(42点)全16話
密閉されたビルからの脱出を図るホラー×ファンタジーアニメ
ストーリー | |
作画 | |
面白い | |
総合評価 | (42点) |
完走難易度 | 超難しい |
原作は真田まこと先生。
監督は鈴木健太郎さん。
制作はJ.C.STAFF。
殺人鬼
引用元:©2018 真田まこと/Vaka・DWANGO・KADOKAWA/「殺戮の天使」製作委員会
ビルの地下の最下層で目を覚ました少女が、殺人鬼と出会うシーンから物語が始まる。
いきなりだが、展開は早すぎて思考が追い付かなかった。(苦笑)
1話の冒頭では、謎のカウンセラーと謎の少女が話しているシーンから始まり、その謎の少女が謎のビルで目を覚まし、外に出ようとエレベーターに乗り、降りたら謎の「ゲーム開始」のアナウンスが入り、裏路地らしきところで謎の殺人鬼と出会う。
誰1人&何1つとして情報を与えられないまま、とんとん拍子でストーリーが進んでいき、しょっぱなから置いて行かれてしまった。
殺人鬼は少女を殺そうと、持っている大鎌で少女を襲う。
1話から何とも物騒な展開だ。
どこかも分からない場所で目が覚めたかと思いきや、わけわからん奴に命を狙われ、追いかけられる。
さらにわけわからんことに、殺人鬼は逃げ惑う少女を殺さない。
逃げ惑っていたはずの少女が急に塩らしくなり、逆に「私を殺して」と殺人鬼にお願いをする。
これが全部1話の内容だ。明らかに展開が早すぎる。
設定も世界観も全く飲み込めていない段階で、謎がどんどん投げられていき、最後には少女が、人格が変わったかのように「殺して」と言い出す。
作画が綺麗であることが唯一の救いで、1話から作品に入り込ませる気がないストーリーに辟易してしまった。
伏線を仕込ませたいのは分かるが、作品の導入部分である1話の段階から謎をたくさん投げられても、こちらはついていくことが出来ない。
もう少し入り方に気を遣って欲しかったところだ。
狂乱パーティー
引用元:©2018 真田まこと/Vaka・DWANGO・KADOKAWA/「殺戮の天使」製作委員会
1話も怒涛だが、2話以降も怒涛の展開が続く。
展開が早いというより、謎がどんどん増えていき、視聴者に負荷をかけ続ける意味での「怒涛」だ。
この作品ではとにかく謎に「頭がおかしい奴」が多い。(笑)
少女が最初に出会う謎の殺人鬼はもちろん、目ん玉をくりぬこうとする変態カウンセラーだったり、序盤の中盤で登場する仮面の男だったり、謎のイカれたサディストだったり、少女を謎に魔女と呼ぶ謎の神父だったり。
謎に頭がおかしいだけの狂人が出血大サービスで登場する。
私は決してふざけて「謎」という言葉を多用しているわけではない。
アニメ全16話を視聴し終わった今でも、謎が謎のまま残っているから仕方がない。(苦笑)
特に狂人である理由も語られぬまま、少女と殺人鬼の命を狙わんとする刺客が現れては、2人を襲い殺そうとする。
本当に物騒極まりない。
わけわからん奴が登場したかと思えば、二言目には表現は違えど、皆一様に「殺してやる」と言ってくるもんだから狂気でしかない。
少女を殺して自前の棺桶で埋葬しようとしたり、目ん玉をくりぬいてコレクションしようとしたり、銃で撃たれて喜んじゃったり。
まさに変態の宝石箱だ。(笑)
「なぜビルの中にいたのか」「なぜそんな狂気に染まってしまったのか」の描写が皆無だったため、ただの頭のおかしい奴という印象しかない。
展開が謎
引用元:©2018 真田まこと/Vaka・DWANGO・KADOKAWA/「殺戮の天使」製作委員会
展開が謎すぎて付いていけない。
先述した1話もそうだし、2話以降も設定が飲み込めないまま変な殺し屋的なキャラが現れては、少女と殺人鬼を殺そうとする。
状況説明をするナレーションもいなければ、語り部となるキャラもいない。
何が何だか分からないまま、「この作品はこういうストーリーだから」と一方的な押し付けで物語が進んでいく。
原作が脱出系のホラーゲームなので、「ああ、この謎解きはきっとゲームだとこんな感じなんだろうな」というのは漠然と理解できる。
しかしアニメになった途端に作業感が増し、薬を取りに行くイベントで神父と何やらゴタゴタしたり、サディスト女に謎解きをさせられたり、魔女狩りと称して裁判が始まったり…という展開は不自然そのもの。
中盤以降で「神」という言葉が突然出現し、神はいるいないだの、神の言うことは絶対だの、ストーリーの本筋とは関係ないような意味不明な押し問答まで始まる。
それぞれが独立したシナリオでしかないために、キャラのセリフや状況に意味を持たせることができていなかった。
明らかに説明不足だし、伏線の張りすぎは一歩間違えば退屈に繋がり、視聴者に負担を強いることになるという悪い例になってしまった。
謎を最後まで引っ張りたいのは分かるが、せめて最低限の状況説明やキャラの掘り下げは欲しかった印象だ。
それらがなかったばかりに、謎のキャラが謎にビルの中で、謎に少女と殺人鬼を殺しに行っているようにしか映らなかった。
12話
引用元:©2018 真田まこと/Vaka・DWANGO・KADOKAWA/「殺戮の天使」製作委員会
そんな感じで12話までは正直退屈になってしまっている。
少女と殺人鬼は2人で手を組んでビルの最上階を目指すのだが、その過程で謎に狂気にまみれたキャラたちと対峙することになる。
その対峙シーンで盛り上がれば良いが、先述したようにシチュエーションもキャラも何一つ分からないので感情移入もできない。
