2016年

【2016アニメ】「少女たちは荒野を目指す」アニメレビュー





(6点)全12話

神奈川県、金沢百景。風光明媚なその地で学生生活を送る少年、
北条文太郎には、将来の夢がなかった。
やりたいことを見つけられない、そんな焦りを抱き始めていたある日、
彼はミステリアスな同級生の少女から、一緒にゲームを作らないかと持ちかけられる。
その提案に、初めて何かを成し遂げることができるかもしれないという予感を感じた文太郎。
そして、彼はついに一歩を踏み出した。
いざ往かん。この世の荒野に、仲間たちとともに――。TVアニメ「少女たちは荒野を目指す」公式サイト




ゲーム作りから始まる青春アニメ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (6点)
完走難易度 超難しい

原作はタカヒロ先生。

監督は佐藤卓哉さん。

制作はproject No.9。

美少女ゲーム

©みなとそふと/しょこめざ製作委員会

高校生が群雄割拠の美少女ゲームの世界「荒野」をひた走る青春アニメ。

高校生がゲーム製作。この世界観だけ聞くと某冴えないアニメが真っ先に思い浮かんでしまうが、この作品は同じゲーム製作がコンセプトになってはいるものの、登場キャラの色は全く違う。

まずは主人公のコミュ力が高く、ゲームとは無縁の生活を送っていること。

中華料理屋で接客のバイトをしたり荷下ろしの仕事を頼まれたり、子供たちに好かれたり。顔が広くて誰とでも気さくに話すことができる。

ただの陽キャではない。コミュ力お化けの真の陽キャだ。(笑)

そんな主人公が、クラスのあんまり目立たない存在だったヒロインの女の子にデートに誘われ、彼女の美少女ゲームに対する思いを聞き、主人公はシナリオライターとして勧誘を受ける。

いろいろツッコミどころがある。

まずは大前提として、主人公がゲーム製作に関わるようなキャラクターではない。ゲームをそもそもやらないし、クラスではリーダー的な存在だし、誰とも気さくに話せるしで、まったくゲームと結びつける点はない。

ヒロインは主人公が書いた劇の台本だけで、彼をシナリオライターに据えようとする。たった一度の学校の劇で、しかもそれは原作をパクったもの。

それを知ってもなおヒロインは「原作だけでは面白くならない。面白いということはシナリオライターの資質ありだ」と訳の分からない暴論を振りかざす。

原作をパクったと主人公は言っているのに、無理やりこじつけで才能ありに持って行こうとする。原作をコピーするシナリオライターがいてはたまらない。それはただの盗作だ。(笑)

唯一「進路が決まっていない」という無理やり美少女ゲームに結び付ける事情こそあるが、ゲーム製作をこれから始めるとは、1話からは全く想像ができない。

そしてヒロインが言うところの「荒野」。確かに美少女ゲームの世界は荒野も同然で、売れるか売れないかのシビアな世界なのは間違いない。

しかしそれはどのコンテンツにも当てはまる。ヒロインは主人公への問いかけの中で「金と名声」を得るための手段として「ゲーム製作」を挙げている。

確かにそのような側面もある。売れるゲームを作ればそれだけ名も知れて、お金も入ってくるだろう。だがお金と名声を得るためなら美少女ゲームである必要は全くない。

ヒロインはそれをゲーム製作の目的として真っ先に挙げている。「好きという気持ちだけでは荒野を生き抜くことはできない」とも言い切っている。

何事も根本に「好き」という気持ちがないと本気にはなれないと思うのだが。彼女の主張はどうも偏っている。

主人公がゲームとは無縁のキャラクターであることと併せて、本当にこれはゲームを作る物語なのか。はなはだ疑問を抱くような1話だ。

盗作を行ったゲームに全くゆかりのないコミュ力お化けの主人公を、自分の将来的な「金と名声」がかかったゲーム製作という「夢」の核となる「シナリオライター」に抜擢するヒロインの慧眼たるや。

