2018年

【2018アニメ映画】「未来のミライ」アニメレビュー





(44点)

『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』―
次々に大ヒットアニメーション映画を生み出し、国内外で今もっとも注目される映画監督・細田守。最新作『未来のミライ』で挑むのは、 甘えん坊の男の子“くんちゃん”と未来からやってきた妹“ミライちゃん”が織りなすちょっと変わった「きょうだい」の物語です。「未来のミライ」公式サイト




未来からやってきた妹・ミライちゃんが織りなす兄妹の物語

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (44点)
完走難易度 易しい

細田監督作品。

制作はスタジオ地図。

総評:微妙


まずは当然だが、細田守監督らしい作画と演出が随所に見られる。

と言っても、自分はあまり細田監督に精通しているとは言えない。ぶっちゃけ「僕らのウォーゲーム」くらいしかちゃんと観たことがない。

金曜RSで時かけやサマーウォーズは腐るほど放送されてきたが、そのほとんどを華麗にスルーしてきた身だ。

だかららしさは全く分からない。一アニメファンとしてレビューをする。

相変わらず作画は綺麗だ。引きのアングルからでも分かるくらい細かいところまで行き届いており、かなりの時間をかけて丁寧に作られた作品だというのが伝わってくる。

作画で無理矢理作品の世界に引きずり込まれる。まあアニメ映画というのはどの作品も大抵そうだが、しっかりと絵で見せることで没入感を高める。

そして、次に気になるのが声優の演技力だ。まずメインでは本職の声優を一人も雇っていない。

これはアニメ映画だ。アニメのキャラクターに声を吹き込むために日々努力している人達を差し置いて、演技力では確かに申し分ないとはいえ、普段ドラマなどに出演している人達をメインに据える。そこが大いに疑問だ。

とはいえ、選ばれた人達に罪はない。主人公のくんちゃんを「君の名は。」の三葉の声でお馴染みの上白石萌音さんの妹・萌歌さんが担当しており、姉役には黒木華さんが抜擢されている。

黒木さんのイメージは、ドラマ「リーガル・ハイ」でライバルの法律事務所で働いていた女性役というイメージだ。

彼女らをメインに据えて、ベテランの役所広司さんや宮崎美子さん、そしてこちらは、リーガル・ハイで助手役を演じられていた新垣結衣さんと結婚された、星野源さんが担当するという豪華なサブメンバーになっている。

これだけの役者を揃えるのは、相当なお金が必要になりそうだ。(小並感)といった感じだが、肝心の演技力はやはり俳優畑の人達とあって、お世辞にも上手いとは言えない。

キャラクターに魂が宿っておらず、ただセリフを読み上げているだけに聞こえるシーンもある。

俳優さんたちの素朴な声というのは、実際にドラマでも発揮されているものだが、「マイク近すぎない?」と思うほど籠った声になっていたりして、空気に放って消えるような自然な声には聞こえない。

せっかく作画は素晴らしいのに、キャストさんの演技で少し現実に引き戻されてしまう。序盤はそこが少しもったいない。

だが喉が開いてあったまってくる中盤以降は、慣れもあって演技の方は特に気にならない。そこで初めてストーリーに目を向けることができる。

恐らく細田監督らしさであろう現実の中に潜むファンタジー世界。庭が異世界と繋がっているという独特の世界観が印象的だ。

そこで擬人化したペットの犬と出会ったり、成長した姉と出会ったり、生前のひいじいじと出会ったり。自分と血の繋がっている人物の過去や未来に触れる。

昔の母親と家をめちゃくちゃに汚したり、ひいじいじと馬に乗ったりバイクに乗ったり。そうした非日常の経験を通して、くんちゃんは少しずつ大人になっていく。

最初のくんちゃんは言い方は悪いが、クソガキだ。親の言うことを聞かずに部屋を汚し、生まれたばかりの妹を殴ったり、妹じゃないと言ったり、構ってもらえないとすぐにへそを曲げたり。

親を困らせる典型的なクソガキだ。(笑) だが同時にそれは子供の特権でもある。自分のしたいように何でも自由にできて、自分の感じたままに表現できるのは子供時代だけだ。

だがそうは言っても、親目線で言ったら困るものは困る。自由だからといって放任主義にするわけにはいかない。親は悪いことをする子供をしっかりと叱る義務がある。

だが叱るだけでもなかなかうまく行かない。くんちゃんのお母さんは悪いことをするくんちゃんを叱る。だが「鬼ばば」と言われたりして、なかなか「ちゃんとした大人になって欲しい」という本心までは子供には届かない。

