2020年

【2020アニメ】「無能なナナ」アニメレビュー





(73点)全13話

「わたし、人の心が読めます!でも、ちょっと空気は読めません!よろしくお願いします!」
孤島にある奇妙な学園。生徒、中島ナナオの前にあらわれたのは、
転校生の柊ナナ。
ここは、さまざまな能力を持つ少年少女が集う施設。

炎や氷をあやつる者。自在に宙を飛べる者。空気を刃にして攻撃できる者――。
生徒たちは、「人類の敵」と呼ばれる怪物と戦うために訓練を受けているのだ。
だが、島にはいくつもの秘密が隠され、おそるべき罠が牙をむく。

続発する怪事件。学園にひそむ殺人鬼。一人、また一人と姿を消してゆく同級生。
予想を裏切る展開。知力、能力の限りを尽くした頭脳戦。そして友情。
熱いドラマにいろどられた、「人類の敵」との死闘が、いま、始まる!TVアニメ「無能なナナ」公式サイト




無能力者が能力者を殺していくミステリー&サスペンスアニメ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (73点)
完走難易度 易しい

原作はるーすぼーい先生、古屋 庵先生。

監督は石平信司さん。

制作はブリッジ。

超能力

©るーすぼーい・古屋庵/SQUARE ENIX・「無能なナナ」製作委員会

超能力を使って未知のモンスターを倒すためのエリートを育成するための学校で起こる、波乱の日常を描いたファンタジーアニメ。

無能力者を自称する男の子と、クラスに転校してくる「能力者」の女の子。2人が仲良くなるところから物語は始まっていく。

1話からどんでん返しを食らわせてくる作品だ。

無能力者の男の子が実は「能力を無効化する」という能力を隠し持っており、女の子をピンチから救うときに初お披露目したことで、男の子は念願のクラスのリーダーに就任する。

女の子も男の子がリーダーに相応しいと何度も言っており、2人の信頼関係がこれから出来上がっていく…という流れをぶった切って、1話のラストでなんと女の子が男の子を崖から突き落とす。

一応伏線はある。1話の冒頭のシーンで、転入する学校を見据えた女の子が持つ携帯には「人類の敵を殺せ」的なメッセージが並んでいる。彼女が外部からの刺客であることは密かに明かしている。

とはいえ、気にも留めないような些細なシーンなので、いい感じの雰囲気からの崖ドンは度肝を抜かれた。

楽しませようという制作陣の意気込みはビンビン伝わってくる。無能力者の男の子。心を読むという能力を持つ?ミステリアスな転入生。これから始まる無能力者の逆転劇。

しかし、突然雰囲気をぶち壊してこれから「主人公」になるであろうキャラクターを殺す異質なストーリー。鉄板の設定と全く予想がつかないストーリーの両面を見せている。

駆け引き

©るーすぼーい・古屋庵/SQUARE ENIX・「無能なナナ」製作委員会

超能力を持つ者と持たざる者。両者の駆け引きが見どころとなっている。

刺客として送られてきたナナは無能力者。無能力者が超能力者に上手く取り入り、人類の害である超能力者を殺していく。自分が「暗殺者」であることを気づかれないうちに始末することが絶対の条件。

刺客だとばれてはいけない。「人狼」が紛れていると市民チームに勘付かれてはいけない。

噂が立ってしまうと身動きが取れなくなってしまう。最初から人狼がいると分かっているゲームよりも、ある意味では高難度なミッションだ。

そのミッションに1人、無能力者ながら挑むナナ。彼女は人類の命運を握っている。能力者はその強大な力で人類を滅ぼすだろう、と無能力者の人類から敵視されている。

そしてそのミッションを阻む超能力者側の最大戦力が、同じ時期に転校してくるキョウヤという男の子。

彼は物凄く頭がキレる。あらゆる事象から仮説を立てて「ナナが犯人」という事実に限りなく近づいていく。

当然人狼からしたら頭がキレる市民は一番厄介なプレーヤーだ。だからナナはターゲットをキョウヤに絞っていく。

という感じで、人狼ゲーム的な要素が多分に含まれている作品だ。嘘をついてつかれて。鎌をかけてかけられて。

さらにあらゆる事象や過去の言葉から論理や仮説を組み立て、それが巧妙かつ緊張感あふれる駆け引きを生んでいる。

ナナはもちろんばれないように殺す。しかし言葉で言うほど簡単ではない。絶対に人目につかないように、誰も違和感を持たないように、1人ずつ確実に殺していくにはどうすればいいのか。

