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【2013アニメ】「サーバント×サービス」アニメレビュー

(72点)全13話

ある日、みつば区の保健福祉課に、山神ルーシー(略)、長谷部豊、三好紗耶という3人の新人が配属され、先輩職員の一宮大志が新人の指導をすることになった。新人3人のうちルーシーは名前が異様に長く、その名前を受理した公務員に文句を言うために公務員になった、という事情を抱えていた。豊はルーシーをからかうが、次第にルーシーのことを可愛いと思うようになる。
サーバント×サービス-Wikipedia

公務員の日常

公務員として働くキャラの仕事風景や、日常風景、そして恋愛を描いた日常ラブコメディ。

原作は高津カリノ先生。

監督は山本瑞貴さん。

制作はA-1 Pictures。

「WORIKING!!」との類似点

引用元:©高津カリノ/スクウェアエニックス・サーバント×サービス製作委員会

原作者も同じ、制作会社も同じ作品で、「WORKING!!」という作品がある。

北海道の某ファミレスで働く男女の日常を描いたアニメだ。

サーバント×サービス(以下サバと略)はWORKINGとの類似点もかなり多い。

仕事場の日常を描いている点、ギャグ、そして職場恋愛。

キャラデザは違うが、絵のタッチも同じで、WORKING好きは一発で既視感を覚える作品だ。

軽快なテンポで進むストーリー、キャラ同士の掛け合い。

ただローテンションキャラが多いので、WORKINGとは違う世界観になっていた印象。

名前がとてつもなく長いヒロイン

引用元:©高津カリノ/スクウェアエニックス・サーバント×サービス製作委員会

ヒロインの山神ルーシーは名前が超絶長い。

寿限無よりも長い。

親がふざけた名前を付けて、それを受理した公務員に文句を言うために、彼女は公務員になる。

「安定しているから」「楽そうだから」「やりたいことが特にないから」

公務員を目指す理由はだいたいこの辺だが、公務員に文句を言うために公務員になるという動機がかなり斬新。

文句を言うためにわざわざ公務員になる必要があるのか、自分の将来をそんな形で決めていいのか、というツッコミが心の中で飛び出す。(笑)

