2011年

【2011アニメ】「TIGER & BUNNY」アニメレビュー





(83点)全25話

様々な人種、民族、そして『NEXT』と呼ばれる特殊能力者が共存する都市シュテルンビルト。そこには『NEXT』能力を使って街の平和を守る『ヒーロー』が存在した。仕事も私生活も崖っぷちのベテランヒーロー、ワイルドタイガー(鏑木・ T・虎徹)は、突然新人ヒーローのバーナビー・ブルックスJr.とコンビを組む ことに。二人は対立しながらも悪に立ち向かう…!TVアニメ「TIGER & BUNNY」公式サイト




能力を使って街を守るヒーローの活躍を描いたファンタジー×バトルアニメ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (83点)
完走難易度 易しい

サンライズのオリジナルアニメ。

監督はさとうけいいちさん。

ヒーロー

©BNP/T&B PARTNERS

街の平和を守るヒーローの活躍をアメコミ風に描いたバトルアニメ。

ただし、この作品はただのヒーローアニメではない。このアニメが特殊なのは「スポンサー」の存在がある。

実際にアニメの製作に関わっているスポンサー名が作品内でも数多く登場する。SoftBankや牛角、バンダイやDMMなど。

他のアニメでも、スポンサーをさりげなく露出させる作品はないこともないが、このアニメほど露骨に見せることはまずない。(笑)

いろんな企業やお店の名前が偽名になっているシーンを、アニメ好きなら良く見ることだろう。(笑)

もし実在するスポンサーを出す場合は、スポンサーが作品の一部として完璧に機能する必要がある。スポンサーが宣伝してます感はたちまち作品離れに繋がってしまう。

その点、この作品ではうまく作品の世界観に溶け込んでいる。

スポンサーのお金でヒーローは雇われ、ヒーローは対価に見合うだけの活躍をして、TVという媒体を通して、自分の名前と共に、スポンサーの名前も世界中に売り込まなければならない。

作中のヒーローはスポンサーのお金で生活をしている、いわば「雇われの身」だ。現実で言うところのスポーツ選手やタレントのような、限られた才能を持った人ができる華のある「職業」として描かれている。

凶悪犯との戦いはTVで生中継され、ポイント制によってランク付けされることで、人気不人気がはっきりと区別される。

そんな世界でベテランヒーローとして戦っているのが、主人公のワイルドタイガーだ。彼は「時代に取り残されたヒーロー」という描かれた方をしており、バディを組むことになる新進気鋭のバーナビーとは正反対のポジションになっている。

サッカーで言うところのロナウドやメッシが主人公、相棒となるバニーはエムバぺやハーランドと言ったところだろう。(サッカー知らない人ごめんなさい)

峠を越えたベテランと今をときめくフレッシュヒーロー。それぞれヒーローに対する価値観も異なる2人がどう歩み寄って、悪を成敗するのかを描いた作品だ。

バディで定番の凸凹コンビ。最初は仲が悪いとか、価値観が合わないとか,年齢が離れているとか、反対のキャラ付けから始まることで、お互いに歩み寄る過程をしっかりと描くことができる。

ただ人助けをして称賛を浴びるだけのアニメではない。常に大人の事情が付いて回り、自分のポリシーだけで生き抜くことはできない。

当然スポンサーの意向に沿うような行動やセリフ、仕事を求められることもある。あくまでスポンサーありきのヒーローだ。

アニメ製作とも重なる。アニメを制作する上で出資するスポンサーは、企画や作品の中身に対して、当然口出しする権利を持っている。

しかし、アニメに対しての知見に欠けた人がプロデューサーとして余計な口出しをしてしまうと、現場が混乱して作品が迷走するということも少なくない。

そういった「スポンサーとの付き合い方」みたいな生々しさも描かれている作品だ。誰のためのヒーローなのか。何のためにヒーローをやっているのか。

考えさせられるテーマがあり、もちろん大前提であるヒーローのカッコよさはしっかりとある作品だ。

能力

©BNP/T&B PARTNERS

ヒーローには「NEXT」という超能力が備わっている。この能力は天性のもので、選ばれた者しか使うことはできない。

その能力をいかにして使うのか。悪さをするためなのか、誰かを守るためなのか。

主人公は子供の頃の経験を生かして、目の前で能力を悪用する子供をなだめ、「誰かを守るために能力は使える」と優しく諭すことで事件を解決している。

自分がされたように、今度は大人になった主人公が1人の子供を救う。能力は何のためにあるのか。ヒーローに憧れた子供がまた次世代のヒーローとなる。

自分の経験があるからこそ生まれる優しい言葉。主人公は自分の「ヒーローとしての在り方」にこだわりを持っている。

ポイント稼ぎにも、視聴率にも、スポンサーへの配慮にも彼は興味がない。ただ目の前で困っている人を救うだけ。ヒーローの根本となるポリシーを大切にしている、まさにヒーローの鏡だ。

