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【2004アニメ】「マリア様がみてる」【アニメレビュー】

(22点)全13話

ある朝、リリアン女学園の高等部に通う1年生・福沢祐巳は、憧れの先輩である「紅薔薇のつぼみ(ロサ・キネンシス・アン・ブゥトン)」こと、2年生の小笠原祥子に「おまちなさい」と呼び止められ、タイの乱れを整えられる。後日、このことをきっかけに、武嶋蔦子と高等部「山百合会」のメンバーがよく訪れる「薔薇の館」を祐巳も訪ねることとなる。TVアニメ「マリア様がみてる」公式サイト

女学園を舞台にした青春学園アニメ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (22点)
完走難易度 超難しい

原作は今野 緒雪先生。

監督はユキヒロ マツシタさん。

制作はスタジオディーン。

姉妹(スール)制度

(C)今野緒雪/集英社・山百合会・テレビ東京

このアニメの舞台となる女学園には「姉妹制度」と呼ばれる制度がある。

きっとこの作品を観たことがない人でも、アニメ好きなら名前くらいは聞いたことがあるのではないだろうか?

「姉妹」と書いて「スール」と読むこの制度は、いわゆる親しい先輩と後輩の間柄で結ぶ姉妹になる「契約」のようなもの。

もちろん1対1の契約なので、そのスールの関係になった2人は、特別に親しい間柄として認知されることになる。

そんなスール制度がある学園を舞台にした物語で、主人公の女の子が次期生徒会役員的なポジションにいる有名人に、スールになるように誘われるというところからストーリーが展開していく。

作品の世界観は少し掴みにくいところがある。一応説明はあるにはあるが、ロサ・キネンシスだとかアンブトゥンだとか、無駄に中二病アニメみたいな横文字が多いので、活字なしだとなかなか飲み込めない。

もっと絵と文字を使って細かく説明するくらいの尺はあっても良かったが、止め絵でサラッと説明されるだけで、正直設定にはついていけない。

さらにいえば1話の展開も少し急だ。主人公がお姉さまと出会ったことで生徒会に目を付けられるところまでは良いが、1話の最後には突発的に発生した「賭け」で主人公は巻き添えを食らう。

主人公からしたら先輩からのスールを断っただけなのに、その「賭け」によって自分がシンデレラの代役を務めることになってしまうリスクを背負うことに。

そもそも大事な劇の主役を1年生に任せることになっても大丈夫なのか。先輩の立場からしても、出会ったばかりの1年生と本当にスールを結びたいと思っているのか。

伏線も含めて色々合点がいかない1話という印象だ。

さらにそこに百合アニメという要素も加わって更に導入を難しくしている。人によっては1話の段階で切る人もいるはずだ。

「ごきげんよう」と絵にかいたような挨拶が飛び交い、友達のこともさん付け、先輩のことは様付け、くだけた言葉遣いも限定的で、さらに1話から早々に「タイが曲がっていてよ」というお約束のセリフまで飛び出す。

多分その「お約束」セリフの起源となったのがこのアニメなのだろうが、元祖百合アニメの破壊力は伊達ではないという感じだ。

女同士の秘密の園。原点にして頂点。百合という言葉に相応しいほどコッテコテの百合アニメで、その癖が人を選んでしまうような作品だ。

3話

(C)今野緒雪/集英社・山百合会・テレビ東京

3話では主人公と2年生のお姉さまが遂にスールを結ぶ。

1話で、生徒会の3年生が主人公を巻き込んだ勝手な賭けを初めたり、主人公をスールに誘った先輩の魂胆が分からずじまいだったりで、色々と不足感があったが全部3話のための布石だ。

2年生のお姉さまが男性恐怖症に向かい合い、その過程で主人公が先輩の助けとなり一緒に乗り越えて劇を成功させることで、2人の信頼関係が構築される。

初めて2人がお互いに「求めあう物」を与えられる関係となる。

最初は先輩がスールを必要としていて、偶然主人公と出会ったことから主人公をスールにしようとしただけで、そこに主人公の意志は存在しなかった。

確かに2年生の先輩は最初から主人公を少なからず気に入っているような描写(普段は他人のタイを直さないが主人公のタイは直した)もあった。同時に主人公もお姉さまに憧れているとはいえ、先輩が一方的に利害を押し付けているような関係にも見えた。

そこから「劇」という1つのイベントに向かっていくうちに、お互いのことを知り、先輩の悩みを知り、一緒に乗り越えることで主人公が見上げるのではなく、対等に近い関係になる。

もし1話の段階でOKをしてしまっていたら、スールという契約が形だけの関係に見えてしまっていただろう。3話にして掴みにくさのあるスール制度が、ようやく身近な存在して認識できるようになる。

微妙

(C)今野緒雪/集英社・山百合会・テレビ東京

素直な感想として「微妙」という言葉しか浮かばないアニメだ。

序盤は主人公が憧れの先輩とスールになる過程で、主人公の優しさだったり、恐怖と戦う先輩の強さだったりが見られて、面白いと感じる瞬間もある。

ただ中盤以降は退屈そのもの。印象の薄いキャラたちが何やらごちゃごちゃやっているという印象しか持てない。

例えば6話で登場するロサカニーナという人物について、分かるのは「敵」ということくらいで、すっかり置き去りにされてしまっている。

さらに6話では立て続けに唐突な生徒会選挙のようなイベントが始まり、何も起きなかったかのようにあっという間に終わる。

そして終わったと思ったら、生徒会役員的なポジションのキャラが「敵」なはずのロサカニーナとキスをしている。ちょっと展開に付いていけない。

基本的に1話でできるようなエピソードも、2話分使って描かれているため冗長している感も否めず、因縁や駆け引きなどのシリアス展開も基本的にないので盛り上がるポイントもない。