しかしそれほどまでに彼女の中で、名前に対するコンプレックスは大きい。

名前を受理した公務員を恨んでいて、名前について他人に触れられるのも良しとしない。

そんな中、同期の長谷部はルーシー呼びで彼女をからかい、その結果、ルーシー呼びが庁内でも定着してしまう。

最初はルーシー呼びに嫌悪感を示す彼女だが、徐々に職場の温かさに触れ、自分の名前を受け入れるようになっていく。

ギャグが不十分

引用元:©高津カリノ/スクウェアエニックス・サーバント×サービス製作委員会

日常系のギャグアニメでは、ギャグの部分で少しでも突出したものがなければ、視聴を継続することは困難となる。

このアニメのギャグは、キャラ同士の掛け合いによって生まれる。

誰かのボケに対して、周りがツッコんで笑いが生まれる。

しかし、他の日常ギャグアニメのほとんどがそうであるように、この作品もまた、ギャグの質が終始不十分なままだった。

会話だけで笑いを生むためには、何か一つでも強烈なアクセントがなければいけないと、私は思う。

会話の内容はもちろん、大がかりなボケに対してあえて冷静にツッコんだり、ぶっ飛んだキャラやオチを付けるキャラがいれば、それだけで自然と笑いは生まれていく。

そういうアクセントがほぼなく、変化の少ない日常、会話、あからさまなボケもなく、ボケとして成立していないからツッコミも映えない。

WORKINGとの類似点は多いが、中身で見れば間違いなくWORKINGの方が面白い。

そう思う人は間違いなく多いだろう。

しかしギャグが例えつまらなくとも、このアニメには「恋愛」という柱も存在する。

職場恋愛

引用元:©高津カリノ/スクウェアエニックス・サーバント×サービス製作委員会

この作品では「職場恋愛」も描かれている。

途中で判明する一宮という先輩キャラと、千早という臨時職員が付き合っているという事実。

そして、途中からルーシーと長谷部の恋愛も描かれる。

長谷部は女性のメアドを大量に持っているが、女性を心底愛した経験はなく、モテはするが恋愛経験はない。

ルーシーは本が大好きで、そもそも恋愛に興味がなく、女子しかいない空間で育ってきたこともあり、恋愛には奥手。

そんな2人だが、ルーシーの優しさや純粋さに触れていくにつれて、長谷部はどんどんルーシーが好きになっていく。

しかし、ルーシーが「自分なんか」と自分を卑下するあまり、全く関係は進展しない。

そんなもどかしさが何ともいじらしい。

長谷場は一見遊び慣れているチャラ男だが、中身はウブで、不意打ちを食らって赤くなってしまうギャップが、同じ男ながら可愛いく感じてしまう。

純朴なルーシーとの相性は最高だ。

しかし、やはり「恋愛」においても物足りなさは否めない。

決して不満ではない。純粋な男女の恋愛。実に私好みだ。

最後のわちゃわちゃした展開がそう印象付けてしまったのか…

「わちゃわちゃEND」は他の日常ラブコメディでもよくあることだが、結論を逃げている風に映ってしまう。

ギャグという側面があることは一考の余地があるが、わちゃわちゃでうやむやにせずに、恋愛の部分だけでも綺麗に描き切るべきだった。

暗い

引用元:©高津カリノ/スクウェアエニックス・サーバント×サービス製作委員会

公務員という題材、暗いキャラもいるせいか、明るさに欠ける。

日常ギャグアニメとしてどうなのか、と度々思ってしまった。

私が面白いと感じる、世間での人気もある日常ギャグアニメでは、十中八九、暗いキャラが主役級のキャラとして出ることはない。

いたとしても、強烈な「個」を持っているおかげで、暗さは全く感じないことが多い。

例えば、このアニメの千早というキャラには、そんな暗さを相殺するインパクトがない。

そればかりか、彼氏の一宮先輩の悪態をついたり、傷心の長谷部を「ざまあ」とけなしたり、ネガティブな印象ばかりが先行してしまった。

ローテンションキャラが多いことも一因としてある。

自分に自信が持てなかったり、緊張しいだったり、サボることばかり考えるめんどくさがりだったり、口うるさく生意気な高校生だったり。

他の主要キャラも同様、マイナス面ばかりがどうしても気になってしまう。

キャラ設定に文句を言うのは気が引けるが、正直、日常ラブコメディに合っていなかったように思う。

もちろんそこに明るさとのギャップがあれば、キャラの印象もガラッと変わる。

しかし、ギャップもほぼなく。

原作者の挑戦でもあり、分かっていてこのキャラ設定にしたとは思うが、明るさを欠いては、この手のアニメは成立しえないと学ぶことができた。

名前を受理した犯人

引用元:©高津カリノ/スクウェアエニックス・サーバント×サービス製作委員会

物語の序盤で、ルーシーの名前を受理した犯人の顔が少し映る。

さらには、長谷部の父親も公務員だったと付け加えられ、大体の視聴者が、長谷部の父親がルーシーの名前を受理した犯人だと察することができる。

犯人が長谷部の父親だと確定するのは終盤の12話。

長谷場が父親と、ルーシーの話になったときに、ルーシーの名前を受理したと自白する。

罪悪感に苛まれてしまった長谷部は、ルーシーに打ち明けることができずに、距離を置いてしまう。

うじうじと悩む長谷部だが最終回で、勇気を出してルーシーに事実を告げ、ルーシーの許しを得る。

