2010年

【2010アニメ】「四畳半神話大系」アニメレビュー





(74点)全11話

京都の大学に通う、誇り高き三回生の「私」。薔薇色のキャンパスライフを夢見ながらも現実はほど遠く、実り少ない二年間が過ぎようとしていた。悪友の小津には振り回され、謎の自由人・樋口師匠には無理な要求をされ、孤高の乙女・明石さんとは、なかなかお近づきになれない。いっそのこと、ぴかぴかの一回生に戻って大学生活をやり直したい!もし、あの運命の時計台前で、ほかの道を選んでいれば——迷い込んだ不思議な並行世界で繰り広げられる、不毛と愚行の青春奇譚。TVアニメ「四畳半神話大系」公式サイト




並行世界で繰り広げられる大学生の日常を描いた青春アニメ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (74点)
完走難易度 易しい

原作は森見登美彦先生。

監督は湯浅政明さん。

制作はマッドハウス。

©四畳半主義者の会

入りから癖全開の作品だ。

主人公が一方的に語り部になり、ああだこうだ、と自分の身の回りのことについて言う。どことなく化物語っぽさを感じる作品だ。

その語り口調も独特で、小難しい表現を使ったり、わざと遠回しな表現をしたり、スピードも普通のアニメの1.5倍速くらいの速さでしゃべるもんだから、いつも以上に頭を使う。

この独特の語りが人を選びそうなところでもあり、個人的にはなんとなく着飾った感じがあんまり受け付けない。

ストーリーは、テニスサークルに所属する主人公がサークルの空気になかなか馴染めず、同じようにサークルに馴染めない友達の悪評の巻き添えを食らってしまう。

そこから、テニスサークルに入って友達と出会う前に時間が巻き戻り、新しいキャンパスライフが始まる、という1話完結型のストーリーになっている。

ギャグアニメでまさかのタイムリープ。理想の自分を追い求めて大学生活をやり直す。もちろんタイムマシーンなどは存在しない。

しかし、理想のキャンパスライフを求めてやり直すダメダメ大学生という視点は斬新で、ダメダメ大学生を通った人なら誰もが心惹かれる世界観である。(笑)

そんなやり直しを実現してくれる青春アニメで、独特な演出やセリフ回しで少し癖があるが、それでも引き込まれるには十分な1話だ。

規則性

©四畳半主義者の会

この作品には規則性がある。

主人公はバラ色のキャンパスライフを夢見るものの、何かしらの事情により大学2年間を無為に過ごし、後悔の元、1話が終わるというサイクルになっている。

斬新でとても面白い。こういった形式をとるアニメは現在も多くない。10年前ならなおさらで、1話ごとに時が戻るなんて面白くないわけがない。

このサークルでもダメで…あのサークルでもダメで…。好機を生かせなかった主人公は何度も大学生活をやり直す。

1話ごとに新しい主人公の顔が見え、1話ごとに新しいストーリーがあり、1話ごとに新しい出会いがあり、1話ごとに新しいキャンパスライフを見ることができる。

新しいことづくめだがオチは決まっている。オチが決まっているギャグアニメなど普通であればもはや見る価値などないが、このアニメに限ってはオチが分かっていてもついつい観てしまう。

オチというよりも「オチにどう至るか」で毎回違う楽しみがあり、新しさの中にも、主人公の悪友や後輩の女の子など毎度おなじみのキャラも登場することで、どことなく居場所のある安心感もある。

1話ごとに変化していくことと、作品を通して踏襲していることのバランスが絶妙で、1話ごとに繋がりがないようで実はしっかり繋がっていて、ストーリー性も抜群に面白い。

序盤の伏線が少しずつ回収され、1話進むごとに時間はまた遡ってしまうが、ストーリーはしっかりと前に進んでいる。

シミュレーション

©四畳半主義者の会

このアニメを観れば、大学生活がどんなものかを知ることができる「シミュレーション」的な楽しみ方もある。

それぞれの世界線で主人公は違う道を選ぶ。そこではどんな生活があって、先々で一体どんな結末が待っているのか。

アニメを観ながら大学生活がどんなものかをおおよそ知ることができる。

とある世界線では変な宗教団体につかまり、とある世界線では変な師匠に弟子入りして意味不明な代理戦争に巻き込まれ、とある世界線ではガチな自転車競技の部活でこってり絞られる。

これから大学生となる人は必須レベルで観ておいた方が良い。多少現実とはかけ離れている描写はあるが、それでもいくつかのエピソードは自他共に心当たりがある。(笑)

大学に入ってどのサークルに入るか迷っている人、サークル選びの参考にしたい人、大学時代に1つのサークルを貫いて後悔した人、いろんなサークルを体験した人。充実した人、そうでない人。

全ての人が主人公に共感できて、全ての人がウンウンとうなずきながら楽しんでしまう作品だ。

総評:味

©四畳半主義者の会

独特な味が楽しめる作品だった。

猫ラーメンなる謎のラーメン。あごが無駄に長い謎の師匠。歯科医師なのに英語教師な。ラブドール好きな8回生。人の不幸を楽しむ悪友。期待を裏切る恋愛成就しないEND。

それは人や物に限らず、作画もBGMも背景も声優さんの演技も演出もストーリーも。そのどれもが「味」だ。

そのこだわりがどう転ぶか。観る人によっては癖が強すぎると感じてしまうほど、いろんな部分で癖が出ている。

しかしそれが四畳半に住むしがない大学生像に驚くほどぴったりで、作品本来の面白さを存分に引き出している。

ストーリーも良くできている。希望に胸を膨らませて華のキャンパスライフをスタートさせる主人公が、結局どのサークルに入っても入らなくても、同じように責任者を求めて後悔の元に終わる。

