2020年

【2020アニメ】「かくしごと」アニメレビュー





(90点)全12話

ちょっと下品な漫画を描いてる漫画家の後藤可久士。一人娘の小学4年生の姫。可久士は、何においても、愛娘・姫が最優先。親バカ・可久士が娘・姫に知られたくないこと。それは……自分の仕事が『漫画家』であること。自分の“かくしごと”が知られたら娘に嫌われるのでは!?“愛と笑い、ちょっと感動のファミリー劇場がはじまる――”TVアニメ「かくしごと」公式サイト




「かくしごと」を巡る親子愛を描いたホームコメディ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (90点)
完走難易度 超易しい

原作は久米田康治先生。

監督は村野佑太さん。

制作は亜細亜堂。

かくしごと

©久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会

愛する1人娘に「漫画家」をしていることを「隠す」父親の奮闘を描いたホームコメディ。

主人公が描いている漫画は下ネタ満載のギャグ漫画。純朴な娘に知られまいと、あの手この手を駆使して、頑張って娘をあらゆる「穢れ」から守ろうとする父親。

その様が実に滑稽だ。自宅と倉庫と仕事場を別々に分け、原稿を何が何でも見つからないようにしたり、娘と仕事モードで会う時はわざわざスーツに着替えたり、漫画の仕事そっちのけで、娘に隠すことばかりに奔走している。(笑)

編集者が間違えて娘がいる家に行ってしまったり、娘を溺愛するあまりにヘラクレスオオカブトを買ったり、教師とのすれ違いコントが始まったり、「娘にばれない事」を中心にしてあらゆるすれ違いやギャグが展開されている。

正直腹がよじれるほど面白い。可愛い娘のためにストーカーまがいなことも平気でするし、漫画家であることを命がけで守ろうとしたりするのも、全て可愛い娘のためだと思うと、自然に主人公が可愛いパパになっている。

全ての行動が娘のために帰結する。過保護な親の典型だがそれが面白い。カレー作りとあらば娘のために必ず美味しくなるように一流のシェフを呼ぶし、カブトムシを捕まえるとあらば、必ず捕まえられるように木の低い場所にヘラクレスオオカブトを用意する。(笑)

勝手に暴走して勝手に勘違いを起こして自滅する。隠し事を押し通す一点から広げて、しっかりと笑いになっている作品だ。

そのギャグの中心にいるのが、アンジャッシュもビックリの「すれ違い」コントだ。主人公の何気ない一言で女性が勘違いして、修羅場のような光景が出来上がったり、先生がデートだと勘違いしたり、プロポーズを受けたと勘違いをしたり。

主人公の発言が勘違いを生み、そこからストーリーが生まれている。

漫画家

©久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会

主人公の仕事は漫画家で、アシスタントを複数人抱える結構な売れっ子作家でもある。

漫画家の仕事場の風景が度々描かれている。漫画家がよく言うセリフとか、編集者の仕事とか、漫画家のあるあるが安野さんのナレーションによって肉付けされており、そのささやかなうんちくが意外と心地いい。(半分は安野さんの癒し効果)

漫画家の苦悩がつづられ、普段どんなことに悩んでいるのかを知ることができるのは貴重な機会だ。

ストーリーの広げ方も絶妙に巧い。5話の最初のエピソードでは、新人賞の審査員という持ち回りの仕事が主人公にやってくる回になっている。

最初は「めんどくさいからやりたくない」という主人公だが、娘が「当番でも誰かがやらなきゃ社会が回っていかない」と言ったセリフをそのままパクッて、後日アシスタントに自慢げに話し、結局仕事を引き受けることになる。(笑)

当の審査はいろいろあって、一生懸命批評したつもりが、後に編集の改編によって結局バッシングを受けることになる。そこでその編集に対して「嫌な当番引き受けてるのに、なんだこの仕打ちは!」とキレる。

それに対して編集も「僕も嫌な当番引き受けてます」と言う。実は主人公も裏では編集の「当番制」であることが判明する。編集の間では主人公が持ち回りになっている。

漫画家が請け負う審査員の仕事から当番制へと話題が発展し、めんどくさい当番をこなしているつもりが、自分も結局は当番だったというオチ。非常に綺麗だ。

月刊少年マガジンで連載していた漫画らしいのだが、恥ずかしいことに初見だ。この作品を今の今まで放っておいた自分を殴りたいほど面白い。

未来

©久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会

このアニメは1話ごとに、Cパートで必ず「未来」へ飛ぶ構成になっている。

姫が大人になり、鎌倉の家を訪ねる。そこには主人公の姿はない。

主人公だけがいない未来で、他のキャラクターが昔の思い出を懐かしそうに話す。いろいろと想像を掻き立てられる構成になっている。

本編でのギャグとはつり合いが取れない程、センチメンタルな空気感が醸し出す寂寥感。「もしかして主人公は…」とあらぬ妄想も掻き立てられる。

単純に上手い。時間軸をずらして過去や未来が少しずつ明らかになって、一本の線になっていく作品は多々あるが、12話構成でそれをやるのは結構勇気がいることだと思っている。

