなく、死んだら終わりのデスゲームでもない。

あくまで「ログ・ホライズン」という作品はゲームの世界を「1つの現実」として描いている。

そこにはNPCとは名ばかりの知能を持った「人間」が住んでおり、冒険者は逆に新参者で侵略者のイメージが近い。

その立場の関係をリアルに掘り下げ、冒険者が傍若無人にやりたい放題に振る舞うのではなく、先住民である大地人に敬意を表し、あくまで対等な立場として交渉や駆け引きを行い、争いはせずに友好関係を築こうとする。

その先陣を主人公が切る。大地人の思惑を正確に捉え、自分たちの利害と相手の利害の一致する妥協点を探しつつ、交渉が上手くまとまるように絶妙な立ち回りをする。

派手さはないが、主人公は交渉の場で「最強」を欲しいままにしている。

バトルでは30秒先の展開を見越して仲間に指示を出し、交渉の場でも熱意と知力を持って優位に事を進める。

仲間からも絶大な信頼を寄せられ、等身大の優しさと思いやりを持っており、人間としても尊敬できるキャラクターだ。

周りを固めるサブキャラたちもそれぞれに得意なことがあり、固有のスキルがあり、性格も異なる。

そこをうまく掘り下げることでサブキャラにも魅力が生まれ、外見と中身のギャップがよりキャラクターを引き立てて、キャラ同士の関係でもいくつかの進歩が見られ、徐々に憧れから恋愛に発展するような変化も楽しめる。

さらには中盤で明らかになる記憶の欠如。その設定が物語に緊張感を与え、それまでなかったバトルにも少し緊張感が生まれている。

頑張っているとつい背中を押してしまうような魅力的なキャラクターが多く、関係が深まっていくごとに喜びもある。

五十鈴とルディ。姫様とクラスティ。主人公とアカツキ。主人公とミノリ。直継とマリエ。

カップリングと言い換えても良いかもしれない。共に修羅場をくぐり抜け、互いを信頼し、お互いのことを理解し合う関係。

一足飛びではなく、2クールという尺を活かしてゆっくりと。キャラ同士の結びつきもより強くなっている。

とはいえ、25話という尺の割に中身はそこまで濃いようには感じなかった。丁寧に描いている反面、ストーリーの進度が遅く、劇的に何かが変化したり、真っ逆さまに落ちるような衝撃的な展開もなく、至って平和なアニメという感じだった。

観る人によっては間違いなく退屈に感じる部類の作品だ。

異世界という非現実的な世界が舞台なのに、地味なレベル上げやゴブリンという最弱モンスターとの戦い、それに交渉のテーブルを囲んだ駆け引きなど、全体的に派手さには欠ける。

同じようなテンポでストーリーが進み、死亡フラグ的なセリフやシーンがあっても、基本的には何も起こらず平和のまま。

一定のリズムを刻むメトロノームのように振れ幅が変わらず、事件→解決→日常→事件→解決…を繰り返す。

途中記憶の欠如を含む、大きな2つの事件があった程度で、特に琴線に触れるようなシーンはなく、25話という尺をフルに生かしていたかと聞かれれば、そうは思えない。

思うにこの手の作品は好みがわかれる。ゆったりと丁寧に段階を踏んで、世界について、仲間について少しずつ掘り下げ、少しずつ変化していくような頭脳戦含みのストーリーが好きな人はハマるかもしれない。

だが即効性を求め、「主人公は最強であれ」という志を持つ人には少し物足りないかもしれない。(笑)

主人公は確かに最強ではあるが、それはテーブルを囲んだときに一番に発揮される。相手の数手先を読む先見の明は確かにかっこいいが、どうしても風貌といい地味さが否めない。

いかにもと言っては何だが、製作をNHKが担っているとあって、万人向けに近いようなストーリーを重視しているようにも感じる。

枠からはみ出さないように丁寧に。結果的にアニメとしては何とも言えないような作品になってしまっている。だが個人的にはシムシティの街づくりのような面白さがあり、頭脳派の駆け引きも中身があり、面白かった。

秋葉から拠点を作り、秋葉から世界を変えるというスケールの大きさ。仲間との絆。魔法や元のゲームとの共通点などの世界の謎。他国の狙い。西の国。

様々なものが同時並行で進んでいき、少しずつ変化が生まれていく。どんどんど気になることが増えていき、作品にのめり込んでいく。

なるほど3期まで製作されるのも納得な作品だ。こういうアドベンチャーがあってもいい。

2期への引きを残した終わり方もいやらしく、続きが気になってしまう。2期も引き続き楽しみだ。

雑感:脱税?

©橙乃ままれ・KADOKAWA/NHK・NEP

調べたところ、原作者が脱税の容疑で逮捕されて実刑まで下っているという。

そんなログホラだが、ちょうど今、2021冬アニメとして3期の放送が開始されているのは興味深い。

作者が逮捕されるような作品は、腫物のように扱われる運命のようにも思えるし、ましてや天下のNHK様がそんな作品の続編を担うとは到底信じられない。

世間のイメージよりも、視聴率やグッズによる売り上げを優先したのだろうか。禊は済んだということだろうか。

まあそんな裏の事情はともかく、丁寧に描いている分、伸びしろがある作品だし、こうして3期まで漕ぎつけているということは、世間での評価も高いということだろう。

2期では一体どんな展開を見せるのか。主人公を取り巻く恋模様はどうなるのか。楽しみだ。

2クールというボリュームのある作品だが、気になる人はぜひ観てみて欲しい。




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