それこそゲームのイベントをただこなすだけのような無機質な展開が12話まで続くという構成になっており、中だるみどころか、序盤からダルみまくってしまっている。(苦笑)
しかし12話あたりから一気に物語が進展し、クライマックスに向かって一気に盛り上がっていく。
少女の過去が明らかになり、出口も目前に控え、殺してくれと願った少女を殺人鬼はどうするのか…という期待感を味わうことが出来た。
ゴールが見えたおかげで面白くはなったが、16話構成で12話から盛り上がる構成はナンセンスだ。
3話で切るかどうか判断する人が多いこのご時世に、12話までいろいろ引っ張るのは無謀な賭けが過ぎる。
面白くなるという確信があった上での構成だとは思うが、決して伏線を回収をした後も、超絶面白くて目が離せないような展開にはなっていない。
むしろ、「あ、そう」という感じの冷めた印象しかなかったし、回収されないまま終わっている伏線も多々あり、モヤモヤした気持ちが圧倒的に上回っている。
ただ12話からはある程度ハラハラして楽しむことができたので、最低限の評価を下すことはできる、という感じだ。
総評:果てしない16話
引用元:©2018 真田まこと/Vaka・DWANGO・KADOKAWA/「殺戮の天使」製作委員会
序盤の展開でこの作品を見切る人はかなり多いはずだ。
設定も世界観も何一つ分からないまま、視聴者を置いてけぼりにして展開だけ先に進んでいく。
キャラの情緒も不安定気味で、殺人鬼から逃げていた少女が脈絡もなく「殺して」と言い出したり、それを聞いた殺人鬼が謎に嘔吐したり。
とりあえず利害が一致して行動を共にする流れは分かるものの、誰かも分からない刺客たちが行く手を阻み、阻むどころか命を狙ってくる。
説明されるのはキャラの名前くらいで、なぜビルにいるのか、何で殺そうとするのか、などの補足が一切ないために、ただの「変態殺人鬼」にしかなっていなかった。
ビルの最上階を目指す過程で仕組まれた謎解きも、少女の思考が明かされないまま勝手に解かれていくので、脱出ゲームならではの快感も全く味わず、結果作業感が増して退屈を生んでしまっていた。
さらに序盤に2回ほど、ダークな世界観とは反するようなデフォルメ調のギャグシーン的なものを入れ込んできたが、何を意図したものなのか全く分からない。
デフォルメは序盤の2回切りで、それ以降出てこなかったことを考えても、いかに作品の方向性が定まっていない作品かが分かってしまう。
12話まではそんな感じのサイクルで進んでいき、ようやくゴールが迫って盛り上がりを見せるが、やはりキャラの掘り下げ不足でどうしても作品に入り込むことが出来ない。
いろいろと惜しい作品だった。
目を奪われるような美しいキャラ絵がありながら、脚本&構成が脚を引っ張ってしまっており、ゲームの面白さをアニメで表現できていなかった。
原作がADVに近い脱出系ホラーゲームということは理解している。
恐らくだが謎解きをしながら、殺人鬼と協力して刺客たちを退けていくというストーリーになっているのだろう。
きっと時間制限などもあって緊張感が味わえる作品に違いない。
しかし、その面白さをアニメで何一つ表現できていなかったのが非常に残念だ。
ゲームのシナリオの流れをそのままキャラのセリフとして起こしたような、前後の関連性や魅力あるアニメを作るための表現を無視した雑な作品、という印象しかない。
序盤に張られた伏線の中で投げっぱなしになっているものもあり、腑に落ちない気持ち悪さばかりが残る作品だった。
作画は申し分ない。
少女の作画は特に力が入っているし、肌の血色も良く、誰が見ても「可愛い」と思える仕上がりだ。
これだけのクオリティで制作できたにもかかわらず、脚本が全てを台無しにしてしまった。
無駄なやり取りを省いて、サブキャラを深めたり、謎をもう少し早い段階から小出しにして明かしていれば…もっと面白い作品になったに違いない。
個人的な感想:アクセ○レータ
引用元:©2018 真田まこと/Vaka・DWANGO・KADOKAWA/「殺戮の天使」製作委員会
殺人鬼の声を演じるのは、お馴染みの岡本信彦さん。
声のトーンといい、狂気に染まったキャラクターといい、どっからどう聞いてもアクセラレータにしか聞こえない。(笑)
作品の中身よりもそっちの違和感の方が気になってしまった。
それは冗談にしても「結局何がしたかっただったんだろう」という謎を残したまま終わってしまった。
16話という十分な尺があって、J.C.STAFFの力のこもった作画があったのに、絶望的すぎるテンポの遅さや意味不明なやり取り、意味不明な展開の連続のせいで、どうにも腑に落ちない。
「神」だの「罪人」だの「魔女」だの、明らかな尺稼ぎをする余裕があったら、サブキャラの掘り下げだったり、少女と殺人鬼の触れ合いだったりをもっと見ていたかった。
それができないならせめて、16話ではなく12話、あるいは10話構成でも十分だったように思える。
見かけは綺麗に締めくくられたラストも、投げっぱなしになっている伏線のせいで、全く感動できなかった。
円盤売上は1500枚程度で思ったより健闘しており、原作のパワーがある程度手伝ったのだろう。
残念ながらアニメとしての面白さは分からないままで、本当にもったいない作品だった。
ダークファンタジー系の作品が好きな人はハマるかもしれないので、ぜひ観てみて欲しい。