だがこの作品ではそれが異端となっている。お金じゃなくてポリシーと割り切れるほどシンプルで甘い世界ではない。

だからこそ、そんな環境で昔ながらのヒーロー像を守る主人公が一際輝いて見える。人気が無くても、カードが売れなくても、娘が自分を知らなくても、バディの引き立て役でも構わない。誰かを守るために能力を振るう。

しかし、ヒーロー全員がそんな崇高な理念を持っているわけではない。とある学生の女の子は、ヒーローを腰掛けとして利用している節があり、自分の夢をかなえるための踏み台としか思っていない。

能力を使うことに対しても人を助けるためではなく、あくまで自分を世間に認知してもらうための「パフォーマンス」でしかない。

そういった感じで、キャラクターごとに能力に対する考え方やヒーローとしての生き方にも違いがある。

ヒーローを多角的に捉えることができるキャラクターが登場することで、よりストーリーは深みを増している。

バディ

©BNP/T&B PARTNERS

この作品はいわゆる「バディもの」だ。

主人公は年季の入ったベテランヒーロー。スポンサーとかポイントを意に介さず、「ヒーローとしてどうあるべきか」という自分のポリシーに従順に行動する。

しかし、世間からは時代遅れの峠を越えたヒーローという扱いを受けており、人気も底辺。

反対に、相棒となるバニーは最も注目される若手ヒーロー。ヒーロー活動をあくまで「仕事」として捉えており、常に冷静沈着でファンサービスも忘れない。

勘に従って行動する主人公と理論に基づいて理性的に行動する相棒。仕事観の違い。性格の違い。年齢の差。

能力以外は正反対。まさに水と油。バディとしての相性は最悪に見える。

だが正反対だからこそバディものは引き立つ。

最悪の関係から徐々にお互いの価値観を認め、お互いに自分にない考えを理解していく過程があるからこそ、バディものは面白くなる。

それを上手くストーリーとして落とし込んでいる作品だ。最初は常に正反対で反りが合わない。

だが3話の爆弾騒ぎで初めて意思が通う。最後の導線で「上を切るか下を切るか」という定番の二択に対して、二人は同じ能力を持つ者同士、「上に蹴り上げる」という第三の選択肢を即興で作り出し、事件を解決する。

同じ能力を持つ2人だからこそ生み出せる解決策。「上vs下」で意見がぶつかる流れではあるが、まさかの蹴り上げるという斜めの上の発想。

「全く違うようで実は似た者同士かも…」なんてのはバディものの常套句だ。2人だからこそ生み出せる化学反応。これもまたバディものの醍醐味でもある。

生き方

©BNP/T&B PARTNERS

ヒーローだから市民を守る。そんな当たり前の図式はこの作品には当てはまらない。

様々な年齢のヒーローがいて、ヒーローの数だけヒーローに対する考え方や、人生設計にも違いが生まれる。

先述の氷使いの女子高生は歌手を目指している。学校に通いながら、バーで歌いながら、さらにヒーローまで掛け持ちしている。

ヒーローに対しての情熱はない。誰かを命がけで守る理由もない。ヒーローは歌手になるための踏み台でしかない。

しかし、それではいろいろと不都合が出る。なにせこの作品のヒーローは雇われの身だ。スポンサーあってのヒーロー活動。自分の夢のためだけにヒーローをするわけにはいかない。

そこでの葛藤が生まれたとき主人公に「なんで歌ってるの?」と聞かれた少女は「好きだから。皆に歌を聴いてもらいたいから。」と答える。

それに対して主人公は

「おんなじだ。俺は困っている人を助けたいからヒーローをやっている。動機なんてそんなもんだろ。誰かに認められるとかどうでもいいんじゃねえのか。」

と答える。どうしてヒーローをしているのか。どうして歌を歌うのか。それは誰のためなのか。

シンプルかつ一番大切な問い。ヒーローとしてだけではなく、キャラクター自身の「生き方」を深く掘り下げており、キャラクターごとの考えや生き方があるからこそ面白い。

そして最終的に、主人公のピンチに駆け付けた少女は「誰かを助けるため」という主人公をまねたシンプルな動機を手に入れる。

その表情には迷いはなく、主人公に対しての親愛の情も感じる。同時に主人公の立場も少しずつ頼れるベテランになっていく。

正義

©BNP/T&B PARTNERS

ヒーロー作品で必ずと言っていい程生まれる問い。それは「正義」だ。

正義とは何か。アニメに限らずヒーローものの作品では必ずこんな疑問が生まれる。

人を助けるためだったら何をしてもいい?人殺しをした人なら殺してもいい?敵の命と仲間の命のどちらが大切?自己犠牲はどんな場面でも当てはまる?

