2020年

【2020アニメ】「宝石商リチャード氏の謎鑑定」アニメレビュー





(66点)全12話

正義感の強い大学生・中田正義は
ある夜、酔っ払いに絡まれていた美貌の外国人・リチャードを助ける。
彼が宝石商であることを知り、祖母が死ぬまで隠し持っていた
いわくつきの指輪の鑑別を依頼した正義。
リチャードの鑑別により明らかになったのは、彼女の過去、真実、そして想いだった。
それをきっかけに、正義はリチャードが店主を務める銀座の宝石店
「ジュエリー・エトランジェ」でアルバイトとして働くことになる。
エトランジェに日々持ち込まれる様々な“謎”を紐解く中で、
少しずつ変化していくリチャードと正義の関係性。
しかし2人には、それぞれ誰にも明かすことのない秘密があった―。TVアニメ「宝石商リチャード氏の謎鑑定」公式サイト




宝石商と大学生が主役の青春ミステリー

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (66点)
完走難易度 普通

原作は辻村七子先生。

監督は岩崎太郎さん。

制作は朱夏。

宝石商

©辻村七子/集英社・宝石商リチャード氏の謎鑑定製作委員会

主人公と宝石商の日常を描いた青春ミステリーアニメ。

主人公はある日、酔っ払いに絡まれている宝石商を発見し、それが縁で、祖母の形見であるサファイアの鑑定をしてもらう。

それが盗品であることを見抜いた宝石商を信頼し、主人公は祖母と盗品のサファイアの馴れ初めについて話をする。

その後、50年前主人公の祖母に宝石を盗まれた張本人を2人で訪問し、いろいろあって、やはり宝石を持ち帰ることになり、宝石商の提案で、主人公が宝石商のお店でアルバイトをすることになるというのが1話の流れだ。

宝石を巡る思い。昭和という激動の時代を生き抜くために祖母が行っていたスリ。その行為は褒められるべきことではないが、それも一人娘の母を育てるための行動。

1つの宝石を巡る様々の人の思惑や背景、そして込められた強い思い。50年という長い年月をかけて明らかになる盗まれた張本人の本当の気持ち。

スケールの大きさといい、宝石を扱った神秘的な世界観といい、リチャードという英国風なダンディといい、独特の世界観を持っている作品だ。

正義という名前で馬鹿にされ、正義の行いを認めてもらえなかった主人公のことを唯一認めて勇気づけた祖母の存在。そんな祖母の優しさを身に染みて感じる主人公。

心が温かくなる。主人公にしても祖母にしても盗まれた張本人にしてもリチャードにしても、それぞれに誰かを思う気持ちがあり、それぞれが「正義」を持っている。

1話の途中で登場するヒロインとの今後の絡みにも注目だ。声優はまたまたあの人。もうざーさん(散々)聞いたあの声をまた聞くことになるとは。もう笑うしかない。(笑)

なんで全く狙っていないのに、こうも毎度毎度登場するのか。改めて声優界隈における彼女の信頼度・安定度の高さを思い知っている。(笑)

人情

©辻村七子/集英社・宝石商リチャード氏の謎鑑定製作委員会

謎を解き明かしていくというミステリーの方向性よりも、宝石を巡るキャラクターの思いが明らかになる「人情」寄りの作品だ。

ぶっちゃけ宝石である意味は途中からなくなっているような気がする。

宝石という存在がなくても成立するようなストーリーが多く、宝石の種類は各話で違うが、特に宝石を巡る争いや宝石があることで生まれる絆、みたいなストーリーではなくなっている。

人情噺として見たとしても特に異色というわけでもない。

相談所のごとく困っている人が宝石を持ってきて、その宝石にまつわる話をひとしきりした後に、宝石の持ち主や思いなどに突っ込んでいく。

やっぱり物足りない。中身はただの人情と変わりなく、宝石を扱っている割に独自性が薄い。

宝石商さんは常に冷静沈着で隙がなく、寡黙で温厚。

とんでもないイケメンなのは間違いないし、CV櫻井孝宏というキャスティングなのもあって、ビジュアルや声のキャラは立っている。

悩める人々を導く人生観や懐の深さ。経験と宝石の知識に裏打ちされた言葉選び。相手の言葉や外見でいろんな情報を取り入れる洞察力。櫻井さんの声で、より彼のミステリアスな雰囲気が増長されている。

石言葉と宝石にまつわる歴史を交え、恋人に振られた女性を励ます4話のシーンは圧巻だ。宝石商の独壇場になっている。

人間としては非の打ちどころがない。しかし面白みがない。

取り乱すこともないので人間味が薄く、掴みどころがない。甘いものには目がないが、それは果たしてギャップと呼べるのだろうか。

主人公の大学生にしてもそうだが、キャラが少し弱い気がする。どのキャラも当たり障りのない感じがして、愛着という点では物足りない。

相続問題

©辻村七子/集英社・宝石商リチャード氏の謎鑑定製作委員会

ハートフルな宝石人情アニメかと思いきや、唐突に相続問題が始まる。

宝石商の家が時価400億円もする曽祖父が残したダイヤモンドの相続権を巡って対立している問題で、宝石商は実家のイギリスに、主人公に内緒で帰還してしまう。

突然いなくなる宝石商に茫然自失になる主人公だが、ヒロインの言葉でイギリスに飛ぶことを決意。

イギリスで宝石商と落ち合った主人公は、相続問題に首を突っ込み、最終的には宝石商のしがらみを取り除くといった感じのストーリーだ。

序盤からミステリアスな言動で、何かしらの大きな事情を抱えているという匂わせがあったにしろ、それまで宝石を巡る人情から一転して、どす黒い「金」を巡る争いが始まり、作品本来の路線から少し逸れている。

