2019年

【2019アニメ】「真夜中のオカルト公務員」アニメレビュー





(22点)全12話

フツーの公務員になったはずの新宿区役所職員・宮古新が配属されたのは、東京23区すべての区役所に人知れず存在する「夜間地域交流課」だった。そのお仕事は、人ならざる者が関与するオカルト的事象の解決。先輩で課のリーダー榊京一、オカルトマニア姫塚セオに連れられて人の世の理を超越した存在と対峙しに、夜な夜な出勤する。TVアニメ「真夜中のオカルト公務員」公式サイト




オカルトを対処する公務員を描いたファンタジーアニメ

ストーリー
作画
面白い
総合評価 (22点)
完走難易度 超難しい

原作はたもつ葉子先生。

監督は渡邊哲哉さん。

制作はライデンフィルム。

公務員

©2019 たもつ葉子/KADOKAWA/「真夜中のオカルト公務員」製作委員会

「アナザー」と呼ばれる人外生物を対処する課に配属された新人公務員が主人公のファンタジーアニメ。

まず第一印象で気になるのは、「公務員の仕事なのかどうか」だ。

オカルトに対処すると言えば、まずは霊媒師あたりが思いつく。後はトラブルを対処するという観点で言えば、警察も当てはまる。

だが、この作品では公務員の仕事になっている。夜間に出勤して「今日は外勤だ」と言われ、早速種族同士のいざこざに巻き込まれている。

公務員というところにこだわりがあると思うのだが、元公務員の立場から意見させてもらうと、これは公務員の仕事ではない。(笑)

公務員は机に向かう仕事がほとんどだ。それこそ何かイベントごとでもない限り、外勤になることは滅多にない。

もちろん地方の役所に勤務していたので、新宿のような都会では外勤がしょっちゅうなのかもしれないが。

中盤ではアナザー専門の「刑事」がいることも明らかになるのだが、丸ごと刑事に仕事をぶん投げることもできるのではないだろうか。

とある女子高生が行方不明になった事件が解決した後に「これ以上は公務員の仕事の範疇を越えている」と、とある公務員が刑事に言うのだが、行方不明の事件を扱っている時点で範疇を越えてはいないだろうか。(笑)

どうやらこの作品での刑事の仕事は「人知を超えた法で裁けないオカルト事件の被害者に納得できる嘘をでっちあげること」らしいのだが、どうも公務員の仕事か刑事の仕事かの境界線があいまいだ。

まあそれもマジレスに過ぎない。このアニメでは公務員がオカルト問題に首を突っ込むというコンセプトが既にある。それを否定する余地はない。(笑)

主人公には秘めた力があることが明らかになる。主人公補正で「アナザーと会話することができる」という能力が備わっている。彼は安倍晴明の子孫ということも明らかになっている。

それがどう影響していくのか。オカルトと対話できる貴重な人材として活躍の場も増えるだろうし、それによって危険な目に遭うこともきっとあるだろう。

腑に落ちない部分は多々ありつつも、シンプルで非常にとっつきやすい作品という第一印象だ。

エグい

©2019 たもつ葉子/KADOKAWA/「真夜中のオカルト公務員」製作委員会

やはり公務員の仕事というより、ゴーストバスターと表現する方がしっくりくるほど、身体を張った仕事をこなしている。(笑)

3話には生きた人間を食うゾンビのようなアナザーと戦うシーンがある。生きた人間を食うゾンビと戦う公務員など聞いたことがない。(笑)

公務員ではなく、警察や霊媒師ではダメなのだろうか。公務員の定義が回を追うごとにますます怪しくなっている。

描写もファンタジーというより、ダークファンタジーに近いものになっている。さすがに度を越したグロ描写はないが、それでも真夜中に観たらトイレに行けなくなるくらいの怖さは随所にある。(笑)

それが人を選ぶ原因になりそうな作品だ。安倍晴明の子孫で、アナザーと対話できる唯一の存在。だがそれによって、危険な目に遭うことが圧倒的に多く、その割に主人公は別に、本家の安倍晴明のような陰陽師的な力はないので、ただ交渉を試みるのみ。

アニメ的に絵面が地味だ。アナザーが出現しても、それに対処する有効な手立てを人間側は持ち合わせていない。せいぜいスタングレネードを投げて目くらましに使ったり、煙幕を張ったりするくらいだ。

世界観と実際の描写がかみ合わない気持ち悪さのある作品だ。真夜中に暗躍するヒーローであれば、ハードボイルドでかっこよく決まりそうなものだが。

交渉

©2019 たもつ葉子/KADOKAWA/「真夜中のオカルト公務員」製作委員会

主人公はアナザーと会話できる唯一無二のスキルを持つ。その能力を使い、交渉役のようなポジションになっている。

しかし、そう易々と交渉は成功しない。アナザーと会話できるからといって、心を通わせることは出来ない。そこが肝となっている。

人間同士でも話の通じない人はいる。同じ言語を解するからといって、会話が常に成り立つわけではない。他人の迷惑を考えられない人に「他人の迷惑を考えろ」なんて言っても、大概は通じない。

