2011年

【2011アニメ】「輪るピングドラム」アニメレビュー





(34点)全24話

高倉家は双子の兄の冠葉と弟の晶馬、体が弱く病気がちな妹の陽毬の3人暮らし。ある日、出かけた先の水族館で陽毬が倒れ、死亡。だが兄弟の悲しみをよそに水族館で買ったペンギン帽子をかぶった陽毬が起き上がり、「ピングドラムを手に入れるのだ」と宣言した・・・。TVアニメ「輪るピンドグラム」公式サイト




「ピングドラム」を巡る青春ラブコメディ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (34点)
完走難易度 超難しい

原作はイクニチャウダー先生。

監督は幾原邦彦さん。

制作はブレインズ・ベース。

ピングドラム

(C)イクニチャウダー/ピングループ

妹を救うため「ピングドラム」という謎の物体を探す兄貴2人を描いたファンタジーコメディ。

兄妹3人仲良く暮らしていたある日、余命を受けた妹が突然死んでしまう。

しかしペンギンの帽子のおかげで蘇り、その代償として謎の生命体から「ピングドラム」という謎の物体を手に入れるように命令される。

不可思議な世界観。ピングドラムとは何で、生存戦略とは何で、ちっこいペンギンの正体が何で、ペンギンの帽子が一体何なのか。

分からないことだらけの1話であると同時に、吸い寄せられるような魔性の魅力を持っている。

ところどころの演出に癖があり、どことなく化物語風な「はみだし」を感じさせる。

死んだはずの妹が復活し、残酷な運命を覆る奇跡が起こり、そこから謎のパラレルワールド的な異世界に転送されたと思ったら、ラストのシーンでまさかの兄から妹へのキス。

小気味よくストーリーが進んでいくテンポ感。思わず先が気になってしまうような伏線の数々。ペンギンが主役となるファンシーな世界観。

全く予想がつかないからこその面白さ。一体どのようなストーリーが展開されていくのか。

ストーカー

(C)イクニチャウダー/ピングループ

ピングドラムのありかを探すことが主題となっている作品ではない。

ダミーかもしれないが、序盤の時点でピングドラムがストーカーキャラが持っている「日記」であることが明らかになる。

その日記には「運命」が記されており、そのストーカー女のお姉さんが書き記したという「未来が分かる日記」だ。

ストーカー女と未来を示す日記。どっかのヤンデレが殺し合いをする作品を連想してしまうが、その作品とは無関係だ。(笑)

そんな日記をなぜペンギンの地球外生命体は欲するのか。運命が分かるというところがポイントになっていそうだが、はっきりとはまだ分からない。

「運命」というところがこの作品ではかなり強調されている。決まった運命は絶対なのか、行動次第で運命は変えられるのか。

ストーカー女は日記に記されている通りに、幼馴染の年上の先生と自分が、最終的に結ばれると信じて疑わない。

その結果、彼のアパートの床下に住みつき、盗聴したり共同生活と言って一緒にご飯を食べたりしている。

だがヤンデレ風なストーカーとは違い、一線を引いている。あくまで日記に従った行動をしているだけで、彼の生活に過干渉したり、彼を無理やり自分のものにしようともしない。

そんなストーカー女が持つピンドグラムを手に入れることが、愛する妹の延命に繋がるため、兄貴2人はそれぞれ違う方法で、何とか兄妹の空間を守るために奮闘する。

方向性ははっきりしている。妹を助けるため。そのためだったら家宅侵入も追跡も奇妙な儀式もトラックに引きずられることも厭わない。

兄妹の絆を強く感じる。弟に関しては「妹を助けるためにストーカー女の恋路をサポートする」という奇妙な状態になっているのが独特で、冷静に考えてみると面白い。(笑)

妹が地球外生命体に身体を乗っ取られて、「生存~戦略~」と言うと急に異世界に転移し、魔法少女が変身するかのような軽快な音楽が流れて、地球外生命体が兄貴2人に指令を出したかと思ったら一方的に退場させられ、最後には「生存戦略しましょうか」という謎のセリフで締められるという一連の下りも、なぜか癖になる。(笑)