逆に生徒会選挙のような盛り上がりそうなイベントの尺が詰められており、どこを見せ場としたいのかもイマイチ分からない。

日常アニメとして評価しようにも、ギャグや可愛さなどのスパイスが皆無で、百合以外の部分は限りなく削ぎ落されてしまっている。

特に演出面でもなるべく百合を軽減しようとか、なるべく面白く見せようとかの工夫はなく、悪い意味で百合を真剣に貫き通してしまっている。

受け手によっては「これぞ」と思うかもしれないが、特に百合に興味がない人からしたら苦行に感じてしまう。

どこかのポイントで予想外の事態に巻き込まれたり、伏線を読み解くようなスリルを楽しめたり。そんなものをつい求めてしまう現代のアニメっ子にはウケない作品、という印象だ。

総評:元祖

(C)今野緒雪/集英社・山百合会・テレビ東京

きっとこのアニメを10年前に観ていたら、また違った感想になっていたのかもしれない。

最近のアニメにすっかり毒されてしまった身からしたら、あまりに浮き沈みに乏しい作品で、非現実感を味わうことができなかった。

アニメ作品として、百合アニメの原点として、確かに人気なのも頷ける瞬間というのはあった。

特に終盤10話でロサ・ギガンティアの3年生の悲しい過去が明らかになったときは、一層彼女のことが好きになったし、美しい愛に感動もした。

ただの百合アニメではなく、女同士が愛し合うに至るまでのバックボーンがあり、それぞれが抱える過去があり。

ただ悲しいかな、それほど感情移入することはできない。確かに美しいと思える感動ストーリーも、キャラに対する愛が伴っていないから感動も半減してしまっている。

どのキャラも芯から愛せるような魅力がほとんどない。魅力を演出するギャップがあるわけでもなく、なかなか「中身」というのが見えづらいキャラばかりだ。

例えば主人公のスールとなるお姉さまにしても、普段からどこかよそよそしく、表情をなかなか崩さず、無愛想で、主人公に対して厳しく接することが多い。

それと相反する優しさもときには見せるが、そんなアメとムチに不思議と魅力を感じない。人間らしい一面が見えないので愛せそうで愛せない。

キャラに魅力を感じられないので、ストーリーから心は離れていく。せっかくの愛する者同士を引き裂こうとする感動ストーリーにも、心の底から入れ込むことはできない。

このアニメの放送から既に16年が経過してしまっている。この間に百合アニメは乱立し、数々の面白いアニメが生まれた。

今どきのアニメに染まってしまった身としては、迫力のあるアクションバトルやミステリー、マリみて系の青春アニメでも、ギャグや独自の演出を求めるようになってしまっている。ようは「刺激」&「より強い非日常感」だ。

だから「マリみて」のような昔の日常系の作品を観ても、驚くほど心に響かない。

ただ、ここまで真剣に百合に向き合うという作品は存在だけで稀有だ。希少価値は高い。

最近の百合アニメは決まってポップなギャグアニメと相場が決まっている。時代が求めていないということだろうか。

作画のクオリティも今と比べたら何段も落ちる。特にキャラデザは濃いめで輪郭や顔のパーツまでくっきり描かれていて、いかにも昔のアニメの絵という感じだ。

キャラ絵は終盤につれて不安定になっており、昔ながらの絵のタッチも相まってなかなか好きになれない。

声優さんの演技は素晴らしい。百合アニメの世界観に合ったおしとやかな声色が耳に優しく、癒しの空間が出来上がっている。

植田佳奈さん、伊藤静さん、佐藤利奈さん、生天目仁美さん、斎藤千和さん、能登麻美子さん、甲斐田裕子さんなど、今でも馴染みの声優さんが主演を務めており、この部分は比較的最近のアニメが好きな人でも入りやすい要素なのではないだろうか。

16年前のアニメに、今でも生き残っている声優さんがたくさん出演しているというのは、それだけで感動ものだ。

作品の印象としては微妙としか言えないが、記憶には残る作品だった。

雑感:3期!?

(C)今野緒雪/集英社・山百合会・テレビ東京

調べたところこのアニメは3期まで放送され、OVAまであるらしい。

きっと真の百合好きにはたまらない作品なのだろう。百合ガチ勢との溝を感じるアニメだった。(笑)

最後に余談だが、マリみての1話を観て思い出したことがある。

主人公のスールとなるキャラを演じている伊藤美紀さんが「タイが曲がっていてよ」と、主人公のタイを直すシーン。

実は「ひぐらしのなく頃に」という作品のOVAでも同じように、CV伊藤美紀さんのキャラが同じセリフを言うシーンがある。

このアニメを観て初めて、そのシーンが「オマージュ」であることに気づいた。ただそれだけの話だ。(笑)

この作品が残した功績は大きい。百合アニメが普及するきっかけとなった作品で、もしかしたら皆が知っているような百合アニメが誕生していなかったかもしれないほど、昨今の百合アニメに大きな影響を与えた作品だ。

ただそんな影響力を持つに至った理由を、私はこのアニメに見つけることができなかった。

当時リアルタイムで観ていたら、斬新な世界観に衝撃を覚えたかもしれない。良くも悪くも、現代のアニメに毒されてしまったことを実感する作品だった。

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