結局その「未来の描写が何だったのか」を最終的に示す必要があるから、安パイを取る作品は手を出さない手法だ。そもそも原作がそういう形なのかもしれないが。

いずれにしろ、未来がどうなるか気になるのも過去、つまりA・Bパートの面白さがあってのもの。

過去の思い出が輝くから未来の光景が意味を持つ。そこをはき違えると失敗する。

その点、このアニメでは未来から見た過去、つまり主人公と10歳の娘・姫のありふれた日常と共に、漫画家だとばれないように過ごしながら、姫をとことん溺愛する父の絵がとても愛しく、かけがえのない時間として描かれている。

総評:感動

©久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会

下ネタ漫画家が愛する娘に仕事を隠す物語。ギャグアニメの枠を超えた胸に響く感動ストーリー。

ギャグシーンでは思いきりふざける。けど家族の団らんは家族の大切な憩いの場。その団らんが最終回へと綺麗に繋がっている。

パロディには遠慮がない。各話のタイトルが地味にアニメタイトルのパロディになっており、結構危ない橋を渡っている。(笑)

神谷さんのお家芸でもある大声でのボケやツッコミがあり、それに対して温かい目で見守るアシスタント達がいて、ぬるりと会話が進んでいき、家に帰ると一児のパパの顔になる。

いや、むしろ仕事と家の境目はない。常に最優先事項にあるのは娘の姫。仕事をほっぽいて娘の旅行をこっそりのぞいてしまうくらい溺愛している。(笑)

一緒に誕生日パーティーを開いたり、家族会議をしたり、ご飯を食べたり、そこにはありふれた家族の光景があり、2人が堅い絆で結ばれていることがはっきりと分かる。

そして、各話のCパートでは必ず未来の「姫」視点に飛ぶ。未来の姫がアルバムを見たり、パパが作った段ボールを見つけたり、父がいない家で昔を偲ぶシーンがある。

そこから連想される父の死。各話の積み重ねが最終回へと繋がり、感動のラストへと繋がっていく。

ここまでありふれた日常が尊いものだとは。幸せな日常は永遠には続かない。絶対に終わりは来る。

Cパートで小出しにしていた「父の死」という匂わせが、日常シーンをより価値あるものにしている。「この幸せな日常がもしかして…」と気づけばのめり込むような構成になっている。

家族っていいな。と素直に思う。仕事から疲れて家に帰れば、可愛い娘が玄関先で出迎えて「おかえり」と言ってくれる。今までピンと来なかった光景がこれほど幸せに満ちているとは…。自分が年を取っていることを実感できる作品でもあった。(笑)

どこまで行っても日常でしかない。ギャグシーンはともかく、家での家族の団らんは何も起きない平和そのもの。だがそれがいい。何も起きないことこそ本当の幸せなのだと、この作品は教えてくれる。

見た人の心を漏れなく幸せで一杯に満たす作品だ。隠し事は描く仕事。騙す嘘ではなく優しい嘘。これは家族の絆を描いた素晴らしい作品だ。

雑感:アッパレ久米田先生

©久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会

このアニメの原作は、月刊少年マガジンで連載されていた久米田先生の漫画だ。

久米田先生といえば「さよなら絶望先生」や「じょしらく」でも有名なお方だが、まさかこれほど素晴らしい作品も手掛けられていたとは。やはり不世出の作家だ。

さらに「ハヤテのごとく!」や「トニカクカワイイ」などで有名な畑先生は、久米田先生のアシスタントをやっていた時期もあり、他の数々の作家に大きな影響を与えた人物でもある。

かくしごとの原作をリアルタイムで追うことができなかったのが心残りだ。これほど素晴らしい作品だと知っていれば、コンビニに寄る労力を惜しむことはなかっただろう。

ちなみに久米田先生自体が下ネタチックな漫画を描く作家であり、まさに主人公と被るところが多々ある。もしかしたら、自分の経験を参考にした作品なのかもしれない。

原作のパワーがあり、制作陣の練りに練った構成や演出があり、娘を大切にする父親の姿があり、捧腹絶倒のすれ違いギャグがある。

笑いあり涙あり。最後には心が浄化され、清らかな気持ちで明日を迎えられる。そんなアニメだ。

興味がある人もない人も是非とも観て欲しい傑作アニメだ。




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