2018年

【2018アニメ映画】「ペンギン・ハイウェイ」アニメレビュー





(58点)

小学4年生の男子・アオヤマの住む街で、ある日突然、ペンギンの群れが出現する怪事が起こり始めた。ペンギンの正体と彼らの目指す先について「ペンギン・ハイウェイ研究」を始めたアオヤマは、顔なじみの歯科医院のお姉さんがペンギンを出現させる瞬間を目撃する。だが、なぜペンギンを出せるのかは、お姉さん自身にも分かっていなかった。

ペンギンの出現法則を解明しようとお姉さんと実験する一方、アオヤマは友人の男子・ウチダ、同じクラスの女子・ハマモトとの3人で、ハマモトが発見した森の奥の草原に浮かぶ謎の球体〈海〉についての共同研究を始める。やがてアオヤマは、〈海〉とペンギンとお姉さんの奇妙な関連性に気づく。映画「ペンギン・ハイウェイ」公式サイト




アオヤマとお姉さんの一夏の思い出を描いた青春アニメ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (58点)
完走難易度 普通

原作は森見登美彦先生。

監督は石田祐康さん。

制作はスタジオコロリド。

ペンギン

©2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

主人公の小学生が住む町に、突如ペンギンが現れるところから物語は始まる。

南極に生息しているはずのペンギンがどうして片田舎にいるのか。その謎に普通の小学生とは思えないほど探求心旺盛で賢い小学生が挑む。

そして、主人公の相棒となるのが面倒見の良い歯科助手のお姉さん。彼女が主人公の良き理解者となり、彼女の助けも得ながら、友達と一緒にペンギンの謎に迫るというのが本筋になっている。

主人公は自分が知らないことを調べて知ろうとする。豊富な知識を持っている主人公だが、お姉さんのおっぱいについてもご執心で「おっぱい幾何学」という何とも興味がそそられるテーマで独自に論文をまとめたりしている。(笑)

本当に小学生だろうか。いろんな意味でませている少年だ。(笑)

「物体としては同じおっぱいのはずなのに、母とお姉さんでは違う印象を受ける」といった自分なりのおっぱいに対する見解を友達に披露する主人公。そんな小学生がいてはたまらない。(笑)

真面目な一面と年頃の男の子な一面。そのギャップがなんとも愛らしい。

お姉さんとの勝手知ったるやり取りとか、おっぱいをマジマジと観察していることが普通にバレていたりとか、お姉さんのオープンな感じも2人の関係性をより近いものにしている。

ペンギンが一体どう絡んでくるかは序盤の段階では謎だが、少年とお姉さんの一夏の思い出。それだけでいろいろと妄想を掻き立てられてしまう作品だ。

少年から大人へ

©2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

主人公は小学4年生の男の子。少年。

その少年が大人へと変わる一夏の出来事。お姉さんのペンギンを生み出す不思議な能力。

その能力を間近で目撃した少年は、お姉さんの摩訶不思議な力に探求心を刺激され、そのファンタジーな力を何とか解明しようと、新しいことにチャレンジをするようになる。

彼は普通の小学生とは別の次元で生きている。探求心・表現力・思考力。あまりに小学生離れしている。私は立派な大人だがどこで戦っても彼に勝てる気がしない。(笑)

そんなませた小学生をお姉さんは「賢い」と褒めることはしない。常に「君はまだ子供でしょ」と少し突き放すような言い方をする。

お姉さんからすればどんなに探究心が旺盛でも、大人よりも知識があっても、ランドセルを背負って学校に行っている限りは子供なのだろう。

どこまでが少年でどこからが大人なのか。年齢なのか、知識なのか、見た目なのか。そんな他愛のないことを考えさせられる。

少年はお姉さんのことが多分好きだ。「付き合っている」という一方的な表現を使っているところからも、お姉さんのおっぱいについて興味津々なのも「お姉さん」だからこそだろう。

年上の大人の女性が好きになる。やっぱりませた少年だ。(笑)

そんな大人の女性に心を惹かれ、純粋な探求心とは別に、年齢以外で何とか「大人」に追いつこうと、必死に知識を吸収しているのではないだろうか。

そう思うと何とも健気な恋心だ。もちろん表情にも言葉にも出さない。しかし少年の少年らしからぬ言動や探求心は「恋心」から来ると思えば妙に納得がいく。まさに青春だ。

埋められない「年齢」という距離をできるだけ詰めるべく、不可思議なお姉さんのペンギンを生み出す能力を解明するために奮闘する。

真っ向からぶつかる恋愛ではなく、ペンギンを媒体にした間接的な恋愛。これはこれで味がある。

©2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

お姉さんのペンギンの謎を解明する上で大きな転換点になるのが「海」の発見だ。

海といっても一般的な海ではなく、大草原の中心にポツンと佇む水の球体のこと。

その海をクラスメイトと調べていくうちに、徐々に海とペンギンと、そして突如として起こる異変などを通して、海との関連性やお姉さんの正体に近づいていく。

少年はお姉さんを守るために行動する。ペンギンを生み出す能力が研究者に知れたら実験のための道具にされてしまう。それを恐れた少年は、ペンギンや海の秘密を口外しないことを誓う。

しかし秘密が思わぬところから漏れる。秘密が研究者に露呈してしまい、ストーリーも転換点を迎える。

主人公のことが好きで一緒に海の研究をする女の子。その女の子は「主人公と」研究をすることに価値を見出しており、主人公がお姉さんのことを一番に大切に思う姿に嫉妬して、「お姉さんの身の安全を保障するために研究をやめるべき」という主人公と「主人公との居場所でもある研究をやめたくない」という女の子で意見が対立するシーンも。