自分が「荒野」と表現するほどの過酷なゲーム製作の世界に繰り出すために、素人同然の高校生をシナリオとして起用する。自分のさっきまでの発言をもう一度聞いてほしいものだ。(笑)

ゲーム製作に協力して欲しい旨を隠して水族館デートをする理由も良く分からないし、早速ツッコミどころ満載の作品だ。土台の時点でグラグラなのでまともな家が建つ気がしない。

いい加減同じ声優の声を聞くのも飽きた。(笑) どの作品にも香菜らず登場して、少し鬱陶しい。(笑)

もちろん嫌ではないが、さすがにこう何度も連続で登場されると「ごり押し感」が否めない。もう少し若手に出番をあげられないものだろうか。(笑)

矛盾だらけ

©みなとそふと/しょこめざ製作委員会

ヒロインの発言と行動の整合性が取れていない。

主人公を美少女ゲーム製作に誘う際に、「ゲーム製作は荒野」と独特の表現をしておいて、そんな過酷な荒野を共に旅する仲間として、全く知識のない主人公を引き入れる。

ゲームもアニメも知らない。シナリオの知識もない。あまつさえ盗作の前科もある。

「好きという気持ちだけでは到底乗り切れない過酷な世界」なのに素人がシナリオで本当に良いのだろうか。

さらにゲーム製作の他のポジションの人材を探すシーンのこと。

主人公の友達が「自分には何もやりたいことがない。何か新しいことにチャレンジをしてみたいから仲間になりたい」とヒロインに申し出る。それに対してヒロインは

「強い動機ではないわね。ゲーム製作は長期にわたる仕事よ。何かしら執着の気持ちがないと。何より本人がつらい思いをするわよ」

と主人公の友達の申し出を突っぱねる。「新しいことにチャレンジしたい」というのはヒロインが求める情熱に含まれると思うのだが、ヒロインは容赦なく拒む。

「執着がない」とヒロインは主人公の友達に言うが、主人公には果たして「ゲーム製作で何が何でも食っていく」という執着があっただろうか。(笑)

動機とか執着以前の問題で、主人公には経験すらない。ゲーム製作に対する気持ちも全く持っていない。

ゲーム製作に全くゆかりのない主人公と、チャレンジ精神で自分のやりたいことを見つけようとする友達。

果たしてどちらに荒野を生き抜くための情熱があるだろうか。一目瞭然だ。

ヒロインは最終目標として「実際にゲームを販売して勝利する」ことに置く。勝利とは何だろう。彼女が負けず嫌いなのは伝わるが、何をもって勝利とするのか。

そんな小学生の「一生懸命頑張る」みたいな動機で本当に大丈夫なのか。方向性も不透明だ。

さらには「美少女ゲームの売れ行きは結局ビジュアルが6割を占める」という発言をする。

確かにそれは真理に近いと私も思うのだが、絵師以外にもこれから自分の仕事に挑もうとしている人がいる前で言うセリフだろうか。

気分を楽にさせる意図がもしかしたらあるのかもしれないが、「絵師以外は別にそこそこの出来でも大丈夫」というニュアンスが含まれているかのように聞こえる。

ヒロインの発言は矛盾だらけ。どの発言もぺらっぺらで表面だけの言葉が多く、キャラクターの芯が見えないし、何を考えているのかも分からない。

薄い

©みなとそふと/しょこめざ製作委員会

一体主人公たちはゲーム製作という荒野を生き抜く覚悟を本当に持っているのか。

発言主のヒロインでさえ、ゲーム製作で「勝利」したいというフワッとしたニュアンスの目標しかなく、他のメンバーに至っては知識や経験がないならまだしも、何かを成そうという強い志が全く感じられない。

真っ先に合宿をしたり、海でバカンスしたり。荒野を生き抜く気ゼロだ。(笑)