急に曽祖父がどうの、祖父がどうの、大女優がどうのと、それまで全く登場してこなかった人物が回想などで登場するが、正直頭に入ってこないし、説明がやたらと長い。

それまでのハートフルな雰囲気はどこへやら、ダイヤモンドを巡るお家騒動に主人公は巻き込まれ、良く分からない人物が良く分からない駆け引きをして、「?」のままどんどん先へ進んでいく。

最終的にダイヤモンドはダイヤモンドではなく、時価3万ポンド足らずの宝石であることが判明。宝石商の悩みの種を消し去った主人公は日本に帰り、改めていつもの宝石屋に寄ると、そこには宝石商が待っているというオチだ。

確かに再会した時の何とも言い難い喜びはあった。けれどもイギリスまで行って、一介の日本人ではどうにもできないような問題に首を突っ込み、途中で事情を説明するために家系図まで登場させて、名前も素性も分からないようなキャラたちが一堂に会する絵は必要だったのかどうか。

ただいたずらにややこしくした感は否めない。単純明快なストーリーが急に複雑怪奇。

主人公が時価400億円のダイヤモンドを破壊しようとした行為にも、ただの「正義の味方だから」という言葉では片づけられないほどの重みがある。

彼はダイヤモンドを壊して自分が宝石商の苦しみを背負おうとしていたが、一家に代々伝わるダイヤモンドがもし本物で、400億円を壊したとなれば…どうなるかは想像したくもない。

結局ダイヤモンドは偽物ということが判明するのだが、オチもやけにあっさりしている。曽祖父の代から伝わるダイヤモンドが偽物とは。誰かが偽物と気づいても良いものだが。(笑)

イギリスまで舞台を移した割にオチもあっさりしているし、主人公と宝石商の間に絆が生まれるような展開にも見えなかった。

作品を通してだが、主人公は周りから言われるほど正義の味方をしていない。

本物の正義の味方だとか、名前の通りだとか褒めちぎられているが、それほど正義の味方っぽいシーンはない。

総評:物足りない

©辻村七子/集英社・宝石商リチャード氏の謎鑑定製作委員会

宝石を題材にした作品は斬新で、とても新鮮な気持ちで観終えることができた。

宝石に関する知見。宝石以外でも度々驚かされる宝石商の言葉選びや人生観。

序盤から中盤にかけての人情パートでは、宝石商のミステリアスかつ知的な雰囲気に何度も魅了された。

一方主人公はそれほど印象に残らない。彼は度々宝石商やヒロインから名前をもじって「正義の味方」だと言われる。

だがそれほど正義の味方らしいことをしていた覚えがない。ヒロインと出会ったときに横断歩道で困っていたおじいちゃんを助けようとしていたシーンのこと。

真っ先に助けようとしたのはヒロインの方で、主人公はそのおじいちゃんが邪な考えを持っていることを見抜き、ヒロインに助けてはいけないと言い、「困っている人が誰しも善良な人とは限らない」と正義の味方とは思えないセリフを吐く。

つまり主人公は正義の味方でありながら、困っている人を内面で「勝手に見極めている」ということだ。つまり「あの人は性格が悪くて裏がありそうだから助けない」ということを平気でやっているということになる。

正義の味方は助ける人を選ばない。それが一般論ではないだろうか。主人公がなぜ周りからしつこいほどに称賛を受けるのか。自分には理解できない。

確かに終盤のイギリス回で、主人公は宝石商を追ってイギリスまで行っている。それは優しさや思いやりから来る行動かもしれない。

だが結果的に、主人公ははっきりとした形で正義の味方はしていない。「ダイヤモンドを壊す」というとんでもない方法で自ら泥を被ろうとするが、それは正義に行いとは言えない。

さらに、日本に帰ってきた後に急に登場する主人公の父親に対しても、彼は怒りのあまり包丁を取り出して、「20秒以内に立ち去らなければ」などと物騒なことを言い出す。

ついに正義とは対極に位置する行動をとるようになってしまう。宝石商はその行動に対して「正直に話してくれてありがとう。弱みを見せてくれたことが嬉しい」みたいなことを主人公に言うが、それで流していいようなことではない。

主人公の立場がはっきりしない。正義の味方ほどの情熱や行動力、人並外れた何かがあるわけではない。宝石商と偶然出会ってバイトとして雇われただけの大学生に過ぎない。

ヒロインとの関係もあやふやのままで、彼が主人公らしいシーンというのを12話通してほとんど見ることができなかった。

作画は12話通してとても綺麗。風景美にもこだわって作られていて、終始落ち着くような雰囲気だった。

雑感:英国風のイケメン

©辻村七子/集英社・宝石商リチャード氏の謎鑑定製作委員会

英国風の金髪イケメンが一番カッコいいということが改めて判明したアニメだった。(笑)

そして金髪といえば櫻井さん。優しい声色と深みを感じるトーン。櫻井さんにしか宝石商の深みは出せない。

宝石屋で過ごす2人の空間は得も言われぬ「癒し」があった。あの2人が静かに同じ空間にいるだけで空気が和むような、そんな不思議な感覚を覚える。

落ち着かない主人公と落ち着き払う宝石商。まだ青い主人公と熟した宝石商。

全く違うからこそ生まれる相性の良さがあり、もっと2人の会話を聞いていたいような、願わくばアニメの世界に入って宝石屋に行きたくなるような、そんな魅力溢れる空間だった。

原作は続いているのでぜひ2期に期待したい作品だ。




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