そういった問いに迫るようなキャラクターが登場し、ストーリーにアクセントを加えている。

主人公とバニーは人助けを何より優先する。そして人助け、救命の対象は犯人もまた含まれる。

しかし途中から登場する敵のNEXTは、「人殺しをした者は殺してしかるべき」という対極の思想を持っており、真っ向からぶつかる形になっている。

主人公たちの正義と敵の正義。分かりやすい二項対立の構図で描かれている。

彼の存在自体も伏線になっており、「ウロボロス」という謎の組織と共に徐々に黒幕へと近づいていく緊張感もある。

総評:HERO×バディ

©BNP/T&B PARTNERS

ヒーローものとしてもバディものとしても、非常に完成度の高い作品だ。

最初は仲が悪く、バラバラの方向を向いていた主人公と相棒。しかし、多くの修羅場を潜り抜けることで本物の「信頼」を勝ち取り、戦場で背中を預ける本物の相棒となる。

その流れが非常に綺麗なのはさることながら、ヒーロー活動だけではない顔をのぞかせてくれる作品でもある。

それぞれのキャラクターでヒーローに対する価値観は異なり、ヒーローになった理由も、生き方も違う。

ヒーロー=助ける。ヒーロー=正義の味方。とシンプルな図式で表せない面白さがある。

主人公は人命を何より重んじる。相棒はヒーローを仕事としてフラットな目線で関わっており、両親の復讐に執心している。ブルーローズは歌手になるという夢のためにヒーロー活動を利用している。

スカイハイは愛する人のために。ドラゴンキッドは離れて暮らす家族のために。

ヒーロー全員にスポットが当たることで「ヒーローみんなで」という一体感が生まれているから、自然と応援できる。

スポンサーを露出させるのも一見露骨に見えるが、嫌らしさはなく、慣れると気にならなくなる。もちろんどうしても違和感はあるが。(笑)

それでも、スポンサーが主張しすぎてアニメが壊れることは最後までない。現実のスポンサーはアニメとは違って、意外と理性的だったのかもしれない。(笑)

雇われの身ならではの不自由さがありつつ、でもやっぱりヒーローだから、ピンチに駆け付けるし、最後は勝つ。

分かりやすい勧善懲悪はすっかり心を少年時代に戻す。一度は誰もが夢見るヒーロー。自分を犠牲に誰かを助けようとする主人公・虎徹は男が憧れる漢だ。

普段はちゃらんぽらんな三枚目で、ここぞで締まらないというギャップも一貫しており、そのギャップが彼をより魅力あるキャラクターにしている。

決して最強というわけでもない。不格好でも人気が無くても彼のヒーローに対する熱い気持ちは色あせることはない。

最強の能力を持っていなくても、ポリシーがある限り戦い続ける。現実で言うところのキングカズ、ワンパンマンで言うところの無免ライダーに近いカッコよさだ。

反対に真面目で融通が利かない相棒のバニーとは水と油。だからこそ生まれるすれ違いがストーリーをより面白くしており、爆弾事件、そして凶悪犯との戦いで見せたような化学反応を起こすことができる。

やがて二人の正義が周りを変える。自分を犠牲にして仲間を、市民を守る二人の姿に他のヒーローも感化され、ヒーロー同士の絆も生まれている。

他のヒーローがピンチの時に、主人公とバニーが関わった中盤までの展開があることで仲間意識が生まれ、組織内での主人公の立場は徐々に上がっていく。

峠を越えたおじさんヒーローから、頼りがいのあるベテランヒーローに。25話通して変化と成長がしっかり描かれている。

不満があるとすれば作画。バトルが全体的にカット数が少なめで、日常シーンでの顔のパーツのバランスとか細かいところで手抜きが見られるシーンもある。

せっかくのヒーローが活躍するアニメなのに迫力がないせいで、イマイチ盛り上がりに欠けるシーンもある。

とはいえ、10年前の作品なので多めに見る必要はある。決まるところはしっかり決まっている。

声優陣も豪華な面々が揃っているし、もちろん演技も言わずもがな。ヒーローアニメの中でも指折りの面白さと言って差し支えない。

雑感:シンプル

©BNP/T&B PARTNERS

シンプルで面白い。一言でまとめるならそんな作品だ。

難しい用語も設定も伏線も何一つ存在しない。あるのは勧善懲悪のヒーローだけ。そう。このアニメはアンパンマンを夢中で観てた頃の童心を思い出させてくれる作品だ。(笑)

スポンサーというしがらみはある。けどそれは、正義の味方の行動まで縛ることはできない。悪を倒す。そのためにヒーローはいる。非常にシンプルだ。

悪は滅びる。正義は必ず勝つ。王道中の王道。だからこそ面白い。25話という尺を年柄もなく一気見してしまうほどの面白さだ。(笑)

スポンサーが出しゃばってくるのは名前だけだ。それも胸に刻んである現実と同じ企業ロゴだけが「スポンサー」の存在であり、アニメに不必要に介入してくることもない。

だから素直に楽しめる。むしろところどころの「スポンサーに翻弄されるヒーロー」という新たな境遇が、他の作品にはない独自のスパイスとなっている。

きっとこのアニメを観れば、不思議と懐かしい気持ちに浸ることだろう。興味がある人は是非観て欲しい。




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