ゲームに対する強い動機がないから、ストーリーが薄っぺらいことのこの上ない。ただ寄せ集めのメンバーでなあなあのままゲームを作っているだけの絵面でしかない。

だからといって、唐突に「みんなで大人気ソフトを作るぞ!」と一致団結したところで不自然極まりない。

そもそも序盤で、ゲームに対するモチベーションがないままそれぞれがメンバーになっているので、どうしたって後付け感が出てしまう。

共通の目的は難しくても個々の目的があれば、自然とストーリーは生まれるのだが、そういった描写もなく、普通に仲たがいして普通に仲直りして普通に別れて普通に戻って普通に成功する。そんな筋書き通りのストーリーが淡々と続く。

確かに上手くいかないのはまさしく何度もフリがあった通り、荒野そのものだ。だがそんなことは強調するまでもなく全員が知っている。商売の世界なのだから厳しいのは当たり前だ。

重要なのはその荒野をこのアニメらしくどうやって乗り切るのか。

ゲーム製作をするために集まった素人集団らしく泥臭く。

そういった部分があればもっと面白くなったはずだが、わーい合宿だー、ときっちりラブコメっぽいことをしている。方向性がブレブレだ。

素人

©みなとそふと/しょこめざ製作委員会

それぞれのグラフィッカーやプログラマーなどの役職において、経験者が集まった集団とはいえ、基本的には「美少女ゲーム製作」において素人同然と言っていいだろう。

そんな素人の集まりのはずが、ゲーム製作が何の滞りもなくあっさりと完成に近づいている。

ありえない。あってはならない。もちろんゲームを作った経験などないが、それでもこんなに簡単にできるほど甘くはないことくらい知っている。

主人公はシナリオを書いたことがないどころか、アニメや漫画の世界とは無縁の生活を送ってきた。

当然美少女ゲームがどんなもので、消費者が求める面白さがどんなもので、売れるゲームがどんなもので、プロットの書き方すらも分からない。

そんな主人公がちょっと本を読み漁ってゲームを少しいじった程度で、もう1人で「普通に面白い」と言われるほどのプロットを3日で書き上げている。

「想像の泉から溢れ出てくる」と本人は表現しているが、それは幾多もの荒野を乗り越えてきた猛者が言うセリフであって、素人がそんな「ゾーン状態」に入れるわけはない。

もちろんこれは12話という限られた尺があるアニメ作品なので、素人がじっくり成長する物語など描けないことは分かる。

それでも主人公が思いっきり悪戦苦闘するシーンくらいあってもバチは当たらない。

荒野を生き抜くと決めたなら合宿などにうつつを抜かす暇などなく、とことん向き合ってとことん突き詰めてとことんシリアスをやるべきだ。

どうにもシリアスを嫌って普通のラブコメ路線を中途半端にやっている感が出てしまっている。全てがゲームを中心に動いていた某冴えない系のアニメと比べても本気度が足りない。

もちろん他のアニメと比べることはご法度なのだが、それほどに無色透明で無味無臭な薄っぺらい作品だ。

総評:荒野なめるな

©みなとそふと/しょこめざ製作委員会

荒野を歩くとタイトルにもある通り、ゲーム製作で何が何でも成功するというフリを盛大に行っておいて、結局やっていることはただのラブコメのキャッキャウフフだ。

金と名声を得ようと、ただ勝利のみを追求しているはずのヒロインは、盗作を堂々と宣言する素人をシナリオに据え、さらにゲーム製作のノウハウを知らないメンツを揃えてなお、勝利すると言い張っている。

メンバーの中には、自分の番まで何もしないのにただいるだけの声優がいて、自分の判断で勝手に他の人の仕事に手を加える自己中プログラマーもいて、何をしているかよくわからないアシスタントもいる。

一番意味不明なのが他でもない提言者であるヒロインだ。素人を集めるまではまだいい。野球の素人を集めて部を創設し、甲子園を目指すなどと宣うキャラクターもいるくらいだから、問題はない。(笑)