甘酸っぱい恋愛模様も青春アニメならではという感じだ。直接的には描かれない。告白するとか手を繋ぐとか、恋のライバルが登場するとか、ラブコメでよくあるようなイベントもない。

だがそれがリアルだ。小学生ならなおさら自分の本心を隠そうとする。たとえ異性に好意を持っているとしても、その思いを正直に告げることは大人でも難しいことだ。

付かず離れずの関係。主人公と女の子。主人公とお姉さん。

どちらもはっきりと言葉で定義することはできない。だがその関係性がリアルで、もどかしくもあり、愛しくもある。

しかし、はっきり描写せずにボカすのを良しとしている雰囲気も同時に感じる。

目に見える事象や形に残る変化を描かずに、あくまで視聴者の想像に委ねる。そういったスタンスも垣間見える。

だが想像を掻き立てられるほどの深さも正直感じない。何か大きな1つのテーマがあり、それを伝えようという熱意も感じない。

主人公の内面でどういう変化が起こり、主人公はどう行動を起こして、行動の結果どうなるのか。

全体的にフワッとしていてつかみどころがない作品だ。

総評:つかみどころがない

©2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

イマイチ説得力に欠ける作品だった。

作画はスタジオコロリドなので素晴らしいのは当たり前。青春アニメに相応しいコロコロと変わる天気模様や、光輝く美しい自然の風景。全てが少年の一夏の青春を見事に演出している。

だが個人的には統一されたテーマというのを感じにくく、武器となるテーマやコンセプトを見つけることができずに終わってしまった感じだ。

大人になろうと一生懸命勉強し、実験を繰り返す少年。お姉さんのおっぱいにも興味津々な年ごろの男の子。

突如町中に現れるペンギン。お姉さんのペンギンを生み出す能力。海の存在。世界の果て。お姉さんを疎ましく思うクラスメイトの女の子。

終盤の怒涛の展開にも疑問符が付く。「どうしてそうなった?結局何が言いたいんだ?」という事象やセリフが多く、最終的に何を一番伝えたいのかが残らないアニメになってしまっている。

総じてインパクトが薄い。主人公が少年から大人になる過程を描きたいなら、何かしら形に残るシーンが欲しかった。

ブラックコーヒーを我慢してでも飲み干すとか、6年経過して高校生に成長した姿を見せるとか、お姉さんを忘れて次の恋に進むとか。

結局少年は「賢い」少年のままだ。お姉さんからしても少年のままだろう。お姉さんがつい「大人になったね」と優しく微笑むような、そんな大人びた成長が1つあってもよかったのではないか。

大きな成長があればそれは「少年から大人へ」という1つのテーマになる。もちろん恋愛だろうと世界の果てだろうと何でもいい。

とにかく大きなテーマとそれを象徴するような変化が描かれなかったことで、つかみどころがない作品になってしまっている。

おっぱいに興味津々だった主人公だが、途中から中盤以降はすっかりおっぱいに視線が向かなくなる。お姉さんに抱きしめられておっぱいに触れるシーンでも全く興味を示さない。

それが大人になったという表れの1つかもしれないが、少年だろうと大人だろうとおっぱいに興味をそそられるのは変わらない気がするのだが、そんなくだらない考えは一旦置いておこう。(笑)

少年は終始少年のままだ。大人になるまでの日数を数え、毎日昨日の自分を超えるために勉学に励み、大好きなお姉さんに認められもらうために頑張る。

凄い少年。賢い少年。だがそれ止まりだ。

観ている側はどこに感情を向ければいいのか迷子なままになっている。少年から大人に成長する主人公に感動しようにも、それを象徴するようなセリフやシーンがなく、少年の失恋に悲しもうにも、それほどお姉さんと親しいような思い出もなく、はっきりとした好意もなく、別離の悲しみもない。

少年があまりに少年離れしているせいで、ストーリーが少し味気ないものになっている。言ってしまえば少年は少年ではなく、中身は十分大人に値するものだ。

見た目は子供でも中身は大人という中途半端なキャラクターが、ストーリーを起伏のないものにしている。

どんなことにも動揺せず、一切子供らしい弱みを見せない。世間を知らない少年ならではの健気さや貧弱さが全くなく、それがなんとなくパンチが足りない原因になっているのかもしれない。

ペンギンを使ったストーリーは個性的で面白い。ただクライマックスでイマイチ盛り上がりに欠けたように、そこに至るまでのキャラ作りや関係性に少し問題があったのでは、と個人的には感じている。

雑感:惜しい

©2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

世界観は独特で美しくて心に響くことは間違いないが、ストーリーが今一つ。

キャラの関係性が出来上がらないうちにクライマックスに突入し、盛り上がりに欠けるまま、何を伝えたいのかもはっきりしないまま終わってしまっている。

作画は特に素晴らしい。キャラクターの動きも背景の美しさも、何もかもが見とれてしまうほどに煌めいていて、思わず心を持っていかれてしまうほどだ。

だからこそこそ惜しいと感じる。脚本の上田さんは「四畳四半大系」や「夜は短し歩けよ乙女」の脚本家としても有名だが、果たしてこのようなファンタジー込々のポップな青春アニメを描くことに慣れていたのか。

奥深さをセリフの隅々で感じるが、画一された「何か」を感じることができなかった。

どこかフワッとした青春を感じたい人は観てみて欲しい。




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