(42点)全12話
取り壊しの危機に瀕するネズミ荘を救うため、 芸能界のおちこぼれ達がアイドル活動に七転び八起き!? TVアニメ「おちこぼれフルーツタルト」公式サイト
アイドルを目指す高校生の青春を描いたアニメ
ストーリー | |
作画 | |
面白い | |
総合評価 | (42点) |
完走難易度 | 普通 |
原作は浜弓場 双先生。
監督は川口敬一郎さん。
制作はfeel.。
アイドル
©浜弓場 双・芳文社/おちこぼれフルーツタルト製作委員会
落ちこぼれのタレントたちがアイドルユニットとして這い上がっていく物語。
主人公はアイドルを目指すため上京してきた高校生。新しく入った寮で、同じく駆け出しのタレントたちとアイドルユニットを組んで、様々な活動をして売り込んでいく。
落ちこぼれから売れっ子へ。アイドルアニメの王道を突っ走る作品だ。「私〇〇〇!高校1年生!」という元気な語りから始まる感じも、いかにもというアイドルアニメだ。
アイドルアニメのきらきらした部分だけではなく、この作品は他のアイドルアニメのほとんどがそうであるように、どん底からのスタートというところを重要視している。
売れてない女優、売れてないミュージシャン、売れてないモデル。寮は東京とはいえ区外の小さな一軒家。
思い描いていたアイドルではない。「理想はきらきらしたアイドル生活だけど、現実は甘くないな…」というギャップを描いている。
売れていない状態から徐々に有名になっていく。まだ1話の時点なのでどう転がっていくかは分からないが、十中八九売れていくのだろう。
みんなで仲良く協力して今できることを精一杯やる。その姿は確かに青春そのものだ。
だが簡単に売れていくのは、たとえアニメでも違和感がある。恐らくこれは簡単に売れていく作品だ。1話を観た限りにはなるが、キャッキャウフフ楽しくアイドル活動を頑張る。ここが軸になっている。
「アイドルの世界は弱肉強食」という一般的な価値観からはどうしても開きがある。
もちろん私からしても、アイドルの綺麗な部分しか描いていないやん、というツッコミが思わず出るほどの緩さだ。
さらにそれぞれのキャラの自己紹介パートで、引っ込み思案とか非協力的だとか、なぜかマイナス面を最初に強調しておきながら、そのマイナス面が全く見られない。
引っ込み思案な女の子はモデルを本業にしているのだが、引っ込み思案で自分を表現することができない女の子に務まるだろうか…疑問だ。
今後その性格を表すシーンは出てくるのだろうが、そもそも最初にマイナス面から入るのは意味不明だし、引っ込み思案なのに普通に人前で笑顔だしチラシ配れるし、非協力的なのに主人公が学校に馴染めるように協力してるしで、いきなり矛盾だらけだ。
恐らくとことんキャラを守ろうとか、マイナス面がプラスに変わるためのシリアスをやろうとか、そこまでのストーリーを最初から考えていない。
アイドルアニメの皮を被った日常アニメという印象だ。きらら原作なので自ずとこういう方向性にはなるのだろう。
日常
©浜弓場 双・芳文社/おちこぼれフルーツタルト製作委員会
アイドルアニメではなく一般的な日常アニメとして観るべき作品だ。
アイドルアニメではあるがアイドルをしているだけで、その実、女の子が集まって仲良く活動するというところが焦点になっている。
シリアスとはとことん無縁だ。壮絶な過去を持っているキャラもいないし、コンプレックスをとことん根に持つキャラもいないし、挫折や葛藤ももちろんない。
衣食住はしっかりしているし、気付けば歌が完成していて、突然ダンス付きで路上ライブが始まるし、自作とはいえ2話にしてCDデビューまでしている。3話ではもうライブだ。
トントン拍子と言っていいだろう。アイドルアニメ特有のサクセスストーリーはない。
個性もあるようでない。マイナス面の特徴をあえて挙げてはいるものの、そのどれもしっくりこない。性格と行動が一致していない。
だがこの作品はそれでいい。何も悪くない。アイドルをする可愛い女の子は間違いなく可愛い。バックボーンなどなくても良い。
ちっこいツンデレ先輩は、キャストさんの声色とか演技も全部ひっくるめて可愛いのは間違いないし、女の子が抱き合ったり一緒に寝たりして百合百合なシーンも眼福だ。
作画のレベルも高く、キャラクターの可愛さを余すところなく表現しきっている。多分だがダンスシーンもCGを一切使っていない。
だが終始胸のつかえがとれない作品だ。「おちこぼれ」というタイトルな割に、元気にパワフルに前向きにやってんな、と誰もが不思議に思うはずだ。
