2021年

【2021アニメ】「俺だけ入れる隠しダンジョン」アニメレビュー





(14点)全12話

稀少なアイテムが隠され、世にも珍しい魔物がはびこる、前人未踏にして到達不可能なダンジョン――「隠しダンジョン」。幸運にもその扉を開いたのは、貧乏貴族の三男ノル・スタルジアだった。迷宮内に囚われた伝説の冒険者オリヴィア・サーヴァントに出会い、ノルは強力な三つのスキルを授かる。スキルを自由に作れる【創作】スキルを与えられる【付与】スキルを改変できる【編集】ただし、使用するには「LP」と呼ばれる生命力を使用しなければならなかった。〈性欲〉〈食欲〉〈物欲〉を満たしてLPを高め、「世界最強」のスキルを使いこなせ!TVアニメ「俺だけ入れる隠しダンジョン」公式サイト




隠しダンジョンを探索して最強を目指すバトルファンタジーアニメ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (14点)
完走難易度 普通

原作は瀬戸メグル先生。

監督は大西健太さん。

制作はオクルトノボル。

二転三転

©瀬戸メグル・講談社/俺だけ入れる製作委員会

作品の紹介となる大切な1話。昔まではよく「3話までが区切り」と言われてきたものだが、昨今では1話で判断する人も多いと聞く。

それは当然で、1話で全く面白くない作品を12話まで観ようとは思わない。人間誰でも気に入らないことに時間をかけることはしない。

残念ながらこの作品は「12話まで観よう」という気持ちにさせてくれない。

1話から展開が二転三転している。

まず冒頭で、主人公は司書の仕事を子爵家の横やりによって失うところから始まる。主人公の家は準男爵家で子爵は当然上の階級になる。まんま貴族社会のしがらみが残っている世界だ。

その後、司書になって仕事をすることを諦め、妹のススメで「英雄学校」という冒険者の学校に入るための試験を受けることを決意した主人公。

なるほど。「司書にはなれなかったけど、英雄学校に入って修行をして強くなり、ダンジョンに潜る冒険者になるのだな」と100人いれば99人がそう信じるような展開で、なんと主人公はそこでタイトルにもある「隠しダンジョン」に潜ることになる。

その前に主人公は、道端で出会った幼馴染ヒロインと突然大人のディープなキスをしており、もちろん理由はあるのだが、1話で初登場したばかりのヒロインとイチャコラする絵面は不自然極まりない。(笑)

そのシーンの後に、隠しダンジョンにこっそり潜った主人公は、200年前に捕らえられた女神と思しき人物と出会い、彼女が師匠となり、いろいろな情報を得ることになる。

LP、つまりRPGでいうところのMPの存在と、その補充の仕方を知った主人公は、早速幼馴染にハグをすることで「性欲」を満たし、LPを回復させている。

いわば、幼馴染を一方的にLPを回復させるための道具として使ったという捉え方ができてしまう。幼馴染は何も事情は知らずに、純粋に「ハグしよう」と言われて喜んでしたのに、その裏では主人公の打算的な思惑がある。雰囲気もへったくれもあったもんじゃない。

さらに、そこから英雄学校に入るための試験が始まり、準男爵と舐められていた主人公が最終的に最も優秀な成績を収めて、見事に幼馴染と一緒に入学することになる。

ここまでの一連の流れが、全部1話25分という尺にぎゅうぎゅう詰めになっている。

正直二転三転して何をしたいのかが良く分からなくなっている。スカスカもだめだがギュウギュウもだめだ。

「司書になれなかった」のがどこに繋がるのかが分からないし、その後、道端で偶然出会ったヒロインとキスする流れになるのも意味不明だし、隠しダンジョンに入ったばかりになのに、早速超格上のモンスターを倒してしまうのもおかしい。

1話でありながら過程の始まりではなく、過程ですらなく、最後の「結果」をドンと自信満々に打ち出している稀有な作品だ。

即興で考えたような大味なストーリー。のりでくっつけたような髪。1話から艶めかしさ全開で演技をするヒロイン役の富田美憂さん。

これまた癖のある作品が始まったな、というのが1話の感想だ。もちろん嫌いではない。(笑)

ヤバイ

©瀬戸メグル・講談社/俺だけ入れる製作委員会

どれだけこの作品がヤバイかは前述の通りだが、主人公のヤバさも相当なものだ。

この作品はいわゆる「ハーレムもの」であり、主人公は両手に花。可愛くて気立てのいい幼馴染だけではなく、ギルドの受付嬢までたらしこむ。

そのうえ、ヒロイン2人の喧嘩を仲裁する際に2人の肩を持ち、感謝を示す発言をしておきながら、2話の最後には「全部師匠のおかげだ」とか言っちゃっている。

恩知らずで矛盾だらけという軽薄なキャラクターになってしまっている。こういったハーレムもので、主人公にモテるだけの理由がないと、素直に応援する気持ちになれない。

受付嬢はまだしも、ヒロインの方はキスやハグをして頭痛を和らげる役割を担ったり、主人公を戦場で守ったり、「耳を噛んでいいか」と主人公に訊かれたときも快諾するなど、「主人公のために」となんでもしてくれる健気な女の子だ。

