(52点)全13話
普通の女子校生がローカルアイドルとして頑張るアイドルアニメ
ストーリー | |
作画 | |
面白い | |
総合評価 | (52点) |
完走難易度 | 普通 |
原作は小杉光太郎先生。
監督は名和宗則。
制作はfeel.。
ローカルアイドル
©小杉光太郎・一迅社/流川市ふるさと振興課
このアニメはローカルアイドルを題材に扱った作品だ。
アイドルアニメというのは数あれど、ローカルなアイドルにスポットが当たるのは珍しく、あらすじの段階から惹かれるものがある。
一介の女子校生が水着欲しさに叔父の頼みを聞いたら、プールでのイベントにアイドルとして登壇することになり、そこからローカルアイドルとして2人組ユニットで活動していくというストーリー。
叔父にバイトの内容を知らされずに当日となり、自分がアイドルになることを直前に知らされる主人公。
いうならば作品の一番の見せどころだったはずだが、イマイチ盛り上がりに欠ける印象もある。
普通の女子校生。アイドルとは縁遠い女子校生がある日、突然アイドルになって地域活性に貢献してくれと言われる。
ただ水着が欲しいだけだったのに気づいたらアイドルとして、大勢の前でステージに上がっている。しかも台本はなく、適当な流れを説明されただけ。
そんな非現実的なシチュエーション。この作品序盤の一番の見せ場といって間違いはない。だが明らかに物足りない。
主人公は言われるがままステージに上がり、当たり前のごとく緊張でアガってしまい、逃げ出そうとしたときに、地元に伝わる流川の歌で一応は盛り上がって終わる。
そして何とかステージを成功させた主人公は、ローカルアイドルとして頑張ろうと決意を新たにする。面白いが「ザ・無難」という感じだ。
隙あらば逃げようとする主人公と、それをアクションスター並みの運動神経で何度も捕まえる叔父。
いざステージに上がったら観客が誰もおらず、空虚な時間が流れる。などなど。
ギャグ一色で染め上げたり、思い切ってシリアスにしたり。私の貧弱なアイディアはともかく、強烈なインパクトを残すような過剰なくらいの演出があっても良かったかもしれない。
せっかく作品のコンセプト自体は面白いのに、それをアニメの面白さとして昇華しきれていない印象だ。
血税
©小杉光太郎・一迅社/流川市ふるさと振興課
ローカルアイドルの「事務所」となるのが地元の役所のふるさと振興課だ。
もちろんアイドルなのでギャラは発生する。その財源となるのが他でもない市民の「血税」だ。
アイドルアニメとはかけ離れた単語の1つだ。(笑)
アイドル活動という名の地域振興に貢献することでお金をもらう。「血税」という表現をされると余計に重みがプラスされる。(笑)
しかも主人公たちはノーギャラで働くことになる。時給換算でお金は発生するが、基本的にはボランティア扱いで、テレビ関係の仕事はノーギャラで働くことになる。
血税といいノーギャラといい、ローカルアイドルの厳しい台所事情という、ともすれば重い方向に傾いてしまう設定も、この作品では大人に翻弄される子供感が程よい笑いを生んでいる。
アイドルとして働いてもギャラが出ず、時給は市民の血税から。字面で見れば間違いなくブラックな要素なのだが、それを感じさせない明るさがある。
それは叔父の憎めない人柄や、主人公の底抜けな明るさによるものであり、作品通してまったりとした空気感が維持されている。
若者の都会への流出が止まらない田舎町を盛り上げるために、アイドルとして頑張る女子校生。
のどかな雰囲気。温かみのある人々。設定に多少のブラックさはあるが、和やかで癒しの空間が12話通してしっかり楽しめた。
アイドル活動
©小杉光太郎・一迅社/流川市ふるさと振興課
主人公とパートナーはもちろんアイドルなので、アイドル活動と呼ばれるものをする。
しかし、そのほとんどが彼女らのために用意された舞台ではない。そこが他の一般的なアイドルアニメの認識とずれるところかもしれない。
キャラの魅力を掘り下げていくようなエピソードを展開できるアイドルアニメとは違い、ろこどるは「地域貢献」が根っこにある。
すなわち全ての活動においてその言葉がついて回る。ライブをするにしてもケーブルTVに出演するにしても。
だから本当の意味で、アイドルとしてステージ上で自分を表現するための場所を用意されていない。確かにトラブルがあったり失敗したりはするが、滞りなく至って平穏な感じで進んでいる。
町おこしのために健気に頑張る女子校生。確かに涙を誘うものがあるし、そこにストーリーは生まれるが、彼女たちはどこまで行っても街をPRすることが使命になっている。
だからアイドルとして頂点を極めることもないし、方向性の違いで衝突することもない。見ごたえのある人間ドラマが生まれにくい。
温かい気持ちにはなれるが、アニメとしてもう一つパンチが足りない。かと言って、それを描いてしまったらこのほんわかした「ろこどる」の雰囲気が台無しになってしまう。
ストーリーに引き込まれたり感情移入してしまったり、手に汗握るような展開はない。
それでも地域のために「血税」だけで頑張る女の子がいて、それを支える大人や市民の方々がいる。それだけで心が温かくなる。だからこそのろこどるだ。
5話
©小杉光太郎・一迅社/流川市ふるさと振興課
5話で流川ガールズの方向性や自分の将来について話し合うというシーンがある。
流川市の将来のために何ができるのか、転じて自分が将来どうなりたいのか。マスコットキャラの中の女の子と合わせて3人で話し合うシーンだ。