罪滅ぼしとして、今後もルーシー呼びを継続するように言われ、勢いで長谷部が告白するも「今はまだ」とルーシーが好意を匂わせ、物語が終了する。

ルーシーの名前を受理した犯人が最後に明らかになり、告白もして、関係の変化という点でも一つの決着が見られた。

先ほども述べたように、もう少し踏みこんだ関係に出来なかったのか、という不満。

原作では最後に付き合う描写があるようだが、アニメでも2人が付き合う前提のストーリー構成にしても良かったのではないか、と思う。

名前を受理した犯人が長谷部の父と分かり、落ち込む長谷部と、長谷部を心配するルーシー。

長谷部の意を決したカミングアウトにも、動揺を一切せずに受け入れ、あまつさえ、「これからもルーシーと呼んで」と、それまでのルーシーには見られなかった勇気ある発言。

最高の雰囲気で長谷部が告白をし、誰もが成功すると思ったところで、まさかの「今はまだ」というルーシーの答え。

これ以上ない肩透かし。

犯人発覚からの一連の流れは良かったものの、終わらせ方が悪く、そこで評価を少し落とさせてもらった。

総評:公務員になりたくない

引用元:©高津カリノ/スクウェアエニックス・サーバント×サービス製作委員会

公務員の日常を描くという斬新な世界観は、一見の価値あり。

しかし中身は、「何を見せたいのか分からないアニメ」という評価に留まった。

恋愛に重きを置くなら、もっと恋愛マシマシでも良かったし、最後の告白を流して、うやむやにして終わるなんてナンセンス。

日常ギャグアニメに重きを置くなら、公務員という枠にハマらない大胆な笑いが欲しかったし、ツッコミポジションのキャラも一人はいて欲しかった。

改めて、日常ギャグと恋愛を両立させることがいかに難しいかを示した作品だと思う。

ギャグに寄ると恋愛の濃度が薄れ、ピュアな恋愛というのが描きにくくなる。

逆に恋愛に寄ると、ギャグシーンは邪魔に感じてしまう。

上手くバランスをとりながらストーリを組んでいくという点では良かったと思うが、逆にバランスを取り過ぎてつまらなくなってしまっていた。

比較するのは酷だが、その点WORKINGでは、しっかりギャグと恋愛のバランスが取れていたように思う。

小さい物好き、男性恐怖症で近づいただけで殴る少女、個人情報を何でも知っている先輩など、キャラにしっかりとした個性があり、その上で、キャラ同士の掛け合いから流動的に生まれるボケとツッコミがあり。

恋愛においても、興味ない→気になる→好き、に至るまでの道のりを丁寧に描いていて、思わずキュンキュンしてしまう。

元をたどれば、キャラ設定の時点で間違っていたと言わざるを得ない。

公務員という職業柄、暗いキャラや性格に問題のあるキャラを多めに入れ込んだのかもしれないが、それがストーリーの本質を見失う結果になってしまったのでは、と勝手に推察。

高津先生の代表作「WORKING!!」では、アニメのヒットによって「ファミレスで働きたい!」という人が爆増したという。

ちなみに私もファミレスに幻想を抱いた一人だ。

それはどうでもよく、サバはWORKINGとは違って「公務員になりたい!」という気持ちが全く湧いてこない。

ただ単に公務員という仕事の魅力を描きにくいという面もあるが、公務員になりたいと思うような魅力がない、つまり、悲しいかな、アニメとしての面白みに欠けるという何よりの証拠になってしまった。

個人的な感想:公務員のリアル

引用元:©高津カリノ/スクウェアエニックス・サーバント×サービス製作委員会

キャラやストーリーに特に心を揺さぶられることはなかったが、公務員を題材にして、公務員の日常が垣間見えたシーンもあったので、そこは高評価。

原作者の高津先生同様、以前公務員として役所で働いていた経験がある身としては、窓口のたらい回しや、融通の利かない対応、市民から常に厳しい目を向けられる理不尽さ、そんな「お役所仕事」がしっかりと描かれていた。

序盤の1,2話程度しか、そのようなシーンが見られなかったのは残念だが、アニメの世界観を守るという観点で判断すれば、仕方ないことだったかもしれない。

それだけ公務員のリアルは過酷だ。

頑張って汗水流して働いても、少し休憩しているシーンだけを切り取られて、「俺たちの税金で働いているのに」と言われてしまう。

どんな時も市民を最優先に考え、文句を言われるのは日常茶飯事で、一般的な「楽そう」というイメージからは遠くかけ離れているのが現状だ。

しかし辛いことも多い反面、楽しいと思う瞬間も確かにある。

このアニメでもそれはしっかりと描写されていた。

何気ない感謝の言葉が、荒んだ心に染みわたる。

市民からの感謝の言葉を支えにして、今日も公務員は一生懸命働いている。

公務員のリアルを再現度高く表現してくれたアニメは、サバ以外にはない。

もちろんリアルの公務員は、勤務時間中にサボることも、黙ってどこかに行くことも、誰かと他愛ない世間話をすることも、女子高生が毎日のように来ることも、ぬいぐるみの課長もいない。

世間話くらいはあるかもだが、部署によっては空気が悪く、仕事だけの関係なんてザラにある。

アニメを観て、もし公務員になりたいという人がいるなら、夢を見てはいけない。

経験者からの忠告だ。

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