そんな女の子を差し置いて、しかもその女の子とキスやハグをしておいて、その場にいない「師匠が全て」とか言えちゃうのは、もはやサイコパスだ。

2話にして、最低最悪の主人公像が出来上がりつつある。努力せずに成功。理由もないのにモテる。モテているくせに他の女性のことばかり考えている。

加えて、主人公がLPを貯めるときは必ずと言っていい程「性欲」を満たそうとする。「食欲」と「物欲」という手段があるにも関わらずだ。

ラッキースケベが自動的に起こるようなスキルを付与することで、LPを荒稼ぎするようなせこくて下衆な手段を講じてもいる。

邪な手段のくせに「公爵家のご令嬢の命を助ける」という目的だけは一丁前だ。姫様の命を救うためにラッキースケベに興じる主人公。ヤバイとしか言いようがない。

「転倒したらスライムだった件」と某大人気作品のタイトルまで拝借して、盛大に滑り散らかしているのも救いようがない。苦し紛れのパロディに逃げ始めたらそれこそ終了だ。

欲を満たしたらLPが回復するという設定もありきたりで、エロでパワーが溜まるような同系統の作品は結構あるから、世界観や設定に真新しさはないし、唯一観るべきところがあるとすれば、ヒロインが可愛くて、主人公に一途に尽くすことくらいだ。

手段と目的

©瀬戸メグル・講談社/俺だけ入れる製作委員会

だいたいの行動には目的があり、その行動が目的を達成するための手段となる。

ちゃんとした目的があって、ちゃんとした手段でそれを達成すれば人は心を揺さぶられ、大いに共感することができる。炭次郎は妹を人間に戻すという目的があり、それを達成するために命がけで鬼と戦うから涙を誘う。

このアニメでは、その目的と手段がおかしなことになっている。

主人公の目的はちゃんとしている。LPを貯めることで死の呪いがかかっている女の子を助けようとする。自分を準男爵だと馬鹿にしなかった女の子の恩に報いるために、呪いの解除方法を思案する。

そして、目的を達成するためにはやはり「LP」が必要…かと思いきや、シンプルにお金で解決できることが判明する。「LPじゃないんかい!!!」と強烈なツッコミが思わず入ってずっこけてしまうほどの展開だ。(笑)

それは一旦置きたくないが、置いておこう。さらに、そのお金を集めるための手段がとんでもない。それは中盤あたりで行われる「ハーレム自慢大会」という謎の催しだ。

文字通りハーレムを自慢するためにカップルが出場し、非リアの観客が好き勝手に野次を飛ばすという大会なのだが、それがいろんな意味で酷いものになっている。

モテない男どもが、スタンドから一斉に出場者に罵詈雑言を浴びせる。それは身体的特徴をあげつらうような非人道的なヤジも含まれており、シンプルに観ていて気持ちが悪い。

例えアニメのキャラクターだとしても、外見でああだこうだ好き勝手に言われて悲しむという絵面は許されるべきではない。

そもそもハーレム自慢大会とは何なのか。(笑) ギャグでやっているとしてもツッコミがいないから、暴走列車のごとく真面目に突っ走っている。

大取りで登場したヒロインたちは、「外見が可愛くて魅力的だから」という理由で逆に賛辞を浴び、優勝して賞金まで得ている。その賞金が姫様の呪いを解くためのラストピースとなる。

目的は崇高なのに手段が最悪だ。貧しい人々のために盗みを行う義賊とも違う。盗みが目的を達成するための必要な犠牲であるのに対し、ハーレム自慢大会はハーレムを見せつけて、観客が好き勝手言うだけの方向性の欠片もない、実に中身のない大会だ。

もう少し何とかならなかったのか。「冒険でお金を得る」とか、「主人公が命をかけて強力なモンスターに挑んで、呪いを解くためのアイテムを入手する」とかではダメだったのか。

鉄板でもいいじゃないか。どうにも鉄板を嫌う割にノープランで突っ込んでいくような無鉄砲さしか感じられないストーリーになっている。

総評:性欲お化け

©瀬戸メグル・講談社/俺だけ入れる製作委員会

絵にかいたようなハーレムアニメ。しかし主人公にハーレムを謳歌する資格のないパターンの作品だ。

ハーレムやラブコメの主人公は、モテるだけの説得力のある理由がないと、途端に視聴者の心は離れていく。ただでさえ、ハーレム主人公は厳しい視線にさらされる立場にある。(笑)