どこまで行っても、「流川市」というコミュニティーが付きまとうが、自分の進むべき方向性と町のために将来できることを照らし合わせる過程は、青春アニメっぽいシーンでキラキラしている。
主人公は他の2人が明確な夢を持っているにも関わらず、自分には何の目標もないことを自覚する。
しかし、子供の頃の「アイドルになる」という将来の夢を思い出し、「アイドルとしての自分」の目標として全国デビューを挙げる。
そこから3人で目標を共有し、全国ネットに出ることを目標にするが、10秒でその夢が叶ってしまうという流れになっている。
目標を決めてそこに向かって頑張る。単純だが青春アニメはそうでなくてはならない。
しかし終盤まで引っ張れば区切りが良さそうと思ったのだが、10秒後とは。制作陣はあくまでギャグを選んだということか。(笑)
とんとん拍子で有名になっていくというテンポの良さは素晴らしい。
将来に悩むことも喧嘩することもなく、ほぼストレスなく有名になっていくから13話というパッケージで見たときには、非常に見やすい作品だと思う。
ただギャグの方向に舵を切ってしまったことで、「未来ある女子校生がろこどるとして頑張る」という特異性を生かし切れていない感もある。
2人組ユニットのうち主人公は素人なわけだし、ステージ上で恥をかくような失敗をしてもおかしくはない。それぞれに目指している目標があって、性格もバラバラなので葛藤は避けられない。
個性があるという風に表現もできるが、その個性がぶつかり合うこともなくそれぞれが点のままだ。なあなあでやっている感がどうしても否めない。
壮大な目標があるわけでもなく、ライバルがいるわけでもない。みんな仲良く平和な世界で順調に階段を上って5話で全国デビューが決まる。
5話のAパートで3人が目標を語らうシーンがあるように、もっと「夢」「目標」を掘り下げていくような描写があっても良かったのではないだろうか。
あくまで優しい世界を貫き通すという強い意志は感じるが、厳しいアイドルの世界が過剰にオブラートに包まれてしまっている。
特に凝ったような演出でギャグアニメのような面白さを演出するわけでもなく、強烈なキャラがいるわけでもなく、青春アニメのような熱さもない。全てが無難すぎる作品だ。
もちろん日常アニメとしては良いのだろうが、もう少し濃いめの味付けでも個人的には…という感想を持っている。
総評:無難
©小杉光太郎・一迅社/流川市ふるさと振興課
繰り返すが全体を通して無難な作品という印象だ。
キャラそれぞれに個性はあるが突き抜けたものは特になく、盛り上がるポイントが見つからないストーリーは無難そのものだ。
日常ギャグアニメよりの世界観を意識して作られているのは随所に感じる。
だが5話で流川の将来について話し合ったり、自分の将来について語り合ったりするシーンがあり、「夢」や「目標」について触れるなら触れるで、とことん掘り下げて欲しかった。
夢や目標を脇に置くなら置くで、ギャグアニメのような凝った演出があっても作品の世界観からは逸れないはずだし、全てにおいて中途半端な感は否めない。
主人公がカメラの前だと嚙みまくりで噛んだ名前が定着しているし、頼りになるパートナーはお姉さんキャラで優しく、マスコットの中の女の子はちっちゃくて可愛い。
流川市のためにステージで汗を流す姿。励まし合って協力し合って乗り越える姿。まさに青春。
だが心には響かない。頑張って成功する。平坦な道のりに感動は生まれないし、平和で仲良しこよしで可愛いだけの世界。
無難なままストーリーが進んでいき、特に事件もないまま終わってしまっている。正直無難以外の何物でもない。
キャラのデザインは可愛い。作画も安定しているし、流川の自然の美しさをこれでもかと感じる背景描写は驚嘆ものだ。
地域を盛り上げるために健気に頑張る女子校生。彼女たちの可愛さが詰まっているアニメであることに間違いはない。
雑感:悲しいろこどる事情
©小杉光太郎・一迅社/流川市ふるさと振興課
悲しいろこどる事情を知ることができた。まさか時間給のみで、それも血税によって活動していたとは…(笑)
雇い主が役所なので当然と言えば当然なのだが、現実のローカルアイドルはどこから収入を得ているのだろうか。純粋に気になる。
ローカルアイドルは今や各所にあるが、テレビには出れても全国区に名前が轟くことはそうそうない。グループでというよりメンバー単体の方が多いのではないだろうか。橋本〇奈みたいな。
ほとんどのローカルアイドルが有名になれずにいつの間にか消える。悲しい運命だ。
活動は限定的で全国区になる可能性は限りなくゼロに近く、多方面の仕事をこなしても薄給。それこそ「地域のために」という強い意志がないと務まらない仕事なのだな…としみじみ感じることができるアニメだった。(笑)
ただ終盤のライブシーンでもある通り、個で売る事務所アイドルとは違い、役所お抱えのアイドルは地元への愛が強く、地元とセットで覚えてもらえるという利点がある。
事務所お抱えのアイドルにはない「地元感」がろこどるにはあり、人前に出るのが好きで地元が好きな人ならば、最高にやりがいのある仕事なのかもしれない。
「歌やダンスの能力に関係なく、なぜか気にせずにはいられない。愛される才能とでも申しますか。それがろこどるに最も必要な才能かもしれませんね。」
マネージャーのこの言葉にこのアニメの全てが詰まっている。起伏はそれほどないが「ろこどるがどういう存在か」というのを知ることができたし、作品通して伝えたいこともはっきりしていたように感じた。
ろこどる事情を覗きたいという人にはピッタリはまる作品かもしれない。