しかし実際はつまらない生活など一つもない。それぞれに確かに「華」があり、とんでもない目に遭って後悔はしているがそのどれも、大学生でしか味わえない経験がある。

そのことに主人公は気づく。いろんな四畳半があるが、どの世界線でもそれなりに大学生をしている、と。

それは現実でも真理に近いと私も思う。

「サークルに入っておけば…」「あんなサークルに入らなければ…」「もっと他のサークルを経験しておけば…」

傍から見れば羨ましいような大学生活を送ったとしても、どこかで何かしらの後悔は生まれてしまうものだ。

しかし後悔を探すのではなく、楽しかったことを探す。そっちの方が生産的に決まっている。

とある世界線の主人公の場合は、過酷なロードバイクの練習でハアハア言ってきつそうにして、「膝の軟骨をすり減らしてまでなぜ練習するのか…」と文句を垂れているが、辛気臭い顔はしていない。

それどころか、「高性能のロードバイクを購入する」というもはや本末転倒なモチベーションでもってバイトを頑張り、練習そっちのけでかなりの時間を費やしてしまっているが、ちゃんと金ぴかの高性能のロードバイクをゲットしている。

欲しいものがあるから頑張って働いてお金を貯めて、ようやっとの思いで手が届く。いかにも大学生らしくて気持ちが良い。(笑)

本人は時間を無駄にした挙句、ロードバイクを盗まれて、挙句には濡れ衣を着せられてやはり後悔することになるのだが、見る側からすればそれほど悪い大学生活には見えない。

どの世界線でもそれなりに楽しんでいる。秘密組織に所属しても怪しい宗教団体に追われることになっても、それはそれで大学生ならではの貴重な経験だ。(笑)

そのことを11話通してこのアニメは教えてくれる。このアニメが伝えたいであろうメッセージをヒシヒシと感じることができる。

キャラもそれぞれに違う濃さがあって面白い。ビジュアルも正確も飛びぬけておぞましい小津というキャラクターは存在感が強烈で、CV吉野さんの怪演もあって魅力的なキャラクターになっている。

ねっとりとした声質といい、声からにじみ出る陰湿な感じといい、人の不幸を望むようなクズさ加減も絶妙に好きになれないキャラクターだった。(笑)

1話で使い捨てになるようなキャラもおらず、話をまたいで各所で登場し、それぞれに共通点や接点があり、回を追うごとにストーリーがより深みを増していく。

終盤のおよそ2話分くらいは主人公が四畳半にいる絵が続く。四畳半の世界に閉じ込められた主人公が未来のことや脱出法についてあれこれ思いを巡らす。

そして、その2話ほどでこれまでのストーリーに繋がりが見えるようになる。いわゆる伏線回収というやつだ。

主人公の語りによって様々な出来事が繋がり、主人公はあるべき青春の答えを見つける。

最後は誰もが望んだENDにはなっていないが、きちんとこのアニメらしく締めくくられている。満足感がある。

こういった独特な味がある作品は今時珍しい。良くも悪くも、量産型の時代になった昨今に一石を投じるアニメ作品だ。

雑感:メッセージ性

©四畳半主義者の会

ギャグアニメながら強いメッセージ性が感じずにはいられない作品だ。

ところどころの言い回しでクスッとしてしまうギャグアニメの側面はもちろん、何より「華の大学生活などありはしない」というメッセージを強く感じる。

誰もが思い描く華のキャンパスライフ。

男女比が絶妙で、まったりとした空気の中、女の子と仲睦まじく談笑して、それなりにバイトして、ゆくゆくは彼女を作ってデートをして、それなりに講義に出席して単位を取る。

そんなキャッキャウフフな大学生活を思い浮かべがちになる。しかしそうはなかなかならない。ただしイケメンに限るというやつだ。(笑)

だがたとえ思い描いた通りに行かなくても、たとえ自堕落な大学生活になったとしても、それなりに楽しいし、それなりに有意義な時間だったと思い出せるものだ。

未来に訪れる大学生活に夢を持っている人は、たとえ夢通りにならなくても、楽しみを見つけて全力で楽しめば、後悔はあってもそれなりに良い思い出として残る。

「好機を逃さずにつかめ」

毎回出てくる占い師のおばあさんはこう主人公に諭す。一度きりの好機をつかむことは、人生に置いても本当に大切なことだ。

過去に過ぎ去った大学生活に後悔を持っている人は、今一度考え直してほしい。サークルにも入らず誰とも友達になれず。そんな私でもそれなりに楽しかった。(笑)

きっと「楽しさを見出す」ことが大学生活に限らず、人生を豊かにするヒントなのかもしれない。そう考えると、四畳半というごくごく小さい世界観なのにメッセージは壮大だ。

大学に何かしらの縁がある人はぜひ見て欲しい。きっと未来や過去の大学生活に思いを馳せることができるだろう。




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