そこまで汲み取れる子供はそうはいない。だがそれでも口酸っぱく言い続けなければいけない。そうして、鬼ばばというのはより完成されたものになっていく。(笑)

子供を叱るのは大切だ。だが子供を経験する誰しもが知っているとは思うが、叱られたり怒られたりしても素直に反省して、次に活かそうと思わないのもまた子供だ。(笑)

そんなときに有効となるのは作中にもある通り、経験をさせることだ。何でも自分の思い通りになるわけではない。自分が生きているのは当たり前じゃない。自分が中心じゃない。というのを、身をもって体感することが一番早い。

命からがら特攻隊から生き延びたひいじいじが繋いだ命。ひいばあばとの出会いから生まれたお父さん。お母さんとの出会いから結婚。そうして初めて生まれてくるくんちゃんとミライ。

何でも最初はある。自転車に怖がって乗れないくんちゃんにひいじいじは優しく教える。何でも最初はあるんだから、失敗を怖がってはいけない。

そうした教えからくんちゃんは学び、少しずつ大人になり、最後にはみらいちゃんを妹として一緒に歩んでいくという、お兄ちゃんらしい姿を見せてハッピーエンドになっている。

テーマとして見せたい部分はなんとなく伝わる。だがファンタジーアニメにしては、終始スケール感が微妙すぎる。

アニメ映画らしい派手な演出だったり、展開だったりがない。どこでピークを迎えるのかと楽しみにしているうちに終わってしまっている。

僕が知っている細田作品には必ず最後に見せ場がある。有名なセリフも生まれている。そんな劇的な手に汗握るようなシーンがないままに終幕しており、エンターテイメントとしてはあまりに微妙だ。

それに未来のミライちゃんは、果たしてどれほどの出番があったのだろうか。最初は犬。次にミライちゃん。母を挟んでひいじいじ。ミライちゃんは思ったより出番が少ない。

もっとこう、ミライちゃんがストーリーを引っ張っていくような、それこそくんちゃんが成長するにしても、ミライちゃんの手引きの元で成長する流れが一番飲み込みやすい気もするのだが、結局は「未来」よりも「過去」を知ることが成長のトリガーになっている。

後は過剰なほどの「クソガキ感」がこの作品の好き嫌いを大きく分けそうだ。くんちゃんにしろ昔のお母さんにしろ、わざと家中散らかし回って親を困らせた挙句に、怒られたらすぐに謝るような矛盾した行動を取るだろうか。

自分が構ってもらえないからといって喚き散らして、まだ生まれたばかりの赤ちゃんに八つ当たりをするだろうか。子供心にも赤ちゃんが繊細なことくらい分かるはずだ。

反抗期で物にあたって散らかすみたいなことは分かるのだが、いくら常識の範疇を越えた子供だからといって、過剰に幼く描写しているシーンが多すぎる気がしている。

クソガキを愛せる聖人のような心の持ち主なら作品に入れるかもしれない。もちろん家庭環境などの様々な要素によって、子供の成長というのも大きく変わるし、あくまで自分の経験則で見ているので、外では優等生でも家ではみんなクソガキなのかもしれない。

壮大なテーマを感じたが、いかんせんそれをフィルムに落とし込む作業で、少し迫力に欠けたかなーという印象だ。

雑感:命のバトン

「家一軒と庭一つ、それからどこにでもあるたった一つの家族を通して、
生命の大きな循環、人の生の織り成す巨大なループを描き出したい。
最小のモチーフを用いて、最大のテーマを語り切りたい。
エンターテインメントの作法を用いて、
新しい家族のための、新しい表現を拓きたい。
一見して穏やかに見えて、
実は、大いなる野心を秘めた作品なのです。」

親から子へ伝わるもの。親と子は全く別の生き物に見えて、実は同じ視点を持っている。こう細田監督はコメントしている。

作品のテーマは壮大でかつ説得力がある。みんな親に怒られてきた。その度に自分を理解してくれない遠い存在だと思った。

でも違う。親も同じような失敗を子供時代にしている。それでも怒っている。自分ができなかったことでも怒る。そうして大切なメッセージが世代を超えて子から子へ、命とともに伝わっていく。

だがそれを伝えるためのストーリーや演出が、少し物足りない感じがしたのが残念だ。

細田監督の新作アニメーションが今夏封切りとなる。タイトルは「竜とそばかすの姫」。監督曰く「ずっとやりたかった」作品らしいのだが、一体どんな作品になっているのか。

興味がある人は予習がてらにこの「未来のミライ」を是非とも観て欲しい。




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