その構図がまさに主人公とアナザーの間にある。パンドラの箱という喪失感を集めるアナザーと対峙した主人公は、自分が「会話できるだけ」という無力感に苛まれる。

パンドラは結局、日本での悪さを一通りし終えて欧州へ渡るのだが、彼女の根本を変えることはできなかった。交渉が一筋縄ではいかないことを主人公は痛感する。

他人を変えることの難しさ。このアニメの場合は、アナザーの悪事を止めさせることの難しさみたいなものにスポットが当たり、主人公は自分ができることの限界を知りながらも、限界を越えようと抗う姿が描かれている。

限界を感じても立ち止まらないところに、ようやく主人公らしさが出てきている。まあ安倍晴明の子孫なのだから、何かしらの能力が先天的に備わっていると考える方が自然だが。

理屈が通じないアナザーを変えることは容易ではない。だけど変えることができる可能性を持っているのは自分しかいない。

けど「交渉の余地あり」と主人公が判断しても、例えば途中から登場する都庁の人間からすれば、「甘さ」以外の何物でもない。

もし交渉に失敗したり、交渉が上手くいったと勘違いした結果、一般市民に危害が及んだらどうするのか…

分かりやすい葛藤だ。鬼滅の刃で言うところの、炭次郎が「鬼にも相応しい最期を」と考えるように、主人公もアナザーを単なる「害」とみなさずに、交渉し、心を入れ替えてもらうことをポリシーとしている。

それは主人公なりの「正義」だが、都庁勤務のキャラクターからすれば「悪」だ。

都庁男は「有無を言わさずに処分することが最善」と信じて疑わない。耳を貸すことは足元をすくわれること。ならば一般市民に害が及ぶ前に殺してしまう。一般市民の安全を考えたら間違いではない。

どちらの「正義」にも良し悪しがあり。善悪で区別できない。主人公がその葛藤をどう乗り越えていくのか。

ようやく中盤以降はアニメ的な面白さが乗ってくる作品だ。

総評:不気味

©2019 たもつ葉子/KADOKAWA/「真夜中のオカルト公務員」製作委員会

アナザーというオカルト的な存在。その不気味さばかりが際立つ作品だ。

ビジュアルはもちろん、ボイスチェンジャーで変換したような機械音が乗った声は独特で、さらにそこに、ストーリーのエグさも相まって不気味さを助長している。

それ自体はダークファンタジーならではの特徴だ。だが、それと相反する要素が個人的には足りないと感じた。

それは不気味さを緩和するギャグなのか、それとも癒しをもたらす清涼剤となるキャラクターなのか。とにかく不気味さを助長するばかりで、起伏に乏しいストーリーになってしまっている。

やりたいことは分かる。終盤で盛り上がったように、自分のポリシーに対する葛藤は、主人公が特殊な力を持っているが故の悩みだし、最後は主人公らしいやり方を貫き通したところにも好感が持てる。

主人公の存在がアナザーとの懸け橋になり、従来とは違った形でアナザーと共存していく道を探す「前向きな未来」へと繋がるような締めくくりになっており、流れは綺麗だ。

だが過程に「幅」はない。主人公を駆り立てる大きな目標があるわけでもなく、何か大きな事件や事故に巻き込まれるわけでもない。

あくまでこの作品で言うところの「公務員の領分」の中で、与えられた仕事をこなしてくだけのルーティーンでしかない。

そもそも公務員の領分が、この作品ではだいぶ怪しいことになっている。「それ公務員の仕事?」「そもそも役職が公務員である必要あった?」と誰もが疑問に思うような設定になっている。

結局、主人公の祖先にあたる安倍晴明が一体どのような人物で、主人公とはどんな関係があって、何を受け継いでいるのかなど、気になる伏線が投げっぱなしのまま終わっている。

男臭いところも人を大いに選ぶところだ。恐らく腐女子向けを意識して作られた作品だろうが、それにしてもあまりに華がなさ過ぎて、絵が終始地味だった。

確かに主人公の声が福山さんで、前野さんや入野さんをメインで起用するなど、キャストの面で言えば豪華だが、アニメのクオリティはそれに比例しなかった。

雑感:公務員とは?

©2019 たもつ葉子/KADOKAWA/「真夜中のオカルト公務員」製作委員会

オカルトに対処する公務員。確かに地味な仕事や誰もやりたがらない仕事が最後に回ってくるのは公務員の宿命ではある(笑)が、それでも命の危険を冒すほどの仕事があると、さすがに度が過ぎている。

元公務員としては、もっと公務員っぽさを期待していだけに、結局は他の「モノノケ対処系アニメ」もそうであるように、対話での平和的解決ばかりで面白みに欠けた。

たらい回しやクレーム客は、まさに公務員の恒例行事みたいなところがあるので、最低限の「あるある」とかは盛り込んでも面白かったかもしれない。

それにしても、新国立競技場が登場した時はビックリした。このアニメが放送されていた頃はまだ完成していないはずだが。(笑)

オカルト好きで腐っているにはオススメの作品だ。




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