問題はヒロインが何を考えているのか分からないこと、発言と行動が矛盾していること、そして彼女自身がどんな仕事を請け負っているのかが全く分からないことだ。

大前提として、「荒野を目指す」と声高々に宣言をしておいて、「そのためには好きという気持ちだけじゃなくて覚悟が必要」とか宣っておいて、彼女自身が荒野を生き抜くための覚悟を全く見せていない。

メンバー集めの段階から既にそうで、メンバーが集まってからもやれ合宿だ海だと、覚悟や情熱が足りないようなイベントばかりをしている。

挙句の果てには、新しく仲間になろうとしていて情熱もある人材を、動機が弱いからと説教じみた言動で突っぱねる。

勝利したいという割に、それらしい行動を見せていないヒロインこそ矛盾だらけで「動機が弱いのでは?」と思ってしまう。

みんなを引っ張ろうという熱い思いがあるわけでもない。某野球漫画の主人公は闘争心丸出しで戦うからこそ、素人を集めた野球部でも勝ち抜き、目標達成にあと一歩まで近づくことができた。

当然主人公のずば抜けた能力があってこそなのだが、果たしてこの作品の主人公はどうだろうか。

発言が矛盾だらけ。うっすうすのビジョン。気迫も能力も感じられない。リーダー気質でもない。

そんなキャラクターで仲間はついてくるだろうか。もういろいろと最初の段階で間違えまくっているとしか思えない。

ツッコミどころといえば、6話の水着サービス回ではキャラクターの1人が刺青をしている。それにはもちろん誰も触れず、さも当たり前のように流されている。

原作でも彼女は刺青をしているという設定なのだろうか。わざわざ賛否を呼ぶようなグレーな設定を追加するだろうか。アニオリだとしたらなおさら質が悪い。

しかもその刺青は、次の旅館のシーンでは綺麗さっぱり消えている。刺青ではなくただのシールなのか。どうして何の関係もない設定を追加したのか。もうわけがわからない。

中盤から終盤にかけて、ようやくゲーム製作らしいことをしている。納期に間に合わせるために主人公を缶詰にして、みんなでサポートをして、キャラクターの声を収録して。

それまで出番のなかったキャラクターもしっかりと仕事をして、「みんなで」という部分が強調されてようやく団結心が見られるようになる。

本気でゲームを作って青春して。ようやくこのアニメの方向性が見えるような展開だが、それを最初からやるわけにはいかなかっただろうか、そもそも荒野に挑むという仰仰しい言い方にする必要があったのか。

土台の時点で間違えているような気がしてならない。荒野を目指すと言っておきながらその言葉に反する行動ばかり。

やるならやる。やらないならやらない。はっきりして欲しい作品だった。

雑感:ゲーム作れ

©みなとそふと/しょこめざ製作委員会

このアニメを観た誰もが口を揃えて「ゲームを作れ」と言うことだろう。

ゲームを作って金と名声を得て勝利したい。そうヒロインは1話で言った。好きという気持ちだけでは足りないとも。

それなら高校生ではなくプロを集めた方が良い。プロじゃなくてもプロに近いアマチュアに頼んだ方が良い。

それでも売れるとは限らない。そんなシビアな世界と自分で言っておいて、遊んでばかりでリーダーとしての情熱も見えない。

個々のゲーム作りへの情熱にも疑問を持ってしまう。「本当にゲーム製作に対し情熱や覚悟を持ってる?」と聞きたくなるようなキャラばかりだ。

そこを掘り下げもせずにゲーム製作が開始され、なんやかんやで揉めて、あっさり解決して、もはや茶番でしかない。

終盤には引き抜きという至極当然の行いを引き金に、ただただくだらない争いが勃発し、土下座だの退学だの奴隷だの、汚い言葉が飛び交う修羅場になる。

さらには、ヒロインの兄の借金をなぜか主人公たちが肩代わりさせられていたという驚愕の事実。

気分が悪くなるだけの中身のない争い。終盤で満を持して登場するクズ兄。

いろいろとツッコミどころ満載の作品だった。興味がある人はぜひ。




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