ナナは、始末する対象の性格や超能力の欠点までをしっかりあぶり出した上で、いかに自然な死として見せるのか。綿密な作戦の元、暗殺を実行する。

キョウヤは人狼が残した痕跡を辿って真実にたどり着こうと思考に思考を重ねる。

お互いの目的が交差したときに駆け引きが生まれる。その駆け引きがこの作品の見せ場であり、サバイバル的な緊張感がありつつ、犯人を探し出すようなミステリー要素もありつつ、人狼ゲーム的な駆け引きも楽しめるという頭脳派にはたまらないアニメになっている。

だが納得がいかない部分もある。まずキョウヤはすでに数あるヒントから答えにたどり着いているのでは、ということ。

彼が得たヒントですでに「ナナが主人公を殺した」という事実はほぼ確定している。なのにキョウヤは本当に知らないのか知らないフリをしているのか。ナナをどうにかしようという行動が見られず、あまつさえ友達になろうとしている。

彼の行動には違和感がある。妹の死の謎について調べるために島に潜入し、実際に不吉な事件が連続して起こり、外界から断絶されている意味についても理解している様子で、さらに主人公が死んだ日にナナと一緒に帰っているところも目撃していて、主人公が死んだとされる場所で遺品の時計も見つけて、その時計もちょうどナナと主人公が帰った夕方の時刻を指していて、さらにナナがキョウヤを殺そうと仕組んだ不自然な爆発事故で、真っ先に駆け付けたナナを疑ってもいる。

答えにたどり着くカードは十分持っているのに、論理的思考に長けた彼がなぜ答えに辿りつかないのか。明らかにおかしい。

展開を引っ張ろうとしているのか、あえて知らないフリをしているのか、そこまで制作陣の考えが及ばなかったのか。

1話の他を寄せ付けない一匹狼的な立ち位置から一転、友達が欲しいからとナナを家に招く行動にも違和感がある。キレものなのか天然なのか。彼の本質を捉えることができない。

恐らくは証拠がないから詰められないだけだろうが、それでも展開を引っ張っている嫌らしさ、みたいなものは出てしまっている。

変化

©るーすぼーい・古屋庵/SQUARE ENIX・「無能なナナ」製作委員会

序盤から中盤にかけてはどうしても変化に乏しい。

推理一辺倒なところがあり、脳みそを使うという面白さは確かにあるが、モノローグを多用した「駆け引き」というところに寄りかかっているようにも見える。

ナナは自分が殺したとばれないように嘘をつき、キョウヤはナナの嘘を見破るためのヒントを探す。ナナを殺人犯であると疑い、何とかしようと行動しているのはキョウヤしかいない。

中盤に2人ほどナナの正体に気付く能力者がいるが、2人とも自分の欲望に溺れ、彼女を何とかしようとする姿勢を一切示さないまま自滅していった。

彼女を何とかできる人材がキョウヤしかおらず、またそのキョウヤも頭がキレるが決定打に欠ける。ついにナナを追い詰めるシーンもあるが、証拠も用意しないまま推理をして結局頓挫している。

結局キョウヤとナナの化かし合いでしかない。キョウヤがもっと鋭く切り込んでいき、主体的に行動して変化を起こすようなキャラクターだったら、何かしらの進展があったかもしれないが、彼は基本的に事件があってから動く。だから少し頼りない。