危ない橋
©浜弓場 双・芳文社/おちこぼれフルーツタルト製作委員会
きらら系にしては結構際どいラインを攻めている作品だ。
登場人物は当たり前のように女の子しか出てこない。その女の子同士の百合シーンが当たり前のようにある。
そこまで苛烈ではないが、抱き合ったりキスしようとしたり、胸を揉みしだいたり、ストーカーまがいのことを無自覚にしてしまうキャラなんかもいる。
スキンシップがかなり多めだ。胸や脚がエロいだどうだのと、リアルの女子同士がしそうな生っぽいやり取りをするシーンも結構多い。
この手のアニメに似つかわしくないセクシーな要素も入っている。お花を摘むシーンだったりパンチラだったり、カップがどうとか勝負下着がどうとか。
百合もかなり強調されている。ただ百合自体を見せたいというわけではなく、あくまで可愛いの延長線上に百合があるという感じだ。
個人的にはギャグの範疇で楽しめてはいるので大丈夫なのだが、いろんな界隈が騒がしくなるような際どさもある。
ガッツリとエロスも交じっていたり、百合が強調されていたり、きらら系の日常アニメにしてはかなり攻めている作品だ。
総評:攻め
©浜弓場 双・芳文社/おちこぼれフルーツタルト製作委員会
きらら史上最も攻めている作品の1つ。そう表現しても差し支えない。
アイドルとして頑張るという世界観はありふれている。だがアイドルが全員謎にボッチという設定で、日常シーンばかりなのに出世街道まっしぐらで、セクシーな要素もありありな作品は他にはきっとない。(笑)
他のアイドルアニメやきらら系のアニメでも、お花摘みのシーンを何度も挿し込むアニメは稀なはずだ。(笑)
攻めているが評価はしづらい。闇鍋のようなカオスな作品だ。綺麗にまとまっている印象はない。
ボッチ設定にした意図は全く感じないし、非協力的だとか引っ込み思案だとか最初に紹介された性格もとって付けたようなもので、その性格が災いすることもプラスに働くこともない。
ノリで作ったような軽ささえ感じる。アイドルと下ネタに近いようなセクシー要素は明らかに不釣り合いだし、キャラのやり取りもうっすうすだし、うっすうすな癖にたまにいい感じの雰囲気で「アイドルとしてのノウハウ」的な真面目なシーンが入る。
どのあたりが「落ちこぼれ」なのかも最後まで分からない。ロコ先輩はまだしも、他のモデルといいミュージシャンといい、「本当に落ちこぼれてるんですか?」と疑問に思ってしまうほど、落ちこぼれている感がまるでない。
至って普通のレベルの衣食住で、誰とも仲たがいや衝突をすることなく、プライドがあるわけでもなく、そもそもアイドルと真剣に向き合うようなシーンもなく、一足飛びで次々とステージを拡大させていく。
このアニメをなんと表現すればいいのだろう。バチッと一言で言えないということは、それだけこの作品のまとまりがないということだ。
決してつまらないわけでもない。可愛いはある意味で面白いという言葉にも変換できるし、女の子同士のスキンシップが多く、劣情を隠さないような際どいシーンも、ギリギリで笑いになっているから気にはならない。
だがやはり腑に落ちない。アイドルなのに健気さが微塵もない。努力もない。不必要なセクシーだけは盛りだくさん。
アニメの中身は特に記憶に残らないが、「こういうアニメもあったな」と違う意味で記憶に残るタイプのアニメだ。(笑)
雑感:爆弾
©浜弓場 双・芳文社/おちこぼれフルーツタルト製作委員会
きららの常識を明らかに壊しにきた作品だ。(笑)
「がっこうぐらし!」の衝撃を超えることは多分これからもないが、それに次ぐくらいの衝撃はあった。
セクシーで攻めまくる。エロときららがまさか奇跡の出会いを果たすなんて…水と油だと思っているところに、勇敢に切り込んでいったこの作品には称賛を送りたい。(笑)
だが残念ながら水と油が混ざり合うことはなかった。(笑) エロによって「きらららしさ」みたいなものは消えてしまっている。
もしかしたらその「らしさ」自体がもう幻想みたいなものかもしれないが、純粋さとか青春とかギャグとか絆とか夢とか百合とか、そういった要素が強調されることなく、中途半端にアイドルをやって中途半端にエロをやるという何とも言えない作品になってしまっている。
やるならそれこそ「きららをぶっ壊す!」くらいの勢いでやって欲しかったが、ブレーキを踏んでギリギリ衝突は免れた感が煮え切らない。
ただ印象には残る作品だった。興味がある人は是非観て欲しい。