独特すぎて癖しかない作品だ。だが本筋となっているのは人間の根本にある「家族愛」であることで、上手くキテレツなところと真面目なところのバランスが取れている。

争奪戦

(C)イクニチャウダー/ピングループ

中盤以降、日記を巡る争奪戦の様相を呈している。

兄2人が妹の命を救うために日記を求めるように、他のキャラクターにも大切な人がいて、その人の命を助けるために日記を求める。

なぜそこまでその日記に価値があるのかは分からない。それがピングドラムなんて呼ばれ方をしているのかも不明だ。

だがそれぞれが家族のために日記を求める。日記は半分ずつに割かれ、2つをどうにか揃えようといろんなキャラクターが競い合う。

序盤は面白い。いまだかつてない世界観とストーリーで否が応でも引き込まれたし、妹との家族団らんやストーカーのお手伝いなど、家庭の温かみもある。

だが中盤以降は冗長している。日記が割れて、日記を奪おうとする第三者が脈絡もなく出現し、日記を求めるに至るサブキャラの過去なんかも明かされる。

新キャラを出して、しっかりとバックボーンを明かすことで作品に自然に溶け込ませる。そういった意図を感じる。

日記を求める真っ当な理由があれば彼らは敵ではなく、やむを得ず日記を求めて争う関係になり、純粋な敵ではなくなる。

だが必要だとも思えない。日記はヒロインが持っていた。そのヒロインともストーカーの手助けをすることで仲良くなり、弟とヒロインは徐々に心の距離を詰めている。

そこからなぜかあらぬ方向に進んでいる。日記が第三者の手に渡り、余計なキャラクターの感情を巻き込んで、無駄にややこしいことになっている。

妹を助けるために日記を入手する。シンプルな目的があったからこそ、複雑でカオスでファンシーな世界観とのバランスが成立している。

だがストーリーまでもが複雑でカオスになっている。特に思い入れのないキャラの感情までも交差し、いつしかピングドラムを入手するという方向性までぼやけてしまっている。

ついには、世界を取り戻すだの、運命の至る場所にいるだの、哲学的なセリフまで飛び出して、置いてけぼりを食らっている。

よくわからないキャラクターが良く分からないままに行動して、良く分からなままストーリーが進んでいる。この良く分からないものが終盤にどう1つにまとまるのか。

総評:結局何?

(C)イクニチャウダー/ピングループ

24話最後までしっかり観た。しかし、結局何がどうなったのか分からないまま終わっている。

私の読解力が乏しいことは確かなのだが、輪郭しか分からない掴みどころのない空気のような作品だった。

妹の死。ペンギンの帽子を被った妹は死から蘇る。そして妹の命を延命する代償として、ペンギンの地球外生命体は「ピングドラム」を要求する。

コンセプトは単純明快。兄貴2人が妹のために健気に頑張る。人間の深いところの感情を呼び起こすには、このあらすじだけで十分事足りる。

だがストーリーに関しては、わざと茨の道を進んで血だらけになりながらも、最後は指先だけがゴールしたといった感じで、シンプルな方向性をあえて無視して、無駄に険しい道を進んだように見えた。

ピングドラムを見つければいい。だがそのピングドラムが何か分からない。だったらその「ピングドラムとは一体何なのか」を明らかにすることから始めるのが定石だろう。

もちろん兄貴2人はピングドラムの正体を気になってはいる。だがそこを明らかにしないまま、とりあえず言われたままに行動し、本当にストーカー少女が持っている「日記」がピングドラムなのかも分からないまま行動している。

この時点で意外性というより道を踏み外している感がある。妹を助けるために兄貴が奮闘するお話から、日記を巡る争いにいつの間にかすり替わっている。

序盤から終盤に近い話数までずっとそうだ。妹の死という運命を防ぐというのが根本にありながら、本当にピングドラムかも分からないのに日記に執心しており、目的と手段が完全に入れ替わっている。

だから違和感が終始付きまとう。難しい言い回しを好む作風からもあまり良い印象は受けない。

中盤の展開は割愛して、12話構成でもゆうにまとめられる作品だ。残念ながら24話分の密度はこの作品にはないと感じる。

それほど凝った伏線も見つけられなかった。序盤から隠されてきた「ピングドラム」の正体が分かったときもフーンで終わっている。

兄妹の愛。この作品が見せたかったものは運命なんてものともしない、愛する妹のために全てを捧げる美しい愛の形。

それは伝わる。だったらなぜ兄貴2人が仲たがいをする必要があるのか。本当の兄妹じゃないとか、兄貴の闇落ち展開とか本当に必要だったのか。

もっと真っすぐ描いて欲しかった。せっかく可愛くて天使のような妹がいて、妹想いの兄貴がいる平和な家庭を描いた作品だったのに、終盤からは急に血生臭くなっているし、遠回しな演出や言い回しがややこしくて、物語に全く入り込めない。

輪郭は分かる。話の大筋とか見せたいテーマとか。だが中身が詰まっていない。

運命の至る場所とか、ピングドラムとか、爆発事件とか、本当の兄妹とか、偽物の兄妹とか、生存戦略とか。観終わった後なのに名前も正体も分からずじまいなキャラクターもいる。

飲み込めないからこその気持ち悪さ。喉元どころか喉仏でつっかえているような不快感。いたずらに複雑にしてしまったことで、作品に入り込むことができなかった。

雑感:難解

(C)イクニチャウダー/ピングループ

もっとシンプルにして欲しかった作品だ。「24話ある」という余裕がこの作品を迷路に誘い込んでしまったのかもしれない。

妹を助けたい兄貴がいる。序盤のようなストーカーの手伝いをする程度の平和なストーリーで十分だった。

徐々に日記を巡る争いに発展し、あれよあれよと思ううちに、兄が犯罪に手を染め、人殺しも厭わないような下衆に成り果てる。

それはそれで「妹のため」という大義名分が成立するが、序盤のほんわかした家庭の風景と見比べたら、あまりの違いに首が折れ曲がってしまう。

もったいない作品だ。このアニメならではの世界観をそのままに、ストーリーを単純明快にしつつ、同じようなラストに繋げることもできたはずだ。

どうやら巷でもこの作品は難しいと言われているらしい。難しくすることで観るものによって答えは散らばるし、そういった感受性を試すような作品は他にもある。

だが一般的なアニメの面白さが感じられなかったことが、この作品の評価を難しくしてしまった。

茨の道にあえて踏み込みたい人にはオススメだ。




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