2016年

【2016アニメ】「彼女と彼女の猫- Everything Flows -」アニメレビュー





(80点)全4話

ある夏の一番暑い日、彼女と、彼女の飼い猫である“僕”の暮らしが始まった。彼女は、通っている短大の卒業を控え、就職活動に追われる毎日を送っている。いつも頑張っている彼女にとって、“僕”と過ごす時間は、互いにひと時の安らぎを感じられる、とても大切なものだった。しかし、家族のことや、友達のこと、将来のこと…いろいろなことがうまくいかず、彼女は次第に傷つき、立ち止まってしまいそうになる。それでも彼女は、背筋を伸ばし、今日も扉を開けて外の世界へと踏み出していく。そんな大好きな彼女のことを、“僕”はいつまでも見守っていたいと思っていた。TVアニメ「彼女と彼女の猫-Everything Flows-」公式サイト




猫と「彼女」の暮らしを描いた短編ドラマ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (80点)
完走難易度 超易しい

原作は新海誠さん。

監督は坂本一也。

制作はライデンフィルム 京都スタジオ。

総評:温かい

©Makoto Shinkai / CWF・彼女と彼女の猫EF製作委員会

心が温まるような優しい世界観のアニメだ。

就活真っ只中の大学4年生。何をやっても上手くいかない。落ち込む彼女を傍でそっと見守る猫。

猫が狂言回しをするという珍しい作品で、猫視点で彼女の現状や気持ちを察して、言葉にできない気持ちをナレーションで視聴者に伝える。

会話はもちろん発生しないので、その気持ちは一方通行だ。観ている私たちは知っているが、彼女は飼い猫がどれほどご主人のことを大切に想っているかを知らない。

そこが1つの「エモい」ポイントだ。お互いにお互いを思う気持ちはあれど、双方向のコミュニケーションにはならない。

けれど、何となく繋がっているという不思議な構図が出来上がっている。猫は言葉がなくても傍に行くだけで優しさが伝わるし、主人公は就活も家族との関係も上手くいかずにストレスをため込んでいる中、猫との空間だけは癒しとなり、一晩眠れば、またスッキリとした笑顔で家を出ることができる。

人間と猫。会話が生まれなくてもお互いに通じ合い、辛いことがあっても前に進むことができる。

明くる日も明くる日も落ち込んで帰ってくる彼女。実家とはあんまり穏便な別れではなく、半ば強引に一人暮らしを始めたせいで、母親とは少し軋轢が生まれ、大切なルームメイトは一足早く就職したのに、彼女は就職先が決まらずに、1年就職浪人することが決定する。

何もかもうまくいかない。母親以外で頼れる人もいない。そんな中で猫だけがいつも傍にいて励ます。もちろん言葉は発せない。

だがそれも限界が近づく。年老いて運動能力が落ち、飼い主の傍に行くことも出来なくなる。気持ちを伝える手段がなくなっていく。

お互いに通じ合うことができる唯一の尊い時間が徐々に失われていく。寿命という避けられない別れ。

だが別れは「永遠」ではなく、いつかまた違う形で巡り合うもの。別れは悲しいことではなく、希望も持っている。そういったメッセージも最後には込められている。

非常に綺麗だ。人間と猫。出会いと別れ。そして来世での再会。1話6分というごくごく短い尺の中にストーリーが詰まっており、愛と希望が詰まっている。

私はペットを飼ったことがないので分からないが、ペットを飼っている人ならば、より主人公の気持ちに寄り添うことができるかもしれない。

会話が出来なくても「ただいま」を言う相手がいて、悲しいときに傍にいてくれる。それはたとえ人間でなくても、非常に幸せなことなのではないだろうか。

人間と動物が言葉以外で心を通わせる優しい物語。原作は今や巨匠となった新海監督。新海監督らしい日常に潜む「ささやかな幸せ」が何とも心に響く作品だ。

雑感:原点

©Makoto Shinkai / CWF・彼女と彼女の猫EF製作委員会

なんと基となった原作は、新海監督が1999年に日本ファルコムに勤めながら個人で制作した5分間の短編アニメーションであり、もしかしたら新海監督の原点といえる作品かもしれない。

当時制作会社に勤務する傍ら、この作品を作っていたのかと思うと、非常に感慨深いものがある。

人間とペットが傍にいて思いを通わせる尊い時間。社会の厳しさと乗り越えていく強さ。固く結ばれた家族の絆。

サブタイをかっこよく日本語訳すると「万物は流転する」あたりだろうか。別れの寂しさもきっと次の出会いの始まり。悲しみを背負いながらも前に進む大切さ。

短い尺に大切なメッセージが一杯詰まっており、演出などの表現方法も含めて、非常にハイクオリティな作品だ。

気になる人は是非とも観て欲しい。特に新海監督ファンは必見だ。




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