せっかく不老不死で無理が利く上に、頭脳明晰という動かしやすいキャラクターにも関わらず、彼が受け身だったことで結局1クールでは分かりやすい変化が起きなかった。

ストーリーを動かすという意味ではキョウヤよりもむしろ、ミチルという女の子の方が「ナナの心に迷いを与える」という意味で重要な役割を担っている。

だが「これから」というところでこのアニメは終わっている。待望の変化もこれでは形無しだ。

故に評価が難しい。ただの推理アニメの域を出ないという印象だ。

総評:濃密

©るーすぼーい・古屋庵/SQUARE ENIX・「無能なナナ」製作委員会

非常に濃密な12話だった。

能力者に紛れ、「心が読める」という能力を持っているという嘘をついて能力者に擬態しつつ、「無能力者」として能力者を暗殺するという使命を帯びた少女・ナナ。

それは人類の命運をかけた暗殺。そしてそれを阻むのは能力者の代表ともいえる「不老不死」の能力を持つキョウヤ。

キョウヤを一番に警戒するナナと、ナナを常に監視するキョウヤ。

2人の駆け引きが楽しめる極上のサスペンス&ミステリーアニメだった。

見れば見るほど人狼ゲームとの共通点は多い。市民の中に紛れ込む人狼。人狼だとばれずに立ちまわりながら、市民と同数になった勝ち。

無能力者だとばれずに上手く能力者に溶け込み、1人ずつ能力者を殺していく。それが彼女の目的。

常に緊張感がある。キョウヤという洞察力・思考力・言語化に長けた最強の敵が自分を常に監視する中で、何とか嘘でアリバイを作りとっさの判断で疑いを回避するナナ。

そのとっさの口上は見事なものだし、作中で何度も嘘をついているのにも関わらず辻褄を合わせられることに、アニメであることを忘れて思わず感動してしまった。

流石にこれは言い逃れできないだろ…という場面でも難なくごまかして見せてしまう。ナナがどんな嘘で回避するのか、という期待感が常にある。

だが反対に、少し能力者側が非力なように映るのが残念ではある。キョウヤは確かに切れ者だがどこは平和ボケしている感もある。

「友達を作りたい」などとのんきなことを言っているし、肝心なところであまり活躍してくれない。

思考力とそれを言葉にする力は確かなものがあるが、1期では結局ナナが連続殺人の犯人である確固たる証拠を掴めていない。

もう一押しのところまで辿りつくのだが、ことごとくナナにひらひらと交わされ、結局一方的な疑惑で終わってしまう。

分岐点になりそうなシーンは何度かあるが、いかんせん「証拠」がない。自分でもいくつか考えてみたが確かにない。

1話の崖から突き落とし。溺死。また突き落とし。毒殺。ナナは証拠の残らないような殺し方をしている。

「完全犯罪vs推理力お化け」という構図は確かに面白い。しかし2人の関係に変化をもたらす決定打がなかったことで、終始物足りなさがあったことは事実だ。

いわば2人だけの世界にしかなっていない。ナナが殺す。キョウヤが疑う。ナナが上手く嘘をついて罪を免れる。その流れでしかない。

どこかで劇的に変化することも期待しながら観ていたが、結局2人の関係は平行線のまま終わっている。そこらへんは2期に期待ということだろう。

終盤の流れを見ても2期を期待してしまう。ナナ以外の殺人犯。初めてナナが心を許した相手。ナナが能力者側に肩入れするというきっかけが描かれている。

しかし終わり方は中途半端で気持ちが悪い。「この涙はどこに持っていけばいい?」という感じで終わっている。

思うに2クール作品だったら、あるいはもう1,2話くらいの尺があれば、間違いなく高評価の作品になっている。

「ここからどうなるの?」というところで終わっているし、本筋の事件は何も解決していない。

中身は面白いがある種の「決着」が観られないことで、評価の難しい作品になっている。

作画は良いし、声優さんの演技も素晴らしい。

大久保瑠美さんがメインを務められるのは果たしていつぶりだろうか。久しぶりにお声を聞くことができて嬉しかったし、安易に最近売れている定番声優に逃げなくて良かったと思っている。

ナナの二重人格をうまく演じておられたし、感情の起伏が激しいという難しいキャラを見事にやり切っている。

惜しむらくは本当に「決着」の部分だけだ。完全解決とはいかないまでも部分的に、何かしらの区切りやどんでん返しでもあれば、1期でも十分に評価できるのだが、残念だ。

雑感:もう1歩

©るーすぼーい・古屋庵/SQUARE ENIX・「無能なナナ」製作委員会

1クールのアニメとして評価するならもう一歩という作品だ。

中身は面白い。推理あり。サスペンスあり。超能力あり。常にピンと糸が張っている状態で片時も目が離せないスリル満点の作品だ。

だがストーリーがやや一辺倒のまま終わってしまっている。終盤に明らかな変化をもたらすストーリーがあるが、あれが中盤あたりならまた違った結末を迎えただろう。

だが最終盤にずれ込んだことで「結局どうなったの?」という不足感のまま終わっている。

身も蓋もないが、結局は殺して→疑って→でもごまかして、という流れが続いているだけだ。

せっかく大枠の世界観やキャラクター性などには魅力を感じるのに、非常にもったいない作品だ。

例えるならあと技を1つ決めれば完璧なのに、最後の最後でミスをしてしまった体操選手を見ている観客の気持ちだ。(笑)

アニメ作品としてオススメしづらい作品になっている。

だが濃密なミステリーや推理が楽しめる作品なので、キャラクターのセリフやモノローグを聞いて自分なりの矛盾点を探したり、ナナを断罪するための証拠を探したりなど、とにかく考えることが大好きな頭脳派にはぜひともオススメしたい作品だ。

最後に、終盤に登場するナナの師匠と思われる鶴岡という人物の声を、藤原啓治さんが担当されている。恐らく彼の遺作ということになるだろうか。

まさか2020年にこうしてお声を聞けるとは思っていなかったので思わず驚きで声が出てしまい、何度も聞き直してしまった。

出番はそれほどなかったが、一発で藤原さんと分かるお声は唯一無二。改めて亡くなられたことが残念で仕方がない。




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