この作品の主人公は性欲でLPを貯める。LPを貯めることで相手の攻撃を無効化したり、体重を重くしたり相手の強みを消したりと、師匠からもらった固有スキルを応用して上手くバトルで立ち回る。

それ自体はいい。ただ相手の強さを上回るだけではないバトルの深みが感じられるシーンもそこそこあり、そこにこだわりを感じることもできる。

だがその手段が性欲となると、どうにも気持ちが乗らない。主人公はピンチになったりLPが空に近づくと、必ずと言っていい程「性欲」を満たすことでLPを回復させようとする。

ヒロインとハグをしたりキスをしたり。真剣なバトルの途中でそんな気の抜けるようなお色気シーンが始まるもんだから、バトルに集中できないし、ふざける分バトルの意味合いも軽くなる。

当人たちは真面目にお色気をやっているのだろうが、バトルで大切な「雰囲気」が全く作られていない。ピンチになってキスやハグでLPを回復して逆転勝ちする。この予定調和でしかない。

そもそもタイトルにもある「隠しダンジョン」の存在意義もよく分からない。この作品にとっての悪い意味での「近道」にしかなっていないからだ。

困ったら隠しダンジョンにいる師匠に会いに行き、アドバイスをもらう。師匠のアドバイスのおかげで困難を乗り切る。

主人公は自分の力で困難を乗り切ったり、努力で道を切り開くべき存在だ。それなのに何かあるごとに師匠の元に行き、アドバイスを求める。母離れできない子供のようだ。

そもそもいろいろと詰め込みすぎだ。ハーレムをやりたいのか、シリアスなバトルをやりたいのか、人情をやりたいのか、セクシーをやりたいのか、ギャグをやりたいのか、冒険譚をやりたいのか、主人公最強をやりたいのか。

設定をぎゅうぎゅう詰めにしているから、結果的にどれも中途半端になっている。12話という尺の限界を考えると、1つとは言わないまでも、2つ3つまでに絞り、王道でもいいから真正面からぶつかるべきだった、と個人的には思う。

途中で出会うドルイドの女の子や、ライオンなど、使い捨てのような扱いを受けるキャラも多く、いろんなことに手を伸ばした結果、どれも薄味のストーリーにしかなっていない。

途中にあるハーレム自慢大会や受付嬢ランキングなどは迷走の典型だ。無駄なイベントに尺を費やした上に大したオチもない。

同じようなアニメで思い出されるのは、ちょうど1年前の「異種族レビュアーズ」だが、同じゲスアニメでも、レビュアーズの方は「受付嬢をレビューする」という一本の線が通っていた。

だがこの作品には何もない。何も残らない。結局何をやりたいのか何を伝えたいのか。

制作陣はやりたいことを全て詰め込めて満足かもしれないが、受け手は何も得ることができない悲しい作品だ。

結局ヒロインレースもうやむやで、お決まりのハーレムEND。主人公は自分を一途に思う正ヒロインがいながら、師匠のことばかり頼って、師匠に一番の恩を感じて、最後も師匠の胸で満足そうに笑っている。

一番健気で一番可愛いヒロインが損をする。しかも、そんな鬼畜の所業をしているのが性欲お化けの主人公。絶望的だ。

作画のレベルもお察しで、おそらく大きな期待の元、たくさんのお金をつぎ込んで作られた作品ではない。

それでも、作画がダメでも、他の部分でどうにか補填することは出来る。それさえもできなかった悲しい作品だった。

雑感:もったいない

©瀬戸メグル・講談社/俺だけ入れる製作委員会

典型的な王道ハーレムアニメ。見てくれは「男」としてそそられるものがある。

可愛いヒロインがいて可愛い妹がいて、次々と困っている女の子を助けては、たらしこむ。男の夢が詰まっている。

だが中身があまりに残念だ。主人公はハーレムに値しない甲斐性無しのキス魔で、師匠がいないと何もできない子供。

そんな主人公がモテまくっても違和感しかない。そして自動的に、ヒロイン全員が尻軽になり下がることになる。

ハーレムアニメの負のスパイラル。材料は最高級だが、肝心の料理をするシェフに腕が無かった。

個人的には音泉のラジオを毎週聞いて、アニメを観るのを楽しみにしていた。パーソナリティーの3人も楽しそうにアニメについて語っているし、企画も面白かった。

ED詐欺も重罪だ。EDでは主人公と幼馴染をはじめ、各ヒロインとの優しい時間が、コアラモードさんの優しい歌声に乗せて流れる。

そのシーンをアニメでなぜやらない?特に幼馴染との過去や馴れ初めを深く掘り下げれば、間違いなく主人公への評価も改められるだろうし、ハーレムアニメとしても張り合いが出たかもしれない。

つくづくもったいない。興味がある人は観て欲しい。




COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です